ホワイトクリスマス
ある年の12月25日、その日は粉雪が降り、ホワイトクリスマスになった。
そして、その日、俺に恋人が出来た。
一つ年上の、俺にはもったいない程美人な才色兼備の女性。
1人悲しくもクリスマスツリーの下、サンタの格好でティッシュ配りのアルバイトをしていた俺に、彼女が告白してくれた。
夢なんじゃないかと疑い、自分の頬をつねってみたが、夢でも幻でもなかった。
聖夜に訪れた、奇跡だった。
そして、その奇跡から5年経ったクリスマスの日。
俺に訪れたのは、絶望だった。
彼女と出会ったクリスマスツリーで待ち合わせをしていた俺は、約束の時間に少し遅れてしまった。
しかし、彼女はいなかった。
俺は、彼女が来るのを待った。
そして、1時間程経っても、彼女は来なかった。
何かあったのかと不安になり、彼女に電話をかけようかと考えた、その時、俺の携帯の着信音が鳴り響いた。
それは、彼女が車にひかれ、病院で手術を受けているという、彼女の両親からの電話だった。
すぐさま病院に駆けつけたが、彼女の目は閉じられたままだった。
俺は、彼女の両親と、彼女が目覚めるのを待った。
しかし、彼女は何日経っても目を覚まさない。
医者曰く、命は取り留めたが、このまま、一生目覚めない可能性があるらしい。
俺は毎日、仕事終わりに、彼女の病室へ通った。
彼女はいつか必ず目覚めると、信じていた。
彼女が眠り続けて、数年が過ぎた、クリスマスの夜。
俺は、赤い薔薇の花束を持って、彼女の病室を訪れた。
いつも通り、2回ノックをして、返事がないことに悲しみを感じながらも、入室した。
しかし、その日だけは、いつもと違っていた。
彼女が、俺に向かって微笑んでいたのだ。
出会った日と同じ、笑顔で。
数年ぶりのホワイトクリスマスは、俺に、最高の奇跡をもたらしてくれた。