0話 転生をする事になった。(ヤマトの場合)
ここは異界と位階と時間が交わる場所。
とは言っても上も下も前も後ろも右も左も真っ白で何が何だか分からない。
そんな所にポツンと一人。
ヤマトは寝転がっていた。
転がされていた。
とりあえず床はあるらしい。
「なんだ?ここ・・・わっけわか「はいはーい。
どもどもー。天使ちゃんですよー」
突然、ヤマトの目の前に背中に羽根をはやした痴女が現れた。
自称天使は、ヤマトのセリフを遮った。
真っ白い布を胸と腰にゆるく巻いただけの露出の多い姿だ。
寝転がった状態からヤマトは上半身だけを起こす。
天使は腰を曲げてヤマトの顔を覗き込むようにしている。
必然的に天使の胸がすごい事になっている。
ヤマトは目の前の天使の胸から目をそらせなくなっていた。
「自称とか痴女とかヒドイですねー。
そんな事を言ってると地獄に落としますよー?」
「いやそれ、俺じゃなくね?」
(見た目はまさしくザ・天使という感じで神々しくもあって右の胸と左の胸がマジおっぱいでおっぱいおっきいおっぱいおっぱいいっぱいおっぱいおっぱいおっきい・・・)
「あなたどんだけ胸を見てるんですかー?
マジキモいですー」
天使はヤマトを蔑んだ目で見ながら、両腕で胸を隠す。
そのまま背筋を伸ばして立つとヤマトに告げる。
「とりあえず時間も無いのでさっさと進めますよー?
えとえと、ヤマトさん。
色情魔 ヤマトさん」
「いや、名前違うから!
そんな悪意に満ちた名前じゃねーよ!?」
「はぁー」
天使は盛大に溜息をつく。
「あーもう。うるさいですねー。
ちょっと息止めててもらえますー?
エロ魔神 ヤマトさん」
「それも違うから!
ノート見ながら喋ってっけど本当にそんな名前が書いてあるの!?
っつか息止めたら死んじゃうんだけどっ!
『喋るな』とかじゃないんだ!?」
「いや、あなたはもう死んでますしー。
ツッコミが激しいですねー。
名前は山田 大和さん。随分と適当な名付けですねー。
名前も苗字も、やま やまって」
「あ、3回目は繰り返さないんだ。
っつかさらっと名前をディスるの止めてくれるっ!?」
「ちっ。
ディスられる位しか能が無いくせによく喋りますねー」
「今舌打ちした!?
天使なのに舌打ちした!!
何この天使!
すげー毒吐く!」
長い事この中継地点で、いろんな人々の相手をしていたからか、毒がキレッキレだった。
「ヤマトさんの享年は、17歳。年齢=彼女いない歴=童貞ですねー。
マジキモいですー。
あ、注釈しておくと、ヤマトさん個人がキモいのであって、他の童貞の方全員がキモいと言っているのでは無いですからねー」
「誰に対してのフォローだよ」
「それはもちろん読「わー!わー!わー!わー!
聞こえなーい。聞こえなーい。
この物語はフィクションであり、実在する名称・団体とは一切関係がございません!」
「読者の皆さんですー」
「さらっと俺の努力を無視しやがったな。
・・・メタ発言はほどほどに」
「マジ・キモイ・ヤマトさんの死因は・・・。ぷふっ」
ノートをぺらぺらとめくりながら笑いを堪える天使。
その様子は美しい肢体と相まってとても魅力的に感じるヤマト。
「いや、ファーストネームとかファミリーネームみたいにしながらディスるの止めて?
っつか何笑ってんの?
俺、死ぬ前後の記憶が無いんだよね」
「えー?知りたいんですかー?
仕方が無いですねー。キモイ ヤマトさん。
一応、あなたにも知る権利はありますからねー」
「完全に名前みたいになってんじゃねーか」
軽く諦めが入った様子で続きを促す。
「えっとー?ヤマトさんの死因ですねー。ぷっ」
笑いを堪えながら話す天使いわく。
ヤマトはその日約3年振りに家から出た。
↓
ネットでは買えないエロゲ『貧乳ロリっ娘動物学園物語〜お兄ちゃんも一緒〜』初回限定版(店舗限定特典ドラマCD、初期予約特典公式同人誌付き)を買った帰り道。
↓
人違いで後ろからナイフで刺された。
↓
それとほぼ時を同じくして近所の猟友会の人が害鳥を撃ち殺そうと発砲。
↓
その音に驚いた鳥がタンクローリーのフロントガラスに激突。
↓
驚いたドライバーがハンドルを切った先がヤマト。
↓
轢かれて飛ばされた先の水田に頭からダイブ。タンクローリーと電柱も激突。
↓
電柱が倒れて高圧電流が水田に流れる。タンクローリーも水田にダイブ。
↓
タンクローリーのガソリンに引火して大爆発。
「えっとー。これは一体なんてピタ○ラスイッチですかー?」
「え・・・?
なにそれ。いやちょっと待てちょっと待て。
どれだけ重ねれば済むわけ!?
結局、俺はどの段階で死んでるの?」
「さぁー?
刺されて、撃たれて、轢かれて、溺れて、感電して、爆死ですかね?
色んな死亡方法を1人でこれだけ体験したのってキモイさんが初じゃないですかー?
ギネスに載るんじゃないですー?」
「いや、俺は撃たれてねーよ?
勝手に死因を増やさないでくれる!?
っつかこんな内容じゃギネスに載らねーよ。
名前もキモイさんになっちゃってるし!」
「だってキモイじゃないですかー。
そもそもなんです?このエロゲのタイトル。
『貧乳ロリっ娘動物学園物語〜お兄ちゃんも一緒〜』って。
結局、ヤマトさんは、貧乳が好きなんですかー?
ロリが良いんですかー?
ケモ耳が萌えなんですかー?
学園制服がツボなんですかー?
妹が可愛いんですかー?
手に負えない童貞ですねー。
ここまで拗らせるとなんかもういっそ哀れでさえありますねー。
でも私の視界に入らないでもらえますー?」
「他人の嗜好を御丁寧に洗いざらい上げつらうなよ・・・。
とうとう天使に目の前から消えろ宣言された件について」
「そのくせ私の胸から目は離さないんですよねー。
面倒くさいので細かい説明は全部すっ飛ばして、童貞のロリコンシスコン野郎にさっさと適当な異世界に転生してもらいますよー。
お情けで何か1つだけ能力でも何でもくれてやりますよー。
もちろん私とかはダメですからねー。
願いの数を増やすのもダメですー。
はい。さっさと決めてくださいー。
あなたと喋ってるの嫌になってきましたー」
「いや、それもうただ単に俺の事が嫌いな人になってんじゃん」
「どうでも良いので早く決めて下さいよー。
今日はこの後、私はオフなので早く帰りたいんですよー」
「ぁーはいはい。わかりましたよ。
じゃぁ『すべての向きを自由に変えられる能力』」
「は?
なんですかー?
意味がわからないですー」
(俺の好きなラノベで出てくる能力だけど、そこまで言う必要は無いな)
「ありとあらゆるチカラの向きを自由自在に変えられる能力だ。
単なる力だけじゃなくて、見える物も見えない物も全てだ。
そうしたら、刺されない、撃たれない、轢かれない、溺れない、感電しない、爆発に巻き込まれない」
「いや、あなた撃たれてないですー。
はぁ、まぁ、それはその通りなんでしょうけどー。
私達には向き?とかの概念がよくわからないですからねー。
あなたがそういう能力で良いのならそうしますー。
じゃぁ、ほら、立って下さいー」
天使とヤマトは向かい合って立つ。
特に何か呪文を唱えたり魔法をかける素振りも無く、気持ち少しヤマトの身体が光っただけで、呆気なく能力を与える儀式(?)が終わる。
「あとはあそこの扉から出るだけですー。
ほら、さっさと逝って下さいよー」
ヤマトの後ろを天使が指を指す。
後ろを見ると大きな扉が開いている。
「・・・『いって』の字が違う気がするけど。
まぁ、その、悪かった。
胸ばかりジロジロ見て・・・」
ヤマトは扉から背を向けたまま天使に右手を差し出す。
握手でもするつもりなのかと天使も右手を差し出す。
むんずっ
もみもみもみもみもみもみもみ・・・
ぽいんぽいんぽよんぽよん
たゆんたゆーんもみゅもみゅ・・・
ヤマトはおもむろに更に右手を伸ばして布越しに天使の胸を掴む。
さんざん言いたい放題言われた仕返しとばかりに揉む。揉みしだく。揉みまくる。
「・・・・・!!!!」
その瞬間、数秒天使の思考回路が停止した。
みるみるうちに天使の顔は耳まで赤くなる。
「はっはっはー
さんざん言いたい放題言ってくれたなー。
お返しじブコフッ!!!!」
ヤマトのセリフが豚の鳴き声の様になっているのは思考が元に戻った天使にドロップキックをされたからだ。
能力を使っていないヤマトはそのまま扉へと吸い込まれるように蹴られた勢いのまま飛んでいく。
そしてそのまま扉の向こう側へとヤマトは消える。
間も無く扉も閉じ、やがて消えて無くなる。
美乳天使「なんか今凄い音が聞こえたけれど」
爆乳天使「そうですかー?気のせいですー」