episode4⁺-学校祭準備-
episode4⁺-学校祭準備-
2010年6月14日(月曜日)
-山野高校・アメリカンロック部 部室-
宿泊研修が終わって既に1か月が経った。いよいよ学校祭まで1か月ほどになり、アメリカンロック部の「ONステ」に向けての練習は続いていた。
♪~
矢島「上出来ね!もうほとんど言うことがないわ。この調子で頑張っていきなさいね。」
ジュン&レン&サトコ&ユリ「はい!」
今日は「ONステ」で発表する3曲を連続で練習していたが、先生によると優勝も視野に入るくらい上達しているらしい。残り1か月も上達したからと言って油断せずに練習していかなければならない。
episode4⁺-学校祭準備-
2時間後
ジュン「さて、そろそろ帰るぞ!」
レン「もう18時か。」
サトコ「そうやね、帰ろか。」
ユリ「そうね。」
-通学路-
ジュン「明日からは学校祭準備期間に入るな!」
レン「そうだな。」
学校祭準備期間とは文字通り学校祭の準備をする期間だ。部活をしている人も帰宅部の人も関係なしに各自の割り当てられた係りの準備を放課後に残ってする時間が設けられるのだ。だが毎日制限時間があり、18時までに片づけとゴミ出しを終わらせていなければそのクラスは学祭ポイントが減点されてしまうのだ。さらに教室にホコリなどが残っていても減点の対象になり、なんともシビアなものだ。ちなみに教室のゴミの点検をするのは厚生委員会の仕事で俺のクラスの厚生委員会は実成と考輝だ。
ジュン「レンは山車の係りか。」
レン「そうだ。ジュンはクラス企画だったな。」
サトコ「ウチも山車の係りやで!」
ユリ「私は衣装係りよ。」
山車の係りは仮装行列の時に使う押し車を製作する係りだ。クラス企画は2日目にある一般公開の時間にクラスで出し物をする時のものを製作する係りだ。衣装係は仮装行列の時に着る服を製作する係りだ。あとこの4人は担当になっていないようだが仮装行列の後半に踊りをするパフォーマンス係りというものもある。
2010年6月15日(火曜日)
-山野高校・1年1組-
つい先ほど体育館のほうで学校祭準備のオリエンテーションが行われた。放課後になって俺の担当のクラス企画は早速準備が始まっていた。
洵「材料調達は頼んだぞ3人とも。」
ジュン&弘之&弘昌「ラジャー!」
材料調達に任命されたのは俺とスポーツ万能で勉強もできるイケメンの武田弘之とバスケの神こと大野弘昌だ。ちなみに弘昌はS5(エスファイブ)という称号を持っている。S5は特定のスポーツがずば抜けて上手い5人の生徒に与えられる誇り高き称号だ。弘昌はバスケのS5だが、他にも野球、サッカー、バレー、卓球のS5が存在する。
-山野高校・自転車置き場-
ジュン「じゃあいっちょ頑張りますかい!」
弘之「おっ!やる気満々だねぇ~!」
弘昌「山車のほうも準備開始みたいだな。」
山車の制作場所は自転車置き場だ。自転車置き場は屋根がついており、よほど強い雨でもなければ問題なく山車を作ることができるのだ。学校祭期間は自転車置き場は自転車を固定しておく金具などは邪魔になってしまうので北側に移動されている。
この春買ったばかりのママチャリで材料調達のために街中を走り回った。道具などは高校から3キロほど離れたところにあるホームセンターで購入して、帰り道に中学校近くにある給食センターでたくさんのダンボールをもらってきた。ちなみに俺たちの通う山野高校は全国でも珍しい給食制の高校だ。材料調達をしているうちに今日の作業は終了した。材料は一通り揃ったので明日から本格的な製作作業に移行できそうだ。
-山野高校・1年1組-
洵「よし!材料も揃った!再確認するが1年生のテーマは<アニメ>だ!これから事前に話し合って決めたゴム鉄砲射的、顔はめパネル、食べ物屋を作っていくぞ!」
1組クラス企画メンバー「オーーー!」
1年1組のクラス企画メンバーは以下の通りだ。
畑瀬洵、真田純、武田弘之、大野弘昌、南雪阿、三浦実成、宮森楓、幾野秋菜
このほかにメンバーはさらに2人いる。いたずら好きな平山健治と、お嬢様オーラ漂う中町美優だ。以上の10人が1年1組のクラス企画メンバーだ。そして作業は着々と進んでいった。
1時間後
ジュン「おっ、もうこんな時間か練習に行かなければ。」
気が付くと部室に集合して練習をする時間になっていた。学校祭期間中は基本的には各自の役割の仕事をしてから「ONステ」の練習を始める形になっている。
健治「<ONステ>の練習かい?ガンバ!」
美優「期待してるからね。」
洵「後は俺たちに任せろ!」
ジュン「どうも!じゃあ抜けるぜ!」
-山野高校・アメリカンロック部 部室-
♪~
ジュン「ふぃ~・・・<All My Life>の練習するたびに疲れるぜー。」
レン「お前叫ぶからな。」
ガチャ
すると先生が部室に入ってきた。何やら手には紙を持っていた。
矢島「そうそう、これを渡すの忘れていたわ。」
ジュン「なんですかその紙?」
矢島「これは<ONステ>の参加希望用紙よ。これを事前に提出しておかないと<ONステ>には出場できないっていう非常に大事なものよ。」
レン「なるほど。」
矢島「提出期限は今月末だからそんなに焦らなくてもいいけどね。じゃあ私は学校祭関係の会議があるからよろしくね。」
ジュン「わかりました!」
バタン
サトコ「どれどれ見してみ!」
ユリ「グループ名と発表内容を書けばいいみたいね。」
レン「グループ名はアメリカンロック部か。」
ジュン「なあ俺に考えがあるんだが・・・。」
レン「なんだ?」
ジュン「どうせならバンド名ほしくないか!?」
レン「まあそうだな。」
サトコ「というかなんで今までバンド名なかったんやろ・・・。」
ユリ「なんだか全然気にならなかったわね。」
ジュン「なんかいいネーミング思いつかないか?」
サトコ「じゃあこんなのどうや!?<アメリカン ビート フェスティバル サンシャイン ミラク・・・」
ジュン「おい!適当なのやめろよ!」
サトコ「え~・・・結構いいと思ったんやけどなぁ・・・。」
ジュン「これぽっちもよくねーよ!!!」
レン「う~ん・・・スマン俺は思いつかないな。」
ユリ「私も今は・・・あっ!じゃあ<夕焼け市>の時までに全員考えてくることにしない?最近行ってなかったし。」
ジュン「おっ<夕焼け市>か!そうだなそうするか!」
「夕焼け市」は俺たちの住む山野町で5月~9月まで1か月に1回第4土曜日に商店街の方である祭りだ。「夕焼け市」の時は商店街の店がそれぞれ普段とは違うことをしだすのだ。たとえば美容室がおでんを売り始めたり、服屋さんが焼き鳥を売り始めたり、リサイクルショップが揚げ物を売り出したりする。ほかにも食べ物の店がたくさんあるので食べる歩きツアー的なものもできるのだ。また「夕焼け市」限定メニューを出す店もある。
ジュン「今月の<夕焼け市>は26日か。けっこう間が空くけれどいいのが思いつくだろう!」
レン「そういうことにしよう。」
サトコ「了解や!」
2010年6月26日(土曜日)
-山野町・中央公園-
今日は「夕焼け市」の日だ。役場の前にある中央公園で集合することになっていた。中央公園はガラス貼りで円柱状のキレイな公園だ。よくここでは子供たちが遊んでいる姿が見受けられる。「夕焼け市」の日には中央公園周辺でパフォーマンスが行われたりもする。ちなみに中央公園の地下は役場の職員が使う駐車場となっている。
レン「来たぞ。」
サトコ「到着や!」
ユリ「まずはどこを回ろうか?」
ジュン「そうだなーじゃあ・・・。」
ドン! ドン! ドン!
ジュン「おっ<夕焼け市>開始か。」
今の花火は「夕焼け市」の開始を知らせるものだ。時刻は5時30分だ。昔は6時から「夕焼け市」がスタートだったのだが、いつのまにか5時30分スタートになっていたらしい。
レン「まずは何か食いに行くか腹も減ったし。」
ジュン「そうだな!」
そして俺たちは食べ物を求めて商店街を歩いて行った。毎回のことだが「夕焼け市」の日の商店街は人でいっぱいになる。警察官も出てきて交通整理までするくらいだ。人ごみの大半は町民だが町外から来ている人も少なからずいるようだ。
-山野町・商店街-
ジュン「うまい!やっぱり祭りで焼き鳥は定番だよなー!」
レン「そうだな。から揚げ棒なんかもなかなかいけるぞ。」
洵「そこの4人!うちでなんか買っていかないかい!?」
ジュン「あれ!?バイトしてるのか!」
洵「そうだ!焼きそばに焼き鳥とか餃子なんかもあるぞ!」
サトコ「じゃあウチは餃子買うで!」
ユリ「私は焼きそばにするわ。」
レン「俺は餃子にするぞ。」
ジュン「じゃあ焼きそば買うぜ!」
洵「まいど!」
「夕焼け市」では友達によく会ったりするのだが、たまにバイトをしている友達に遭遇することもある。そういう時はそこのお店でよく買い物をすることになるのだ。ちなみに先月は実成が店を出していたという噂を聞いた。
-山野町・中央公園-
ジュン「よし!一周してきたな!」
レン「腹も膨れたな。」
ジュン「よし!ここで本題だが・・・みんなバンド名は考えてきたか!?」
レン「おう。」
サトコ「もちろんや!」
ユリ「ばっちりよ!」
ジュン「じゃあレンからどうぞ!」
レン「<アメリカンズ>だ。」
ジュン「う~ん・・・普通すぎるな。」
レン「そう言うお前はどうなんだ?」
ジュン「<アメリカロックズ>だ!」
レン「同じようなもんじゃねーか・・・。」
サトコ「次はウチや!」
ジュン「じゃあどうぞ!」
サトコ「<アメリカン ビート フェスティバル サンシャイン ミラクル ウルトラ ハイパー・・・」
ジュン「前と同じじゃねーか!!!」
サトコ「バレてもうたか!」
ユリ「私は<アメリカン・ロック・ジャパン>なんて考えてきたんだけれど。」
ジュン「おっ!」
レン「いいんじゃないかそれで。」
サトコ「悔しいけれどウチのよりエエで・・・。」
ジュン「よし!じゃあバンド名は<アメリカン・ロック・ジャパン>略してARJだ!」
レン「早速略しやがった・・・。」
ジュン「じゃあ<ONステ>でARJが発表するのは<The River>と<All My Life>と・・・あれ?」
サトコ「どうかしたんか?」
ジュン「そういえば俺たちの作った曲って曲名ないよな。」
レン「よくよく考えたらそうだな。」
ユリ「なんで今まで気が付かなかったんだろうね。(笑)」
ジュン「じゃあここは無難に<THE Amerikan Rok Japan>でいいだろ!後々この曲は俺たちARJを代表する曲になるだろうからな!」
レン&サトコ&ユリ「OK!」
こうして俺たちのバンド名と曲名が決定した。ARJ意味はアメリカンロックを演奏する日本人のバンドだからだ。これで俺達4人の新たなるスタートが切られた。これからはARJとして大きく成長していくだろう。
2010年7月5日(月曜日)
-山野高校・自転車置き場-
学校祭の開催がいよいよ今週末に迫った。各係りの準備も最終段階に突入していた。俺は少し暇ができたので他の係りの進行具合を見学でもして歩こうと思った。まず最初に向かったのが山車の係りのいる自転車置き場だ。
ジュン「いやぁ~山車係りは順調かね~!?」
レン「おっサボリか。」
ジュン「ちげーよ!少し暇ができたんだよ!」
卓郎「こっちは順調だぞ!」
武史「まかせとけ。」
遊志「そっちはどんな感じなんだ?」
この男3人組はチャラ男でPlayBoyな有坂卓郎と、サッカー命の天野武史と、サッカーの守護神でオシャレ番長の亀掛川遊志だ。
ジュン「こっちはほとんど完成してヒマもできてる状況だ!山車もだいぶ形になってきてるじゃないか!お見事!」
レン「そりゃどうも。」
サトコ「これはこれは、サボリ常習犯の真田さんじゃあ、ありまへんか~。」
ジュン「だからちげーよ!・・・おっ、そっちのクラスの山車もなかなかの出来だな。」
サトコ「ウチらも負けていられへんからなぁ~!」
周りを見てみてもどこの山車もかなりの完成が近づいてきた感じがする。1年生の山車もなかなかのものだが、2年生の山車もかなりレベルの高く、3年生の山車なんかはさらにレベルの高いものを作り上げている。山車はこんなにも見事な芸術品となるのだと感じ、俺は校内へと戻っていった。
-山野高校・化学実験室-
ジュン「おっ・・・ここはパフォーマンスの練習をしているのか。」
ここは理科の授業の実験の時などに使用する教室だ。後ろの方の水槽には実験用のアフリカツメカエルや、金魚や、タイリクバラタナゴなどが飼育されている。学校祭準備期間にはこの教室は学校祭関係の準備などに使用される場合がある。今現在は俺のクラスのパフォーマンス係りが練習に使っている。どうやら俺のクラスのパフォーマンスはメインダンサーとバックダンサーで役割が分かれるようだ。メインダンサーは動きが激しく、振り付けも難しい。バックダンサーは動きが激しくなく、振り付けも簡単だ。俺のようなパフォーマンス係りでない人はバックダンサー担当になり、パフォーマンス係りの人は全員メインダンサーになるのだ。
ジュン「山車とパフォーマンス見たし、残すは衣装係か。」
次は衣装係りが作業をしている被服室へと向かった。被服室はここから体育館に向かう途中にある。
-山野高校・被服室-
ガラガラ
ジュン「よう!衣装組!調子はどうだ・・・ってあれ?」
被服室で作業していたのは1人だけであった。その1人がユリであった。ほかのクラスの人間は既に作業を切り上げたようだ。被服室は学校祭が今週末に迫って言うとは思えないくらい静かで平和であった。
ユリ「あれ?ジュンどうしたの?サボリ?」
ジュン「これはサボリではない!て い さ つというやつだ!」
ユリ「へぇ~・・・要するにヒマなのね。」
ジュン「だいたい合ってて困る・・・。」
ユリ「じゃあせっかくだから手伝ってくれない?もうすぐで片づけの時間になるし。」
ジュン「じゃあそうするかな・・・っていうかほかのメンバーはどうしたんだ?」
ユリ「私のクラスのメンバーは用事があって先に帰っちゃったの。ジュンたちのクラスの子たちもついさっきまでここで作業してたんだけれどね。キリがいいから先に切り上げていったわ。」
ジュン「そうなのか。じゃあ手伝うけれど一応ほかのクラスだから内緒で頼むぞ。」
ユリ「分かったわ。(笑)」
俺はそのまま2組の衣装係の手伝いをした。気が付くと5時45分になり「片づけの時間になりました。学校祭準備中の生徒は片づけを初めてください。」と校内放送が流れて片づけをし始めた。片づけが終わって俺たちは被服室を後にして玄関へと向かった。
-山野高校・1階廊下-
ユリ「今日はありがとうね。ほかのクラスなのに。」
ジュン「気にするな!俺の担当のクラス企画もほとんど完成しちゃって暇だったからな!」
ユリ「ほかのところもレベルば高い物ばかりよね。」
ジュン「だよな~!やっぱり学校祭が高校生活で一番盛り上がる行事ってのも納得だよな!」
俺たちが会話をしながら歩いていると階段からレンとサトコが下りてきた。2人ともこれから帰るようだ。
レン「2人ともも帰るのか?」
ジュン「そうだぜ!」
サトコ「じゃあ、この4人で帰るで!」
♪~
学校祭準備時刻の終了を告げる今年の学校祭テーマソングGalileoGalileiの「ハマナスの花」が流れ始めた。学校祭準備期間中は毎日この時間になるとこの曲が流れる。この曲が流れ終るまでに校内を出ないと減点の対象になるのだ。ほかにも教室に少しでもホコリが残っていようものなら厚生委員会の手によって非常にシビアな減点を食らうことになったりと、学校祭は意外と厳しい物なのである。
ジュン「よし!学校祭もすぐそこだ!「ONステ」ももちろんだが、それぞれの係りを頑張って学校祭を盛り上げるぞ!」
レン「おう、もちろんだ。」
サトコ「盛大に盛り上げるで!」
ユリ「うん!頑張ろうね!」
そのまま俺たちは高校を後にした。そして時間が過ぎそれぞれの係りの準備が完了したところで、いよいよ学校祭当日がやってきた。高校生になってからの学校祭は初めてでどんなものになるのかが楽しみだ。
ToBeContinued
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。