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アルバイト輝夜 ~火焔猫燐~

道祖神という神様がいる。

路の神とも村の神とも呼ばれる神様だが、その守る能力は限定的だ。

道祖神が守るのは一定の境界内のみ。

世界と世界を区切る神でもある。

そうすると、あの八雲紫は道祖神という説も生まれてくる。

胡散臭く、いつも口元を隠しニヤニヤと笑っている幻想郷の守り神。

まぁ……有り得ない話ではないのだが……


「冗談じゃない」


しかし、僕はその考えを一蹴した。

あれは妖怪であって、神と呼べる存在では、未だ無い。

道祖神は、その姿を確認した事はないのだが、恐らく実体を持たない神様なのだろう。

もしかしたら、『守る』という意思だけの神様なのかもしれない。


「いや、実際にそうなのだろう」


そうなると、荒神も道祖神と同じと言える。

家屋を守りながら、家の周りを歩いているのが荒神だ。

全ての建物には荒神が宿っているとはいうが、僕は見た事がなかった。

家の周りで何も引っかかっていないのに、転んでしまう事がある。

それは荒神とぶつかったという事らしい。

だが、僕は転んだ事がない。

そう思い立った僕は、家の周りをぐるぐると廻ってみたのだが……


「すっかり日が落ちてしまったな」


ついには転ぶ事なく、太陽が山に隠れてしまった。


「ふぅ~」


僕こと森近霖之助は大きく息を吐いた。

端から見たら、物凄くマヌケな行為かもしれないが、僕はいたって真面目だ。

実際に実行してみて、結果をみるという行為。

幾千、幾億かの実験を繰り返せば、あらゆる事が理解出来てくる。

人間にしては、長すぎる僕の人生。

あらゆる事を立証できれば、いつの日かこの世界も見えてくるだろう。

もしかしたら、外の世界に出る方法も見つかるかもしれない。

その時は、八雲紫とその式達に邪魔されない事を願うばかりだ。


「にゃ~ん」


僕がぽっかりと浮かんだ月を見ながら頷いていると、猫の鳴き声が聞こえてきた。

八雲の式をマイナスイメージで思い浮かべたからだろうか、猫が抗議にやってきたのかもしれない。

言霊ならぬ思念霊だろうか。

僕が振り返ると、そこには黒猫がいた。

昔から黒猫は不吉と扱われている。

だが、そこには大した理由が存在しない。

せいぜい魔女のお供というのが理由だろう。

黒猫が横切ると不幸になるのは、人間ではなく猫の方という訳だ。

言われ無き不幸の象徴とされるからね。


「にゃん」


黒猫が僕に会釈した。

なんだなんだ、と良く見ると、しっぽが二つ揺らめいている。

猫又……いや、近づいてみて分かった。

僕が近づいて来たからだろう、猫はするりと浮かび上がると、人間の形へと変化した。


「こんばんわ、お兄さん」

「たしか、火焔猫燐……お燐か」


僕が記憶から名前を取り出すと、お燐は当たり、とパチンと指を鳴らした。

以前に彼女の猫車を修理した事がある。

死体を運ぶ物を修理するというのは中々に複雑な気分だったので覚えていたのだ。


「また猫車が壊れたのかい?」

「いやいや、たまたま通りかかったらお兄さんが家の周りをぐるぐる廻ってるじゃない。何してるのかな~って?」

「あぁ、ちょっとした実験だよ」


僕の言葉に彼女はハテナマークを浮かべた。

そして僕は荒神の存在を説明してやると、彼女はふ~んと興味なさげに返答しただけだった。


「やっぱり変な人だね、お兄さん」


僕からしたら、僕の周りにいる少女は、みんな変人なのだが。

いや、考えが足りない者ばかり、というべきか。

ほとんどの少女は思考を停止している。

もっと深く考えれば、世の中はもっと楽しくなるというのに。


「まぁ、いいや。それよりお兄さん、あたいと一杯付き合わないかい?」


お燐はくいっと呑むジェスチャーをする。


「どういう風の吹き回しだい? まさか僕を地獄にでも堕とすつもりじゃないだろうな」

「そんな事しないよ。一人で呑むのが寂しいだけさ」


そういえば、お燐にはお空というパートナーがいたはず。


「お休みがズレちゃって。さとり様も酷いよ」

「さとりの事だ。何か思いがあっての事だろう」


地霊殿の主は愚かな妖怪ではない。

賢しい、というには言葉が悪いだろうが、僕の中ではそんなイメージだ。

初対面で「変人ね」と言われた事は甚だ忘れ難いものではあるが。


「あ~、そうかも。たまには一人で遊べという事かな。それでも一人で呑むのは寂しいよ」

「分かった分かった。ミスティアの屋台で良ければ付き合うよ」


僕の言葉に、お燐は万歳した。


「さぁさ、乗って乗って。あたいが運んであげるよ」


お燐が猫車を顕現させる。

その荷台を指差してにこやかに笑った。


「断る!」


僕は全力で拒絶した。



~☆~



道中に道祖神のお地蔵様をみかける。

ここが境界という訳か。

そんな事を思うと、また胡散臭い大妖を思い出して、僕は顔をしかめた。

この前は三人分を奢る事となって随分と散財したものだ。


「にゃ~ん」


僕が道祖神を見ているのとは別に、お燐は猫を見ていた。

二匹か三匹くらい居ただろうか。

類は友を呼ぶのか、はたまた珍しい猫を見に来たのか。

お燐の姿を見るとするりと物陰へと消えていく。

夜行性の彼等は、これからが本番という訳だ。

妖怪達と同じく、彼等は夜を跋扈しているのだろう。


「幻想郷には猫が多いな」


これだけたくさんの猫が幻想郷にいるのだから、もしかしたら外の世界では猫が少なくなっているのかもしれない。

もっとも、愛玩動物である彼等が絶滅するとは考えにくいが。

生殺与奪の権利は、人間には与えられていないはず。


「幻想だもの。猫っていうのは大変なんだよ」


猫が大変?

この気まぐれに年中を寝て過ごす獣のどこが大変なのだろう。


「外の世界では、猫は死なないのさ。猫は死期を悟るとどこかへ行っちゃうっていう話」


ふむ……聞いた事がある。

思い当たる節があった。

猫はプライド高く、また誇り高いという話も聞いた事がある。

そして僕は、猫の死体を見た事がない。

人間には決して、その朽ちた姿を見せないらしい。


「って言われてるけど、違うんだよ」

「違うのかい?」


騙されたかい、とお燐は笑う。


「猫は御山に行くのさ。そこで修行なり奉公なり湯治なりするの。明けて戻れば仲間内で位がひとつ上がるんだよ」


それが猫の世界のルールなのだろう。

すると、お燐は歌を詠んだ。


「『たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば いま帰り来む』ってね。帰ってこない猫に対して人間がする御呪い。これを紙に書いてお皿の下に弾いたり、唱えたりすると猫が帰ってくるんだよ」

「そうなのかい?」


御呪い、か。

人間は時折、願いをこめて呪術的な行いをする事がある。

多くは大した事がない魔法だ。

だがしかし、大多数の人間が信じれば、それは儀式となり、魔術となり、魔法として完成する。

恐らく、この御呪いもそうなのだろう。

猫を家に帰す魔法。

そんな儀式。

帰ってくる猫達は、魔法に引かれてか、それとも偶然か。


「さぁ、どうだろうね」


お燐は怪しくも優しげに微笑むだけだった。

僕は、肩をすくめるしか出来なかった。



~☆~



いつもの竹林沿いのいつもの赤提灯が見えた。

今日は少し早い時間だったのだろう、里の男達と幾人かすれ違っていく。

彼等は一様にアルバイト店員の容姿と器量を褒めていき、次に訪れる算段を話し合っている。


「まったく、奥さん達に叱られなければいいが」


僕の言葉にお燐も苦笑するしかなかったようだ。

浮気は罪だ。

その罰は、関係者全員が受けなければならない。

しかし、どこから浮気と認定すれば良いやら。

気持ちが裏切れば浮気なのか。

身体が裏切れば浮気なのか。

個人の意見がかなり偏る為、この答えは未だに出ないらしい。


「なんばらばんばんばん、なんばらばんばんばん、なんばらばんばらなんばらばんばらなんばらばんばんばん♪」


やがては聞こえてくるいつものミスティアの歌。

今日は仲の良い優しい漫才師の一人を歌っているかの様なそんなイメージの曲だった。

どうしてこんな感想を抱いたのか、良く分からないけど。

屋台の方には珍しい事に御阿礼の子がいた。

従者をつれて屋台を占拠していて、どうやら大いに盛り上がっている様だ。

僕とお燐は彼女達に適当に挨拶をし、いつもの長机の方に座った。


「いらっしゃい、香霖堂。あなたっていつも女の子と来るわね」


長机担当のアルバイト、蓬莱山輝夜はニヤリと笑う。

それは、困った様な笑顔、と形容するべきか。

相変わらず、綺麗な顔を上手く崩すものだと僕は関心する。

里の男達にはベッピンだ、と褒められいるのに僕の場合は彼女の素敵な笑顔にありつけない。

もっとも、僕の方もそれを求めている訳ではない。

このぐらいの緩んだ付き合いが一番良いのかもしれない。

ふと、お騒がせ魔法使いの顔が浮かんだが、僕は彼女を脳裏から追いやった。


「おぉ、永遠亭のお姫様じゃない。まだちゃんと働いてるんだね」

「こんばんわ、お燐。まだアルバイトよ。非正規雇用ね」


今日の付け出しは筍サラダだった。

早速とばかりに、僕は一口頂く。

レタスに千切りのキャベツ、そこに筍が入っており、シャキシャキという感覚のなかにコリコリとした歯ごたえが美味い。


「注文は何にする?」

「僕は筍ご飯といつもの串焼きかな」

「じゃ、あたいもそれで」

「お酒は?」


輝夜は伝票を書きながら聞いてくる。


「僕は日本酒で」

「あたいはウィスキー」

「はい、喜んで♪」


輝夜はニコリと笑うと、屋台の方へと引っ込んだ。


「ウィスキーを呑むのかい?」

「普段は日本酒だけど、たまに呑みたくなるのよ」


なるほど、と僕は答えた。

ちょっとして、輝夜はお盆に注文の品を乗せてきた。


「はい、筍ご飯と八目鰻と筍の串焼き。おまけで獅子唐ね」


僕とお燐の前に注文の品物が置かれていく。


「香霖堂のお酒はこれ。『鳳鳴』っていうお酒。妹紅が鳴いてると思えば、気分良く呑めるわ」


まったく……あいかわらず仲が悪いようだ。


「お燐にはメーカーズね。ロックでいい?」

「いいよ~」


丸いブロックの氷が入れられたグラスにトクトクと黄金色の液体が注がれる。


「おぉ~、美味しそう~♪」


さて、乾杯の時にも礼儀という物が存在する。

目下の者は目上の者よりグラスを下げ、相手のグラスの下方にぶつけるのだ。


「乾杯」

「かんぱ~い♪」


お燐は自然と僕のグラスより下側に持ってきた。

なかなか良く出来た猫だ、と僕は笑みを漏らして喉を潤した。


「あら、嬉しそうじゃない香霖堂。お燐が意中の人……猫?」


輝夜は口元を隠してニヤリと笑うが、最後が詰まったせいでどうにも格好がつかない。

どうやら今日はキレが悪いらしい。

ここぞとばかりに僕は反論する。


「いや、礼儀をわきまえた素晴らしい人……猫だと思ってね」


失敗。

しかし、僕も同じ場所で詰まってしまった。

お燐は猫だったのか?

それとも人だったのか?


「あたいだったら、猫でも人でもどう呼称されようが全然構わないよ」


お燐はそう言って、グラスを傾ける。

何とも幸せそうに酒を呑む猫だ。


「そういえば、『寝る子』と書いて猫になったそうだけど、あれって本当?」


輝夜が不意にお燐へと質問する。

お燐は口の中の筍ご飯を嚥下してから答えた。


「確かに猫はず~っと寝てるからね。その由来は正しいと思うよ」

「君は寝ないのかい?」


僕の質問にお燐は、失礼なお兄さんだ、と一笑した。


「例えば、お兄さんは寝る必要はないでしょ? でも何で寝てる?」

「僕は半分が人間だからね。そちら側に合わせているんだ。文化的な生活というやつだね」

「それと一緒さ。あたいは猫でありながら人間の形をとれる」


なるほど、と僕は納得した。

この世の存在というモノは、見た目に引っ張られるものだ。

人間は人間らしく、動物は動物らしく、蟲は蟲らしく、妖怪は妖怪らしく。

例えば目の前のお姫様だけど、もっと妖怪らしく翼や獣耳でも生えていれば別の生活を送っていたかもしれない。

まぁ、彼女は月人だから、ウサギの耳をしていた方が分かり易いのかな?

それでは、鈴仙と同じになってしまうが。


「あ、香霖堂、いま失礼なことを考えたでしょ」


むぅ……

どうして分かるんだ?


「いつも思うんだが、どうして君達はそう勘が良いんだい?」


あの博麗の巫女然りだ。

女性というのは、時々もの凄い勘の良さを見せる。

そこには、何か魔術的なモノがあるのではないだろうか。

女性特有の能力か何かなのだろうか。

少なくとも、男性種には存在しないスキルなのは、確かだ。


「殿方とは頭の使い方が違うのよ」

「そうよね~。男ってどっちかっていうと子供だし」

「香霖堂はおじいちゃんね」

「あはは、それは言えてる。男は未熟な馬鹿と老成した馬鹿しかいない訳だ」


輝夜とお燐はカラカラと笑った。

はぁ……まったく失礼な話だ。


「それとね」


ふいっと輝夜が僕に流し目を送る。


「大好きな殿方の考える事なら、少女はなんだって分かるものなのよ」


綺麗で妖艶で雅なお姫様は、僕にそう嘯いて笑うのだった。



~☆~



「ふみゅ~」


何とも情けない鳴き声をあげるお燐に、僕は大丈夫かと声をかける。

お姫様と意気投合したのか、ハイペースで呑まされた結果だ。

水かお茶か、という勢いでお酒が消費されていった。

僕が一杯呑む間にお燐は三杯は呑んでいる。

酔いつぶれて当然だ。


「だ、大丈夫よ。普段は鬼と呑んでるんだから、これからよこれから。私達の戦いはこれからだぁ~」


一体誰と戦うやら。

そして鬼は、まさに『鬼』といったところだろう。

恐らくは勇儀だろうか。

酷い呑ませ方をしていないと良いのだが。

酒は百薬の長。

付き合い方を間違えなければ、頼もしい存在なのに。


「そろそろ帰らなくて大丈夫かい? さとりが例の歌を詠んでるかもしれない」

「歌?」


僕の言葉に、輝夜が反応する。


「『たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば いま帰り来む』という歌が、帰ってこない猫を帰す為の御呪いらしい」


へぇ~、と輝夜は頷く。


「いなばの山って、恐らく因幡の山で、稲葉山ね。ウチの兎達から、猫が集う御山っていうのを聞いた事があるわ」


なるほど、外の世界の山か。

更に輝夜はう~んと記憶を掘り起こす。


「根子岳っていう所もそうだと聞いたわ。なんでもこの山には猫の王がいるんですって」


猫の王。

気まぐれな彼等も王には屈服するのだろうか。

それともまた同じ様に暢気に構えるのだろうか。


「ふふふ~。残念ながら、私は火焔猫。王様には会った事ないよ」


残念。

出来るなら幻想入りして欲しいと勝手に望むぐらいは失礼にあたらないだろう。


「それと良い事を教えてあげる。猫は死期を悟ると姿を消すと謂われているだろう?」

「えぇ、そうね」


僕の代わりに輝夜が返事をした。

その話は、ここに来るまでにお燐に聞いている。

同じ話をするとは、かなり酩酊しているのか。


「でも、それは人間の勝手な想像さ。本当は、安全な場所で養生する為に御山へ行くのさ。飼ってくれた恩義なんて一切なく、人間を信用する事なく、猫達は御山へ行くのさ」


ふと浮かべたお燐の微笑に、僕は思わず息を飲んだ。

油断すれば、いまにも飛び掛ってきそうな、猛禽類すら及ばない眼光。


「『去なば山』という訳ね。猫は気まぐれね~」


僕とは違い、輝夜は納得した様子で頷いていた。

やはり経験の差が出てくるのだろうか、お姫様は臆する事なくお燐に水を出した。


「ふふ、お姉さんはカッコイイね。罪だらけのその身体、運んでみたいよ」

「えぇ、できるのなら運んで欲しいわ。終わりをあなたが迎えに来ても、私は後悔しないでしょう」


でも無理よ、と輝夜は笑い、お燐も笑った。

そこに憂いや戸惑いや気後れなんてものは存在していない。

彼女達はただ純粋に笑っていた。

果たして、僕にもあんな笑い方が出来るだろうか。


「じゃ、あたいはこれで。お会計ね」


お燐は輝夜にお金を払うと、猫の姿をとった。


「それじゃご馳走様。またね、お兄さんお姉さん」


くるりと一回転してみせ、お燐は中空へと消えていった。


「たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば いま帰り来む……か」

「あら、やっぱりお燐が意中の人なのね」


どうしてそうなるんだい、と僕は輝夜に聞いた。


「その歌、別れを惜しんだ歌ですもの。『まつとし聞かば』とは『松』と『待つ』が掛けられているんだと思うわ。今その歌を詠んだという事は、あなたはお燐と別れるのを惜しんでいるという事よ」

「そういう意味で言ったんじゃないけどね」

「言霊よ。仮初の願いは形になってしまったわ。あなたの言葉で」


輝夜はいやらしく微笑む。


「さぁ、香霖堂。彼女に愛の言葉を贈るといいわ」

「残念ながら、僕が愛しているのは君なんだ」

「へっ?」


間髪いれない僕の真顔の冗談は、見事に決まったらしい。

月のお姫様のマヌケ顔。

これは中々に見れたもんじゃない。

僕はニヤリと笑みを零すと、お姫様も冗談と気づいたのだろう。

耳まで真っ赤になった輝夜は、怒りの言霊をぶつけてきた。


「さ、最低よ香霖堂! あなたこそ『去なば山』よ、妖怪の山で喰われてくるといいわ!」


と言って、僕に向かってグラスを投げつけてきた。

もちろん僕にそれを避ける能力なんてあるはずがない。


「あいたっ!」


僕の額が小気味良い音をたてた。

いつも思うのだが……何とも色気のない話だ。

そしてこれもいつも思う。

これはこれで、森近霖之助らしいと言えば、らしいのだ。

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