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PARTY CREW  作者: エトー
パーティは六人の方がいい
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002 名前をいれてください

行列のニュースを見てると、よくこんなものに二日、三日と並べるなぁと、度々感心してしまうことがあったが、その気持ちを俺は理解できる日が到頭やってきた。


この手の行列で有名な1988年2月10日のような、歴史に残る日が起きた日であっただろうと予測する。


正式版がリリースされた。

ネット注文は早ければ即日配達される。

しかし、配達も混雑に極まっていた。

金額が出たと同時に予約開始され、予約混雑の影響があったが、VRヘッドセットとソフト本体を無事購入することができた。

これは運が良かったと言っていい。


転売を行う者を取り締まる法律でもできればいいとさえ思う。

俺はこのことに関しては、金に厭目はつけるつもりはなかったとは言うものの、定価で購入でき、ホッと胸を撫で下ろしたのであった。


天地無用という文字が箱の上部に書いてある。

マトリョーシカのような過剰梱包を丁寧に開封し、傷つけないように製品の箱を取り出す。

ここに辿り着くまでに二つの箱を開いている。

漸くパッケージの登場だ。

修理依頼のときのために、箱から丁寧にVRヘッドセットを取りだし、ゲーム機器にセットする。

説明書にはゆったりできる姿勢で被るようにと指示があったので、取り敢えずだがソファー(だめになる奴)をゲーム機の前まで移動させ、指示通りゆったりと座りVRヘッドセットを被った。

ゲーム機にゲームディスクをセット、長いアップデートがあると覚悟したが、以外にも早くプレイできるので、思わず

「もうか!?」

と、驚いてしまう。


目の前に壮大な風景が広がる。

自分が鳥になった視点で、空の上から大地を見下ろすように滑空し、光の照らす草原を高速で駆け巡る。


誰かの記憶(?)と言うように、鳥の視点ではあるが、場面場面切り替わりながら、草原だけでなく、街や火山や雪景色を飛び回ったあと人混みの頭上を抜けながら、"Argo"(アルゴ)と金色の文字でタイトルロゴが現れた。


「スゲーなおい…」

制作費いくらぐらいなんだろと、未発表部分の考察をしようとしたが、映画のようなオープニングは今に始まったことではない。

映画のようなCGは駄作が多いと聞くが、俺は映画のようなゲームは好きである。

β版でも無料ゲームのオープニングじゃないと騒がれていた覚えがある。

今はこのゲームに集中しよう。

早速ゲームを始めなければとスタートを選択しようとする。


しかし、スタートの文字が見当たらない。

おかしいぞ?と思いながらスタートしてくれと念じると、次のステップへと移った。

VRヘッドセットは、考えたり、話したりすることでマイクなどを通して発言されたり行動したりするのだろう。

ただただすごい・・・と思うばかりだ。

これ以上に驚くことに、脳波などに指示を出し、味覚や触覚も感じられるという。

このゲームが今後色んな可能性に繋がると、どこかの大学教授や専門家が言っていたが、そんな当たり前のことを気難しそうに言うからバカみたいに見えるのだろう。

俺もそんなバカの一人なのだが。


さぁ、スタートしたら次はどうくるか・・・・・・


キャラクター作成


うん。と頷くと

名前と出て来てキーボードが目の前にある。

手を伸ばすと、キーボードが打てる。

話すと文字が名前の横にあるアンダーラインに打ち込まれる。

つまりどちらでもいいようだ。

キーボードを操作し、"Freed=Mao(フリード・マオ)"とした。

本名が土間自由。

つまりFree.Dだ。あとは残ったO、M、Aを並べかえただけ…

殆どのゲームをフリードで遊んでいるため使いなれてるが、今回マオは初めてで、氏名があるのはなんだかこっぱずかしい気持ちになる。


性別を選んでください。

性別といっても男だろう。

俺は男だ!

そう思っていた時期が俺にもありました。

女を選んでゲームをしたこともある。

というのも、男性を落とすという変わったゲームをしたときだったが、変わったというのは偏見かもしれないが、あれはよくわからなかったなぁ・・・

今はいいとして、この♂と♀の○のところが一緒になったマークは何なのだろう。

男女?女男?

説明を聞くと雌雄同体だそうだ。

あとは、無性別、性別不明なんてものもある。

なんだそりゃ・・・


色々突っ込むのも面倒だと男を選ぶ。

タッチパネル式にもできるのか、男を触ったら決定された、やっぱ戻ると思ってしまったからかすぐに前の画面に戻るからまた男を押したが・・・

うん、すごいな。

次はキャラクター選びである。

身長や体重を入力するところもあり、現在の身長とアバターの差分でも計算するのではないかと推測したが、大きさは自由に選ぶことができるようだ。


「多すぎだろ・・・」

思わず呟いてしまったのはしかたがないだろう。

ヒューマン、エルフ、ドワーフというようなものから、犬人族、猫人族なんてのもあるし、魔族系なんてものもある。

イメージのキャラクターを「へぇーへぇー」言いながら、ニヤニヤしながらキャラクターを選択している様子は、誰にも見られたくないだろうが、この楽しい時間は何事にも変えがたいものだ。

取り敢えず魔族を選択してみて次の項目へ行くと表情の設定、声の設定などもある。

パラメーターを駆使しながら、なれない作業ではあったが、考えるだけで動作が移っていくので、コントローラーが苦手なお年寄りでも簡単に遊べそうだと、出来の凄さに感動している。

しかし、親、祖父の欄まであるのはやりすぎではなかろうか?

機械属父=人間型機械人形母からどうやったらホビットが誕生するのか。

謎である。

天使の羽と悪魔の羽を両方持ってるような人間も選べる・・・

いや、作れるのか・・・キメラ?

頭は象で身体は人間・・・どこかの神様みたいなのも選べるゾウ・・・なんちゃって・・・


身長170センチメートルくらいで、痩せ身の小柄な少年のような猫目で白髪のエルフが完成した。

家系図は全てエルフにしたのでハイエルフといったところか。

声は自分の声とは似ても似つかないイケメンボイスである。

キャラクターも当然似ても似つかない。

強いて似てるところがあるとするならば、猫目の部分と、性別くらいである・・・わはは・・・

所要時間は多分二時間くらい。もっとかもしれない。


時間がかかりすぎと言いたいだろうが、俺は他のゲームでもこんな感じである。

しかし、アルゴのキャラクター作成はかかるようにできている。

なぜなら作成したキャラクターで走ったり飛んだり、アトラクションを攻略するようにゴールが決められていたのだ。


実際の身体とアバターがシンクロするかのテストも兼ねてるのだろう。

ただこのアバターは身体が軽く、走ってもそうそう疲れない、壁にぶつかると痺れるような痛みまである。

思わず笑みがこぼれてしまった。


「こいつはすごいや・・・」

壁に向かって三角蹴りで壁を登ってみようと、チュートリアルで遊ぶ。

簡単なチュートリアルにも拘わらず、壁を蹴りながら、結構高いところまで昇れるようになっていた。

まるで、忍者のようだと満面の笑みで頷いた。

満足できるところまで上がれたので、次に進むことにする。

全アトラクション制覇したし、壁登りも登れないとこまで昇った(透明な壁にぶつかった)。

最速タイムだと満足もできた(最速タイム35秒)。

一回ログアウトしてまた入り直したが、仕方がないと思う。

チュートリアルでのログアウトは、他のゲームでもよくあることだ。

さらに時間がかかることになってしまったが仕方がない。

こういう作成する時間もゲームの一部だし、俺が楽しいのだから問題がない。以上。


最後に、"データ引き継ぎを行いますか?"と聞かれたので、"引き継ぎ行う"を選択した。

これでβ版のデータが引き継がれるはずだ。

β版でのIDを入力する場所もあったしね。


"アルゴへようこそ"


暗転すると俺は空を飛んでいる。

「これ、オープニングの続きか…」

オープニングで見た鳥が地上に辿り着こうとした場所に俺の姿がいる。

近づいたところで光に包まれると、鳥の目線だった俺は、街の門に立っているキャラクターとなった。


"あなたは冒険者です。これからさまざまな場所へ行き、出会い、別れ、たくさんの経験をします。

まずは冒険者として登録してみてください。

あとは、この世界で学び、考え、自分の力で進んでください。

仲間と協力するのもいいでしょう。"


定型文だなと思いながらも、その淡々とした天の声に聞き惚れていた。

女性のようなロボットのような声、どこかで聞いたことあるような気もする。

まぁ、わからなければ街の人に聞けってことだな。

俺はRPGが好きだし、なにしろβ版はやりまくっていたと自負する。


さぁ、冒険者登録しようと思った矢先だった。

「ちょっと邪魔だよ」

いきなり、誰かに背中をドンと押されて前へよろよろとして振り向く。

そこには作成したばかりの人たちが溢れんばかりになってきていた。


人が密集している。

「初日からこうですね」

頭に角が二本生えた"鬼"がそこにはいた。

これはプレイヤーだ。

プレイヤーかノンプレイヤーかは名前の色でわかる。

プレイヤーの名前は表示させていた方が分かりやすいが、それ以外の名前が見えるのは少し残念な気がしたため、オフにしてみる。

名前をオフにすると念じるだけでいいようだ。

逆にオンにすると念じれば名前が表示された。

便利だ。

しばらくは問題がなければこれでいこう。

キャラクターにカーソルを合わせられるし、合わせたキャラクターの名前はわかるようになるから、プレイヤーのほうも消しても問題ないかもしれないけどね。

「まぁ、数日はこんな感じであって欲しいね」

人気があるのはいいことだ。

活気があることもいいことだ。

なによりここにいるのは、ちゃんと製品が購入できた、運がいい人たちの集まりみたいなものだからだ。

中には買えなかった人もいたらしく、その人たちは、次回生産時に、第二陣としてやってくることになっている。


俺とその鬼はお互いに目線を交わし笑顔になる。

鬼もβ版からのプレイヤーのようで、ニヤニヤ人混みを見ている。

わかる。わかるぞ!

待ちに待ったゲームということだ。

その仲間を見ようと群衆を眺めたくなるのも人の(さが)だろう。


まずは能力を確認しよう。

引き継ぎで状態がどうなっているか興味がある。

製品版になって以前使えなかったものが使えるようになることは多く、逆もあるのだ。


アイテムボックスの中身を見るが、あるはずのものが無く、変わりに赤い瓶が一つ入っている。

これは初心者用ヒーリングポーション。

β版でもあり、最初はこれを使いながら戦うのだ。


そう言えば装備も初期装備の状態。

所謂、布の服というやつだ。

ちゃんと引き継ぎしたよな?と疑問に思ったが、所持金を見て何が起きたか理解した。

全ての"所持品"は"所持金"に変換されていたのである。

集めに集め、貯めに貯めた素材はそこになく、245381365ゴールドと表示されていた。

今まで見たことがない桁だと言うことは先に言っておく。

ちなみに70000ゴールドくらいしか持ってなかったと記憶しているから、理解するのが早かったのだ。

しかし、装備できなかったとはいえ、あのデスクイーンが無くなったのはショックだった。

俺はしばらく鞄の中を見ながら呆然と立ち尽くしていた。


隣の鬼も察したのか、肩をポンと叩き、

「装備だろ?ショックだよなぁ」

「はぁ・・・」とため息を付いていた。

引き継ぎ組は、みんな同じなのだろう。

叫ぶ人もいる。

「くっそ!ふざけんなよ!運営!!」

今のは俺の声ではない。

名も知らない俺の心の声を代弁してくれた別の誰かであろう。

しかし、気を取り直したようで、ノウハウは持っているのだと、自負するしかないのだ。


俺も、装備は割りきるとして、次はステータスの確認だ。

仕様が変更されているだろうと期待したが、そこは普通だった。

ただ、レベル上限が解放され、50以上になることができるようになっている。


これからの道は険しくとも、LUK(幸運)を上げていくことを心に決めたのだった。

しかし、案外早く挫けそうになる。

初心者用ショートソードの必要ステータスがSTR:3となっていたのである。

俺はステ振りしてすらいないからSTR:1・・・

最高レベルまで上げていたのに初心者用すら使えないとは…

こういう壁は、STRがアップする装備を見つければいいだけの話だ。

挫けてられない。

むしろ、いらないと割りきるのだ。

俺は拳で殴るぞ。


初心者用ショートソードを、道具屋で引き取ってもらおうとしたが、初心者用装備は引き取ってないそうで捨て値つまり0ゴールドで引き取るとの話だ。

それでもよかったが、捨てるだけはなんだかもったいない気がしてアイテムボックスに入れた。

捨てるのはいつでも捨てられる。


変わりにSTR:1でも装備のできる、ダガーを武器屋で購入した。

武器を手にしたことで早速冒険者らしくなってきました。

ということで、混雑している冒険者登録所へ向かい、ネームレスからギルド登録の身となった。


現在のステータスは、

Lv.50

HP(体力):500

MP(魔素):1

STR(腕力):1

VIT(耐久):1

AGI(敏捷):1

INT(知力):1

MND(精神):1

LUK(幸運):501

取得職業:冒険者、遊び人、投擲師、罠師、アルケミスト、調合師

スキル:フットワーク向上

ギルド:ファスタスト

称号:三角蹴り修練者


となっている。

チュートリアルの行動は無意味では無かったようだ。

集中していて、取得したことにすら気づかなかった。

以前取得していたスキルは職業という形に変わっているようだ。

中にはそんな職業で生活できるのか?

と言いたくなるようなものもある。

戦闘スキルは集約されるのかな?

確認する術がないので、やってみるだけだ。

冒険者登録を済ませたあとは、颯爽と街の外へとやってきた。


"雲の平原"


オープニングムービーでも見た草原で、踝の辺りまで草の感触がある。

近くに立つ人たちも、外の景色を見て、「おぉ!」と歓声をあげている。

高レベルの引き継ぎを行ったであろう人たちは、足早に次の街へと向かうようだった。


次の"街"というか、ここ、冒険者の街"ファスタスト"の周辺から街道が三本有り、職人が多く集まって暮らす街"フィレッド"、高貴な城が聳え立つ"ウォタリルム"、魔法都市"ウィンダース"へと向かうことになり、その場所ごとで様々な職業やスキルを取得していく・・・と、前情報はあり、そういうことだと思っている人は、各々自分が目指す国へと向かうことになるのだろう。

前情報はゲーム雑誌に書いてあったのを立ち読みした。

買っとけばよかった。


俺も、フィレッドにあるカジノは気になるが、まだ冒険は始まったばかりで焦る必要もないので、目の前にいる敵と戦うことから始めたい。

まだファスタストも廻ってないし、ぼちぼちやるのだ。

初心者御用達の敵に、コトラビ(コットンラビット)とスポスラ(スポンジスライム)がいる。

今、俺の足下にもいるやつだ。

このエリアはほとんどがこのコトラビである。

しかし、めっちゃ可愛くなっていて、本当にモンスター?と聞きたくなる。

β版の頃から可愛かったが、実際に触れるようになると、不思議な気持ちにさせられる。

こいつらは肉質が柔らかく初心者でも、いとも容易く倒せることで有名である。

しかしなんだろうこのふさふさ感は。

ここはふれあい広場か?

周囲にも初心者がいるが前情報に書いてあった草のモンスターのザッソーを狩っている。

いや、刈っている。

ゆらゆら揺れているだけで攻撃してこないから初心者がレベルを上げるのに最適なモンスターだ!と書かれていたやつは刈り尽くされて、いや、狩り尽くされていく。


俺はレベルが高くても初心者並みに攻撃力が無い。

初心者以下と言っても過言ではない。

しかし、ザッソーを取り合うこともなんだか気が引けてしまう。


ダガーを取りだし、順手に構えると足元へたまたま寄ってきたコットンラビットに突き立てる。


血などの返り血を浴びるわけではなく、そこはゲームと言うべきか、「キャン!」という高い断末魔と共に光の粒子となる。

そしてアイテムをドロップするのだが、こんなにドロップしたっけ?と言わんばかりの量を手に入れることができた。


コットンラビットの柔毛、コットンラビットの毛、コットンラビットの子肉、コットンラビットの肉、コットンラビットの骨、ウサギの歯・・・

アイテムがその場に散らばっている。


β版では一撃では倒せず、少なくとも三回当てないと倒せない敵だったはずだ。

いくら弱いと言っても、俺のSTRも1なのだ。


そして何よりアイテムは落としても、一個か二個だったので、ドロップ率変わったかな?と思いながら、二体目を見つけてダガーを突き立てる。

また一撃である。

これは恐らく初心者のために弱体化してるんじゃないか?

と思い、辺りを見渡すことにした。


丁度いいところにソーサラーが杖を構えてコトラビに殴りかかっていた。

この時点でこの人は初心者であると確信した。

ソーサラーは魔法で敵を呼び寄せ敵が自分の場所にたどり着く前に倒す、もしくは魔法で瞬殺というのがセオリーである。

魔法はスクロールを読んで覚えるものから、レベルが上がると覚えるもの、魔法の薬を飲み、修行して覚えるものなどがある。

レベル1ならば、スクロールを読んで覚えるものが該当する。

ソーサラーは魔法の使い方もよく知らないようだ。

これは経験がないと勤まらないだろう。

魔法のスクロールを売っている店には依らず、早く外に行ってみたかったか、みんなが移動してるから同じ方向についてきたか…そういう風に見えなくもない。


そのソーサラーは自らもダメージを受けつつも杖でコトラビを倒した。

そのダメージも微々たるものなので、自然に回復させるか、ポーションを飲めば解決する。

四回ほど殴って倒した。

初めて相手にしたのか息を切らしているいる気もする。

ふむ・・・俺は考えを巡らせる。

やはり俺が一撃で倒せるのはおかしいのだろうか。


一度表示をオンにして、名前など文字が見えるように切り替えてみる。

少し情報が少ない。

始めに自分に課した誓言など忘れたかのごとく。

いとも容易く表示を切り替えた。


近くのコトラビに駆け寄りダガーを突き立てた瞬間"critical"と表示される。

なるほど、レベル補正じゃなくてクリティカルダメージだったんだなと理解した。

LUKはクリティカル率に少なからず影響するということが判明。


ここではあのソーサラーの邪魔になりそうだなと、少し場所を替えてから、コトラビにダガーで切りつける行為を開始した。


全て一撃で倒せるので何匹倒したかわからない。

切り方によって報酬が変わることを発見しながら戦闘をこなしていく・・・

突き立てると毛や骨が手に入るのに対し、切り裂くようにすると皮が手に入るのだった。

素手でも倒せるが報酬は少なくなる。

ダガーはあった方がいいな。

面白いようにコトラビが倒せるため、夢中になって倒していく。

また何時間狩っているだろうか。

変なところで凝り性なところが出てしまって、無限に出現する雲にダガーを突き立てるが、時間は有限である。

そろそろ今日のところは止めるかな?

まだ夕飯がまだだったが、このゲームも空腹値があり、ゲーム内で水は飲んだが、食事をしていなかった。

少しお腹が空いてる気がするので一旦街へ帰ろうか。

なんだか疲れているような気もする、スタミナなんかあるのかな?

そう思っていた頃だった。


"スキル:クリティカラーを獲得。"


文字を可視化していたので新しいスキルを取得したことに気づく。

クリティカルが出やすくなるようだ。

これ以上出やすくなるの?と、現在ですら100パーセントクリティカル状態なのだが、まぁ、ありがたい話である。


ちょっと小高い丘の上から視線を感じたので、その方を向くと、ゴブリンがこちらを見ているようだった。

近づかなければ反応しなかった敵も、縄張りに入ったら容赦はしないという意思表示なのだろうか?

たまにその視線を感じながらも、悪意のような気がするわけではなかったので一旦保留だ。


遠くの方で炎の魔法をコトラビに放つ女の子がいた。

先ほどの初心者ソーサラーだ。

今は目深に被っていたローブのフードを外していて、金色のツインテールを揺らしながら魔法を詠唱し、次はスポンジスライムを標的に攻撃している。

その子も街へ戻ったのか、魔法を覚えてきたみたいだな。

服も替わったのかもしれない。

コトラビを倒しまくっている間に、初心者プレイヤーにも先を越されてしまっているみたいだ。わはは。

俺の視線に気づいたのか、自分と目が合うと軽く会釈してくれる。

俺も軽くおじぎをした。


やはり魔法だとコトラビは一発で丸焼けになるようだ。

ただ落とすアイテムは違うようで、毛などは燃えてしまうようだ。

自分は魔法が使えないからアイテムの確認のしようがないが、今焼け焦げたコトラビから察するに、そのように見えた。

コトラビの肉が黒焦げのようだった。


その女の子は、俺がコトラビばかり倒してるのに気づいたのか、スポスラを選んで戦っていて、どんどん遠くへ行き、見えなくなった。

俺とその女の子くらいしか町の周辺で戦う人はおらず、街から出た当初は、物珍しそうにコトラビを見ていたが、敵とは認識せずに愛でては先に進んでいった。

ザッソーは刈られていく・・・

そりゃあ、そうだろうな。

敵として認識しているのは引き継ぎ組ぐらいのものだ。

俺も敵と知らなければ、ペットが歩いていると、この平原の至るところにいる小動物を殺すことなど考えなかっただろう・・・たぶん。

羊のように放牧されていると説明されたら、信じてしまう。

そう考えると、あの子はコトラビも敵だと認識できたようだ。

自分のことを棚に上げるようでなんだが、末恐ろしい。


ただ俺も言い訳をすると、他に倒せそうな敵がいないから倒すだけなのだ。

別に他意は無いし、虐待趣向も持ち合わせてはいない。

ただ少しでも戦闘には慣れときたかったし、経験値もアイテムも欲しい。

ファスタストの武器屋、防具屋で装備を揃えられる人はいい。

しかし、次の街へ行かないのであれば、買わなくてもこのあたりのコトラビ倒しで十分戦闘慣れできるだろう。


次の街へ行くのも、初心者はある程度レベルが必要だろうが、初心者用装備のおかげで、この辺りの敵はおろか、ちょっと先のゴブリンにすら善戦できるぐらい強化されるようなので、本当に見向きされないから、却って一人で独占できるのは美味しい。

何より、一撃で倒せるからだ。

そうしてしばらくコトラビを倒していたのだった。

街へ戻ろうか。

一通りコトラビ狩りをしていて、アイテムも整理したい。


街へ戻り、ギルドホールの冒険者用のレンタル部屋へ入る。

β版ではマイホームがあったのに借家生活だ。しかたない。

荷物を確認し、ベッドへ入る。

これが一番のログアウト方法である。



街やフィールドでログアウトすることもできるらしい。

戦闘中でなければバリア状態が15分続くらしく、その時間が経過したら、ログアウトするようになっている。

もちろん任意にログアウトもできる。

装備品が盗まれたり、悪戯されてしまうこともあるので気をつけなければならない。

だけど、せっかくなら布団があるならそれを使ってみたかったのだ。

専用ログアウトと前情報で載っていたからな。


"お疲れ様でした。"


天の声にも慣れてきた。

VRヘッドセットを外す。

「あ!食事を忘れてた!」

現実世界ではなく、アルゴでの食事だ。

次のログイン時は、忘れずに食べよう。

そう思ったあと、現実世界での晩御飯は何にしようか考え始める。


次は別のモンスターと戦ってみるのもいいなと思う。

さっそくアルゴにハマっていくのであった。

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