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PARTY CREW  作者: エトー
パーティは六人の方がいい
1/10

001 β版の話

更新スピード遅いです。

これはとあるゲームの話である。


パーティーは六人である方がいい。

"協力"しなければ強力な魔物は倒せないからである。

六人で攻略するダンジョンを四人で行ったために、苦労した割には先に進めなかったという経験がある。

四人でも行けるはずだったのだ。

でも、誰しもが四人でクリアできるとは言っていない。

席が六つあるのに二つ空きがある。

それには大きな意味を持っている。

やはりその席は埋まっていた方がいいに決まっているのだ。

六人分の仕事を四人でやるのだ。

結果は見えている。

六人がいいという理由は他にもある。


前衛職と後衛職、そして支援職で構成されていることが望ましい。

前衛職だけだと回復が足りない。

弱い敵には圧倒的に優位に立てるのだが、自分と同じくらいの強さになってくるとそうもいかない。

勝てたとしても、次に同じものと戦うと、アドバンテージを相手に与えることになる。

そして、何より魔法を使う魔物に対処しづらい。


後衛職ばかりだと被ダメージが大きすぎてすぐに死んでしまう。

後衛職は打たれ弱いようにできているのである。

それから魔法を使うには魔素が必要で、使える限度があり、使いきったら回復させなければならない。

ハイリスクハイリターンが後衛職である。


支援職のみで構成するといくら頑張っても敵に傷をつけることが難しくなってしまう。

個性的だが、自身が特別に強いわけではない。

味方を強化するという点にかけては、天賦の才能を発揮するが、支援のひとつひとつは大したことがないとされていて、自分にサポートをかけて一人で戦うと、なんとか持ちこたえられるかどうかわからない…と言ったところだろうか。

応援みたいなものだ。


そしてその比率は、

前衛三人、後衛二人、支援一人が望ましいとされた。

時と場合によるが、オールラウンドに戦うとこのようになる。


一般的なRPGを見ても、四人で行動するゲームの大半は、


前衛ができ、かつ、魔法が使える者。

[勇者、賢者、魔法剣士]

圧倒的な火力といえる攻撃力の前衛。

[戦士、武闘家、剣士]

回復と支援ができる者。

[白魔導師、僧侶、神官]

攻撃魔法が得意だが、魔力の枯渇とも戦う者。

[黒魔導師、魔法使い、召喚師]


そして、その全員がアイテムを所持できる状況下である。

この四人で構成されたパーティーが跡を絶たない。

四人のパーティーを例に出したが、同じようなことが六人でも言える。

烏合の衆で行う会議で、良い結果が生まれた試しがない。

誰か奇跡的に運が良かったり、リーダーシップが取れたりするカリスマ性がある場合にこれらを成功に導くことができても、それはその時限りというものだ。

脱線が多くて申し訳がない。

次だ。


ステータスはバランス良く振りつつ、自分が極めた職にみあうような、特化したステータスを目指すのが望ましい。

ステータス振り(以後ステ振り)を間違えてしまうと、各職業で覚えられるスキルが習得できないことがある。

そして、最低限取得しておかなければならないスキルというのがあり、戦士系だとパッシブスキルの"攻撃力増加"を付けてない人は、前衛職として"終わってる"と評価されたらしい。

後衛職でも同じように、魔法使い系の職業で"魔力回復"を取らないと、魔法を使ったあとに魔力の充填ができず、次々と魔法を使うことができないために使い物に、「"魔力回復"つけてますよね?」言われることがあるようだ。


ただこれらは低スキル帯で取得できるものだから、さして問題とされていない。

取っていないことに気づいたり、指摘されればあとから取り直すことで、"終わってる"と評価されることはないのであろう。

BBSやSNSで炎上や叩かれるなどの迫害を受けるのだという。


「終わった・・・」

楽しくなりそうな時間が泡のように消えていくのを感じていた。


遊び人ならばLUK(幸運)に振るのが当然だろうと今までLUK極振りでゲームをプレイしてきたのが仇となってしまったのだった。

遊び人という職業は前衛職にあたる。


ここで簡単に説明すると、"アルゴ・オンライン"通称"アルゴ"では、三つのタイプの戦闘スタイルを選択してゲームを始めることになる。

最初の派生というやつだろうか。

このゲームに於いては戦闘タイプと呼ばれている。


その三つとは、

"ファイター"

"ディフェンダー"

"ソーサラー"

である。


まず、"ファイター"だが、これは攻撃を主体とした戦闘スタイルで、戦士や格闘家などを指す。

攻撃に関するスキルを取得することが期待でき、攻撃の要である。


次に"ディフェンダー"だが、これは守りに徹したスタイルで、タンカーや騎士などを指す。

防御力が高いことが重視され、必ずといっていいほど、盾を所持し、敵の注意を引き付ける役目を買う。


そして、"ソーサラー"は攻撃魔法や支援魔法、回復魔法などの多彩な援護を行うが、自らの攻撃力や防御力は、極めて低くなると言った特徴を持っている。


さて、三つのタイプからどのように戦士や魔法使いを選ぶかというと、これが選ばないのである。

オープニングムービーで青と白で装飾され、金で紋章が刻まれたような盾を持っていた聖騎士を例にして説明しよう。


聖騎士はファイターでもありディフェンダーでもありソーサラーでもある。

言ってることの意味がわからない…と思うだろうが続けて聞いて欲しい。

まずはディフェンダーが基本的な役割とする盾の修練をする…

盾もバックラーのような小型のものからタワーシールドのような巨大な盾もある…

だが、カイトシールドのような中型をベースにスキルを取得していったのだ…と思う。

そして、ファイタータイプのようにで片手剣を選択して修練するのだ。

両手で持つようなバスターソードは片手で持てないが、ロングソードくらいなら持てるだろう…と思う。

そういえば金のレイピアだったことから、ショートソード系の武器だと…思われる。

そして、聖騎士が金のレイピアを天に向かって突き出すと、お約束の光魔法を放ち、身体がフォースを纏って発光していた。

あれは、防御力を上げるための魔法だろう。

そう、魔法も使えるのだ。

そして最後に剣から光の玉が発射され、敵を仕留めたのが光魔法。

もしかするて光ダメージの技かもしれない。

技は、魔法と似て非なるものだ。


そろそろ気づいているかもしれないが、俺はモノを知らない。

見える範囲で、自分の知識を精査して答えを導いているので、間違いがあると思う。

また話が逸れてしまったね。

話をもとに戻すよ。


このように全てを網羅して極めることはできないけど、カスタマイズして、特徴のある特化したものは作れるということだろう。

これが"万能型"と呼ばれているもので、他にも剣士でありながら魔法を使える魔法剣士という"ハイブリッド型"もあったりする。

この場合盾を持たずに両手の武器を極めて行きながら、魔法も使えるはずだ。

しかし、大魔道士のように、一つを極めたものより強力な魔法は撃てないだろう。

そこの塩梅が難しいし、おもしろいところなんだと思う。

何より万能型などは一人でも強そうに見え、実際に強いのだが…それは個人の技術や能力に比例する。

じゃなければ万人が万能型を目指す。

しかし、「"ロマン"を求めて"最大火力"」というキーワードが存在するほど、一つの能力を極めていくのも醍醐味とされている。


忘れてるかもしれないので本題に入るが、"遊び人は前衛職である"と前記した。


しかし、前衛職ですらない。

この理由をこれから話そう。

まずは、攻撃力が無さすぎるのである。

本来ファイター系が装備できるはずのショートソードすら持てない。

そのため、後衛職が護身用に持っているようなナイフなどの短剣を持つのである。

攻撃力が出ないのも当たり前である。

前衛にとっては致命的と言っていい。


これをカバーするほどのスキルがあるのが職業によるスキルとなる。

スキルは職業を取得するとなんらかの条件で解放されていきいつでも使える力となる。


だが、俺には戦士系のスキルである"攻撃力増加"などの支援は無かった。

前衛ならば必須であると言われるスキルは習得していない。

それならばと、本来ならば支援系のスキルを伸ばす必要があるとされる。

戦闘中の味方に対して強化をする支援である。

しかし、それも覚えていない。

ならば、戦闘を優位に進めるものではなく、勝利したときの報酬が良くなるものはどうか。

お得なものだと"取得金額増加"や"取得経験値増加"、"取得報酬の増加"などである。

これは微々たる量なのだが、積み重なるとこれが大きなものとなるので大変重宝されるのだ。

このためだけに六人の席の重要な一つを、遊び人にすることだってある。

みんな、貪欲なのかと思われるかもしれないが、それもあるが、一番は取り分の配分だ。

六人で仕事をすれば、当然配給も六等分される。

これが先ほど四人で行き失敗した経験と繋がる。

まぁ、そのときは三人の仕事量というわけなのだが…

取り敢えず置いておこう。

だが、俺はこの"増加"スキルを取得していなかった。

というよりも、取得できないでいたのだ。

生産職と呼ばれる人は武器を生成したり、アイテムを生成したりして仲間を助ける。

生産するにも素材を集めなければならず、パーティに入れてもらい報酬をもらわなければいけないが、見返りをしなければ寄生と呼ばれたりする。

まさに、今の現状では寄生していると言われてもしかたがない。


なんせ自分のプレイスタイルとしてDEX(器用)にもINT(知力)にもステ振りをしていないのだから、攻撃スキルや支援スキルを覚えていない。

このときに取得していたスキルは一つもなく、"何かに特化させたステ振りなんだろう。"と想像されることはあったが、魔法職だったとしてもスキルを取得するためのステ振りを、INTやMND(精神)以外にも要求されることがあるというのに、その"特化させたステ振り"に対して、はいそうですねと首を縦に振れずにいた。


それが、俺の"LUK(幸運)に全てのステータスポイントを振る"という生き方である。

俗に言う意味のないステ振りと呼ばれ、ゲームに於いてサブキャラや縛りプレイと呼ばれる物を作るときに表現されるものなのだそうで、これはそれに属しているらしい。


では、これになんの意味があるのか。

それは、ゲームは自由だというこだわりであるなのかもしれない。

自分でもよくわからない。

これだと思ってやってみたら止まらない感じだ。

暴走とも言えるだろうが、これでもパーティプレイでは顰蹙を買いながら、ソロプレイでは牛歩のごとく地道に・・・遊べているのだからしょうがない。


しかしだ、結果、支援が出てないとわかると、このようなことになりうる。


俺は死んだ。

パーティー内で死亡したのが自分だけというパターンだ。

死亡した俺は、ホームポイントに立っていて、パーティメンバーのログを眺めていた、指示待ちという状況だ。

経緯を敢えて語るなら、非常に簡潔に済ませるならば、スマートに話を終わらせるとするならば・・・


敵が爆弾をなげた。


爆弾は範囲攻撃である。

近くにいると巻き込まれるが、離れていれば当たらない。

しかし、そのとき俺は、狙われていた仲間の近くで、アイテムによる回復行動をしており、爆発に巻き込まれた。

本来は支援効果などで耐えられるはずだったが、運悪く俺の支援は切れており、まともに爆風に包まれたのだった。

まさに一瞬のできごとである。

予測はできたはずだが、悪い予感をすれば反って行動ができなくなるので考えないようにしていただけだったのかもしれない。

しかし、そういう予測は割りと当たるのだった。


倒れてしまうと、生き返らせる術が現段階では存在しなかった。

存在しないわけではない、蘇生アイテムが高すぎるため誰も使用しようとしない。

死んでしまうと自分で帰還を選ぶか、数分後経過のち、自動的に街のホームポイントと呼ばれるところへ強制送還される仕組みになっている。

戦闘で再起不能になり、ホームポイントに強制送還されると、デスペナルティと言うものが付加された状態がつく。

デスペナルティは"衰弱"と呼ばれるステータスの大幅減少となっている。

あくまで時間が経てば元に戻るものではあるが、時は金なりと言うように、このゲームに於いて時間は金よりも価値があるものだと言われている。


そのホームポイントから、先ほどまで戦っていたパーティーの集合場所へと向かうのだが、狩り場までは少なからず時間がかかってしまうため、死んでしまうと流れは最悪になる。

そして、このような言葉をかけられることがあるのだ。


「すみませんフリードさん!解散します(´・ω・`)」


残酷な声が聞こえた、いや、至極当然の結果だろう。

パーティーリーダーはもしかすると支援である"取得金額増加""取得経験値増加"が入ってないことにイラついていたのかもしれない。

もちろんパーティーに参加する際に自分からそのような支援が無いということは伝えていたはずなのだが・・・

声をかけてしまったが故の、慈悲の心のつもりだったか、地雷を踏んでしまったか…そういうことだろう。

俺はその場でパーティーを打ち切られる。

当然ながら狩り場へ行くことは断念したのだった。


俺は久しぶりのパーティ参加に心が高鳴っていた。

このゲームもβ版ながら10年以上続いている。

古参と呼ばれる者は、最高レベルの50に到達し、魔王と呼ばれる最強の敵に挑み続けたり、NM(ネームドモンスター)と呼ばれる変わった敵を倒して希少なアイテムを集めたりしていた。

俺もその古参と呼ばれる部類の人間で、少しずつ経験値を集めてなんとか最高レベルまで到達し、アイテムを駆使しながらアルゴを遊んでいる。

最高レベルなのに取得経験値増加が欲しいのかって?

欲しいのは取得金額増加とレアアイテム発見のスキルであろう。

遊び人は両方を取得しているとされている。

持っていなくても申告しなければスキルはわからないため、職業の欄に「遊び人」と書いてあれば、スキル持ちだと思われるのだ。

しかし、プレイヤースキルまではわからないし、スキルを取得しているとも限らない。

そのために事前申告をするのだ。

事前申告ではまじめに答えるのだが、アイテムが出なかったときなど批判の対象となるため予め申告していない者もいるらしいし、そもそもで遊び人は数が少ない。


そのためか何だかんだでパーティーにはたまに参加できている。

遊び人は思った以上に誘われやすい。

経験値増加、金額増加が二つつくので誘われる。

しかし、その二つをつけるためには、全てのステータスを30まで上げる必要があった。

スキルを取得していなかったとしても、アイテムなどの支援を行い、援護はしていた。

そのためにすぐに排除されるようなことにはならなかったと思う。

誘った方は思惑と違うと思ったことだろう。

遊び人一人いたらまず誘っておけと言われるほど、優遇されるのだが、ファイターであるのに弱いという環境が、なかなか自分が遊び人をやる必用は無いという判断に落ち着いてしまう。

俺は、職業遊び人の遊び人ではない存在と言う価値になってしまうのだろう。


何よりアルゴは、β版だと言うのに3Dキャラクターは作り込まれ、正式版はVRMMOだと言う噂が持ちきりで今まで続いているのだ。

価格帯は未発表だが、月額が高くても、ヘッドセットなどの周辺パーツが高くても購入する意気込みでいる。

まずはβ版をやりこむのだと息巻いて、息巻いた挙げ句に最高レベルまでたどり着いた。

パーティに寄生していたかと言われると、寄生になったかもしれないなと思うが、ほとんど自分でソロプレイで稼いだと思う・・・


パーティに誘われる前まで同じ狩り場で作業していたため誘われた形になっていたが、街へ死に戻りするのは久しぶりだった。

ホームポイントでしばらくパーティチャットの「おつかれさま」を聞きながら、俺もおつかれさまと書き込みパーティを抜ける。

「元の狩り場に戻るか・・・」

独り言を呟くと、久しぶりに街に死に戻りしたのでアイテム整理でもしようとマイホームにアイテムを預けに戻った。


それからしばらくして正式版の情報が飛び交う。

俺の耳にも入ってくるし、街ではその話題で持ちきりだった。


あとは正式版がリリースされるまで、装備を整えることにした。

なんせ攻撃力も防御力も無い。

拾ったアイテムを投げると覚えるスキルの投擲をレベル10にしてあるので敵にダメージを与えることはできてるが、攻撃力本職の剣士の足元にも及ばない上に所持できる個数に制限があるので、無くなったら命取りになる。

増加スキルもないと知っているのかパーティに誘われない。

パーティは報酬もいい。

時間に対する対価が別物である。

最初の街のファスタストの周辺ならばアイテムを取ったりできるが、ウサギ、虫、スライムと言った、ゲームを初めて間もない人が倒す敵は、常に俺の標的となる。

アイテムをかき集めては強いモンスターに一人で戦う。

そういうスタイルを取っている。

いや、取らざるを得ない。

しかし、そこで得られるアイテムは弱いので、せっかくなら強い装備が欲しいところだ。

アルゴでは敵からドロップしたアイテムを換金したり、そのアイテムを元手に組み合わせて、調合や精製をすることで、クズだったアイテムを素晴らしいものへと生まれ変わらせることができたのだった。


なけなしの所持金を大奮発し、魔素鋼を彫金士に錬成してもらう。

魔素綱は姿が消えるアイテムを駆使しながら炭鉱掘りで手に入れたレアアイテム。

次に、パーティに参加したとき、闇のダンジョンで手に入れた、ブラッドウィスプの布、クイーングールの骨を、ファスタストで有名な武器職人のトールさん(プレイヤー)にウィス(ウィスパーチャット)を送り、所持金の都合と初めて打つ武器だからロストしても構わないという条件のもと作成してもらった。


なかなか会えない人だと聞いていたが、その日は自分も工房に籠るつもりだったと笑っているようだった。

かなりの強運だったと思う。

ウィスを送っても帰ってこないことは有名人にはざらである。

それでも順番待ちは発生していて30分ほど待っていたと思う。

「トールさんそれではお願いします。(*˙︶˙*)ノ」

「ウィスくれたフリードさんだね。オッケー!٩(๑>∀<๑)۶」


使いなれない顔文字を駆使しながらチャットを行い、必要な魔素鋼と布と骨を渡し、作業が始まる。

作業は鍛冶場だか邪魔しなければ見てても構わないということだった。

あとからポストへ送るという方法もあるが、手渡しは基本である。

トールさん(筋骨隆々のオッサン)がハンマーを打ち続ける。

カンカンと二回打つと素材を持ち上げるような動作を数回行うと、骨から短剣へ、もう数回打つと赤っぽい短剣が青紫の短剣へと変わる。


内心、いやいやありえねーよとツッコミを入れてしまう。

普通は金属の加工は熱した炉の中に金属を入れ、溶かしたものを成型し精練するのだが…

まぁ、ゲームだからしょうがないね。

それをリアルに画面越しで見ている俺はニヤニヤしているのだから、この姿は誰にも見せれないものだろうな。

最後に短剣を放り投げ、くるくる放物線を描き、柄の部分をキャッチすると、キラキラと短剣が光った。

俺は鍛冶スキルや裁縫スキルなど、製造スキルはからっきしだ。

前述したように"なし"となっている。

それでも人が物を作るというのは素敵だと思っている。

正式版は製造もやりたいと強く思っている。

あ、アイテムの合成はやってるか。

ジャジャーン!という効果音が流れ、完成した合図を知らせる。


"デスクイーン+10"を作成しました。

というロゴが流れた。


「スゲーーーーーー!!!!!」

トールさんは短剣の鑑定をすると叫んだ。


鑑定とは武器の品定めで、どういう攻撃力か、付加スキルがあるかなとを調べるものだ。


+10というのは作成評価である。

なしから+10まであり、+がつくことで威力や効果が付加することことは知っていた。

それだけ金額も上がるのだが…

俺は、もしかすると値段を釣り上げられたりするかもな…

なんて思っていた。


「フリードさん!完璧なもの仕上がったよ!」

トールは交換依頼を出してきたのだ。

俺は驚いた表情を出したあとに、

「いいんですか?なんなら金額上乗せしますけど…」

そう言うと、

「そんなもんは受け取ったことがねぇ!いいから受けとんなっ!」

と軽く男気を見せつけられた。

・・・こういうの惚れそうになる。

カッコいい。こうありたいものである。


「まぁ、オレもいいもの見せてもらったしよぉ!ありがとな!」

「いやいや、お礼言うのはこっちの方ですよ!」

照れるエモーションをお互いに出しながら、

「またなにかあったらお願いします!」

と言うと、

「おう!」

トールは手を振るエモーションを出した。

俺も手を振るエモーションを出し、鍛冶場から退出した。

トールさんはまた忙しくなるようだ、今のうちに装備を作りたいのは自分だけじゃないようだ。


改めて装備を確認するが、今装備しているファイアーナイフの攻撃力の5倍はある。

このファイアーナイフも呪術者の塔三階で運良く手にいれることができたものだ。

軽いので装備でき、INTがあれば炎攻撃が可能になるのだが、俺にはINTが無かったのでファイアーではなく、"ただの装備できるナイフだけど普通のナイフよりちょっとだけ強い"であった。

そもそもソーサラー用である。


さて、作成して戴いた"デスクイーン"を、早速装備してみようとするが装備候補になかった。

「えっえっ?!なんで?」

思わず独り言が出てしまう。


答えは単純だった。

"ステータスが足りないので装備できません。"

装備するためにはSTRを上げろということだった。

ナイフ全部が装備できるわけではないということだ。

それだけ攻撃力が高そうなので納得なのだが…

そして、デスクイーン+10に作成者である名前が彫られてある。

トールさんは"初めて打った"というから同じものは市場にはない。

名前が彫られて無いものであればあるかもしれないが…

故に、高額売却価格になりそうだが売ることはできない。

と言うより売りたくない。


御守りにしよう・・・・・・

俺はデスクイーン+10をアイテムボックスへと収納した。

いつか正式版で、装備することができるさと期待を込めながら・・・


あとは正式版がリリースするまで適当に情報収集しながら、モンスターでも狩るかな。


それからはパーティーの誘いが来ればパーティーに参加し、パーティーが出てなければ攻撃力が低くても倒せる敵を倒していた。

こういうことを続けていたせいか、悪評が付いていたことは気づかなかった。


寄生行為自体を悪とする風潮がある。

俺は確かに攻撃してもダメージはそんなに出ていないし、範囲攻撃を受けるとほぼ即死なので範囲外へ逃げようとする。

しかし、回復アイテムを人一倍用意し、MP枯渇しないようにソーサラーには魔素ドリンクを、ディフェンダーにはヒーリングポーションを与えながら、戦闘に参加する。

ただ突っ立ってるだけではない。

前述にも度々言ったが、自分は寄生プレイヤーではないと言いたい。

しかし、"取得経験値増加"や"取得金額増加"が無いことは不満を募らせる結果となったのだろう。

あれ?・・・寄生プレイヤーかもしれないな・・・


パーティー募集を見かけ声をかけると、

「寄生乙」

と言われることになってしまっていた。


まぁ、本当のことだしなぁ・・・

と諦めにも似た感情で、雑魚モンスターを討伐する日々が続いたのだった。


「遊び人Freed(フリード)は寄生虫です。」

心ない者に叫ばれたこともあり、一時はパーティーめんどくせぇ!と叫びたくなっていたこともある。


確かに悪いのは俺だ。

本来の立場を無視しているからだ。

いいことをしようが出る杭は打たれるし、仕事ができないものが置いていかれるというのが社会で、悪目立ちすると悪評が立つ。

ただし趣味趣向でこのようなスタイルを取っていることは貫きたい。


人は人、自分は自分だ。

明日は我が身である。

と言い聞かせたのだった。

そして、一人で挑戦することが少しずつ多くなっているような気がした。

ゲームは敵を倒すだけでなく、潜入や探索などやることは多いので、一人でも問題はないと自分に言い聞かせて・・・


改めて前述した"パーティーは六人である方いい"というのは、このゲームに限ってのことかもしれない。

パーティーは限りなく多い方がいいという考えが、適当なのだと思う。

ただし、相手は選びたいし、選ばれたいと思う。


もうすぐ正式版のリリースである。

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