episode3⁺-宿泊研修-
episode3⁺-宿泊研修-
2010年5月12日(水曜日)
-真田家・玄関-
ジュン「荷物はよし!じゃあ行くか!」
入学式から1か月以上も経ち、今日はいよいよ宿泊研修の日だ。家を出た俺は高校へと向かった。これから3日間イベントだらけの宿泊研修が待っているのである。
episode3⁺-宿泊研修-
-宿泊研修バス1号車-
朝のSHRを終えた1年生全員はそれぞれの組のバスへと乗車した。バスはすでに出発しており、今は山野町の道の駅を通り抜けた先の道を走っていた。ちなみに山野町の道の駅にはパークゴルフ場があったり、山野町の様々な特産品も売っている。
矢島「今日はまず穂別にある地球体験館というところに向かって行きます。その次に日高のほうに行き、日高国際青少年自然の家で泊まります。」
ジュン「地球体験館って何だ?」
レン「どうやら太古の地球から宇宙までを疑似体験できる感じの施設らしいぞ。」
俺の座っていた席の前にはレンがいた。俺の隣には昆虫大好きムシキングこと三浦実成が座っており、レンの隣には歌が上手くいつもハイテンションでノリのいい菅野考輝が座っている。
実成「そういえばジュンって新しい部活の部長になったんだっけ?」
ジュン「あぁ!アメリカンロック部の部長こと真田純だ!」
考輝「ほうアメリカンロックとな。」
ジュン「歌詞は全部英語!日本語は一切なしだ!」
考輝「面白いなそれ!歌唱力の勝負でもしたいところだな!」
ジュン「望むところだ!」
レン「穂別まではどのくらいかかるんだろうな。」
実成「だいたい1時間くらいかな。」
ジュン「あれ?穂別の方まで行ったことあるのか?」
実成「僕が所属しているリバーネット21っていう団体でキャンプ場に行ったことあるし、地球体験館にも2回くらい行ったことがあるよ。」
ジュン「おぉっと!じゃあネタバレはナシな!」
実成「了解。(笑)」
バスの中では会話が弾んだ。ちなみに実成の言っていたリバーネット21とは植樹、川のゴミ拾い、川遊びなどをする団体だそうだ。実成のほかにも山野高校には団員がいるそうだ。その後1時間ほどバスに揺られていると町が見えてきた。ここが穂別である。穂別はアイヌ語のポンペツ(小川)が由来で2006年にシシャモで有名な鵡川町と合併した町である。そしてバスは住宅地へと入っていった。住宅地をしばらく走っていると大きな建物が見えてきた。
実成「あれが地球体験館だね。」
矢島「それでは皆さん地球体験館に到着いたしました!1組はトップバッターで地球体験館に入場するので素早くバスから降りてください!」
-穂別・地球体験・入口-
地球体験館には1組→2組→3組の順番で入ることになっている。1組の俺達はネタバレの心配がほぼなくて勝ち組なのかもしれない。1組が地球体験館を見ている間の2組と3組は地球体験館の向かい側にある町立博物館を見学することになっている。
実成「さて始まるぞ・・・!」
ジュン「ん?」
なんだか実成がニヤニヤしていた。そのとき俺は若干嫌な予感がした。この先にいったいどんなものが待っているのだろうか?
ガイト「皆さん今日は穂別まで遥々ご苦労様です!今日は私がガイドを務めさせていただきます。それでは準備もできているようなので時空を超えた旅に出発です!」
ジュン「時空を超えた旅だってよ!なんだか興奮するな!」
レン「子供か。」
ジュン「俺はまだ子供だぞ!」
レン「まあそうだよな。」
こうして1組は地球体験館の内部へと入っていった。俺はこの先にあんなことが待ち受けていようとは、まだこのときは知る由もなかったのである・・・。
-穂別・町民博物館-
サトコ「うわぁ!えらいでかいなぁ!」
ユリ「名前は<ホベツアラキリュウ>っていうのね。」
サトコとユリの目の前には大きな恐竜と思われる化石が展示されていた。この化石はどうやらここの穂別の山で荒木さんという人が発見されたものらしい。
サトコ「ん?なにか看板に書いているで。」
「ホベツアラキリュウ」の前にあった看板にはこう書かれていた。
実は「クビナガリュウ」という言い方はイエローカードです。明治の初め、外国から地質学という学問が伝わってきたときには「チョウケイリュウ」、または「ダケイリュウ」という呼び方が普通でした。学問の世界では、最初に言った人のものを優先するという伝統があります。勝手に変えると混乱するからです。今、クビナガリュウという言い方が流行ってるのは、まったくマスコミの影響です。またクビナガリュウは恐竜ではありません。
サトコ「えぇ!?これって恐竜やないの!」
ユリ「恐竜って呼んでいいのは意外と少ないって話を聞いたことがあるわ。空を飛んでいたプテラノドンとかも恐竜って呼べないみたいだし。」
サトコ「はえ~・・・勉強になるなぁ!レポートに記録しておかんと!」
ちなみに前日に1年生全員には宿泊研修のしおりば配られており、そのしおりには日程などが書かれている。最後のほうのページには今回の宿泊研修であった出来事をレポートとして記録するスペースがあるのだ。
ユリ「じゃあ隣の展示室も見ておかないとね。」
サトコ「そうやな!ほな行こか!」
-穂別・地球体験館・熱帯雨林ゾーン-
地球体験館最初のゾーンは熱帯雨林だ。気温は約30℃で湿度は80%もあるジャングルだ。ここでは、地球上の大半の種類の動物・昆虫が暮らしており、うっそうと繁る植物達は、俺たちが生きるために必要な酸素を作ってくれている。
ジュン「蒸し暑っ!!!」
実成「こんなところで驚くのはまだ早いよ。」
ジュン「え?」
レン「なんだか嫌な予感がするな・・・。」
-穂別・地球体験館・太古の海ゾーン-
ガイドの人が熱帯雨林について説明しているうちにジャングルが開けてきた。そこには1本の道があり両脇には水が張られていた。水の向こう側には恐竜の模型があった。今から40億年もの昔、生命の源である海が誕生した。そこには、小さなバクテリアが生まれ、進化して魚になり、そして巨大な恐竜の時代も訪れてきた。やがて海は陸になり、巨大な恐竜は石になったのだ。ここのゾーンはまだ恐竜が生息している時代のようだ。
ジュン「ん?なんだか洞窟みたいなところが見えてきたぞ。」
レン「姿勢を低くしないとぶつかりそうだな。」
実成「いよいよだな・・・。」
こうして俺たちは洞窟内へと入っていった。この洞窟の奥で俺たちは物凄い体験をすることになってしまうのであった・・・。
-穂別・町民博物館-
サトコ「ギョエー!なんやこのワニみたいもんは!?」
ユリ「<ティロサウルス>っていうみたいね。看板によると爬虫類みたいね。」
サトコ「おっ!これはウミガメの化石やね!」
ユリ「<メソダーモケリス>ね。名前の意味は中生代のオサガメという意味があるみたいね。」
ここにある「メソダーモケリス」の化石は世界中でも日本でしか発見されておらず、しかもそのほとんどが穂別で発見されているらしい。
ワイワイガヤガヤ
サトコ「ん?向こうのほうで何か盛り上がっておるで。」
ユリ「行ってみようか。」
そこには複数の男子がいた。どうやらある生物のパズル的なものがあったらしく、それで盛り上がっていたらしい。
集兎「おい、佳津!これやってみろや!」
佳津「おう、望むところだ。」
雷斗「ぜったい変なのできるぞ!(笑)」
そこには釣り好きなワイルドマンの田村集兎と、よく遅刻するという噂の鎌田佳津と、ゴルフ部に所属し生徒会にも所属している爽やかボーイな中田雷斗がいた。
3分後
佳津「出来たぞ!」
集斗「なんだよこれ!この世のものじゃね~ぞ!(笑)」
雷斗「これはある意味天才だな。(笑)」
悠木「どれどれ、そのパズル俺がやってやろう。」
そこに颯爽と現れたのがとあるジャンルのゲームマスターである岸悠木であった。そのゲームのジャンルはとても口に出せたものではない。
雷斗「でた〇〇ゲーマスター!」
3分後
悠木「出来た!」
佳津「違う生物になってるけれど、なんかかっこいいな!」
集兎「なんかの神話にでも出てきそうじゃね~か!」
雷斗「絶好調だな!ところでベースのほうはどうよ?」
悠木「あぁ、ベースは順調だよ。」
サトコ「ベース?」
佳津「うわぁ!アメリカンロック部のサトコ!」
ユリ「今ベースって言っていたよね?」
悠木「いやいや、気のせいだよ・・・!」
雷斗「ほらほら2人ともほかの展示物も見た見た!」
そう言って4人は足早に去って行った。何やら慌てていたようにも見えた。
サトコ「なんやなんや?」
ユリ「なんだろうね?」
-穂別・地球体験館・洞窟-
ジュン「ん、なんか暑くない?」
実成「そりゃあそうだよ。だって次にゾーンは・・・。」
レン「なんだか嫌な予感がするぞ・・・。」
ガイド「次のゾーンはとても暑いのでご注意ください!」
レン「Oh・・・。」
-穂別・地球体験館・砂漠ゾーン-
ここは水のない世界、砂漠だ。昼間は摂氏50℃以上にも気温が上がる灼熱の砂漠。中には10年に1度しか雨が降らない地域もあるらしい。こんな砂漠にも緑が広がっていた時代があったらしい。ちなみにここのゾーンの実際の温度は40℃らしい。
ジュン「あっちぃ!!!」
レン「おぉぉ・・・。」
ジュン「レン!すでにフラフラじゃねーか!まあこのゾーンさえ抜ければ楽になるだろうから我慢だな!」
実成「レンの暑がりは相変わらずだなぁ。」
ガイド「それでは皆さん!次はマグマの海へとご案内いたします!」
レン「はぃあ!?」
ジュン「残念!まだ続くんだなこれが!(爆笑)」
レン「なんでもいいから早くしてくれ・・・。」
-穂別・地球体験館・マグマの海ゾーン-
地球が生まれたのは今から46億年前だ。生まれたばかりの地球は、今の地球とは全く違っており、たくさんの微惑星が地球にぶつかり、地表にはマグマの海が広がっていたのだそうだ。この火の玉のような地球が、現在の緑の大地と青い海を持つ美しい地球になるには、長い年月がかかったのだ。
ジュン「あれ?さっきの砂漠より若干温度低くないか?」
レン「なんだか少し救われた気分だ・・・。」
敬志「レンは大げさだなぁ。(笑)」
この男はリズムゲームマスターである。佐藤敬志である。1年生でリズムゲームの腕では彼にかなうものは誰もいないだろう。
ジュン「敬志に俺たちのオリジナルソングのリズムゲーム作れたらやってほしいな!」
敬志「考えておくよ。(笑)」
レン「おい迷惑だろ。」
-穂別・地球体験館・エレベーターゾーン-
ガイド「これからこのエレベーターで100階まで上がります!」
ジュン「あれ?この建物ってそんなに高かったけ?」
レン「まあ察しろ。」
この「動かぬエレベーター」に乗って俺は少し肌寒くなったように感じた。さっきまでのことを考えれば楽になったが少し嫌な予感もした。
ガイド「それでは100階に到着いたしました!次のゾーンに参りましょう!」
-穂別・地球体験館・氷河期ゾーン-
今から11万5千年前、地球は氷に覆われていた。氷の塊が押し寄せて陸地の約1/3を埋め尽くしたのだ。過去100万年の間に7~8回あったといわれる氷河時代は、今から約2千年後にやってくると予測されている。気温が-50℃にまで下がるこの時代に人類は生き延びることが出来るだろうか?ちなみにここの温度は-20℃だ。
ジュン「ぶわっ!さみぃ!」
レン「なんだ大したことないじゃないか。」
ジュン「おい・・・正気かよ-20℃だぜ!」
レン「道民だろ・・・これぐらいどうにでもなるだろ。」
ジュン「俺も道民なんですけどー!」
ガイド「それではここにいるのも寒いので次に行きましょう!」
-穂別・地球体験館・大気層ゾーン-
地球を取り巻いている目には見えないヴェール、大気。この大気の中にはオゾン層があり、太陽からの有害な紫外線から地球を守っている。しかし、今そのオゾン層は、人間が使い続けてきたフロンガスによって、破壊されているのだ。
ジュン「やっと普通の温度のところに来たな!」
実成「ここから先は普通の温度だから安心してね。(笑)」
ガイド「それでは次に行きます!」
ジュン「ん、何だこの道?」
次にのゾーンにつながる道の途中に手すりの付いたなんだか動きそうな感じの道があった。
実成「あぁ、これは地震を疑似体験できる装置なんだよ。前来た時は横にグラグラと揺れてたんだけれど、今日は人数が多いから動いてないみたいだね。」
-穂別・地球体験館・海洋底ゾーン-
海の中には陸地と同じように山があり、谷がある。海底の火山山脈、海嶺は地球の奥深くにあるマグマの力で、海底が持ち上げられ、引き裂かれて出来たものだ。このマグマの力は海底を動かし、陸地をも動かしているのだ。俺たちの住んでいる日本は長い時間をかけて今の姿になっていった。もしかするとあと数千万年後には日本はどこかの大陸の一部になっているかもしれない。
ジュン「おお、ここが海の底か!」
レン「なるほどな。だからさっき地震体験装置があったのか。」
ジュン「どういうことだ?」
レン「海の底にはプレートがあるだろ。」
ジュン「なるほど!ん、上で動いてるのは何だ?」
海洋底の模型の上のほうで船のような模型が動いている。見た感じどうやら深海を調査する船のようだ。
ガイド「さあ、いよいよこの旅も終わりが近づいてまいりました!次は鏡の世界です!その次がいよいよ最後のゾーンです!」
ジュン「お、もうすぐで終わりか。」
レン「長かったような短かったようなだな。」
-穂別・地球体験館・鏡の世界-
最後のゾーンの前に待っていたのが鏡の世界だ。どこを見ても鏡ばかりで間違えてぶつかってしまいそうだ。どこが本当の道なのかも分かりにくい。こんな感じなものが遊園地にあったような気がする。
ガイド「ぶつからないように気を付けてください!」
ジュン「おーすげー!鏡だらけだ!」
レン「ぶつかるなよ。」
ゴン!
ジュン「痛って!!!」
レン「お前わざとだろ・・・。」
ジュン「わざとじゃねーよ!」
-穂別・地球体験館・宇宙ゾーン-
謎に包まれた世界、宇宙。地球が誕生するずっと以前から宇宙は存在した。鏡の世界を出た俺たちは広くて暗い部屋に出た。その部屋には無数の星々が浮かんでおり実に神秘的なところであった。
ジュン「うお!きれいだな!」
レン「あ、地球発見。」
ジュン「俺達ってさっきまであそこにいたんだな!」
レン「ゾーン的な話でか。」
周りの星を見ても地球はかなり小さい。46億年という歴史の中で、地球には生命が生まれた。水や酸素が地球にしかないのは、何故なのだろうか。きっとそれだけ地球ができたのは奇跡的なことなのだろう。
ガイド「さて!ここで時空を超えた旅は終了いたします! ここまでお付き合いいただきありがとうございました!」
パチパチパチパチ
こうして1年1組の長いような短いような時空を超えた旅は終了した。地球体験館を出ると外のまぶしい光が差し込んできた。
-穂別・地球体験館前-
ジュン「まぶしいな!」
レン「後半のゾーンは暗かったからな。」
ユリ「あっ、2人とも久しぶり!」
ジュン「おう!久しぶりってか昨日部活で会ってたじゃねーか!」
レン「これから地球体験館に行くのか。」
ユリ「うん2組だからね。地球体験館はどんな感じだったの?」
ジュン「あまり詳しいことを言うとネタバレになるからな・・・まあ3、4、5番目はヤバイ!」
レン「あぁ・・・確かにヤバイな。」
ユリ「え、どういうこと?」
ジュン「まあ自分で確かめるんだな!」
そしてユリ達2組は地球体験館へと入っていった。俺達1組は町民博物館へと向かった。町民博物館はコンクリートでできたちょっと変わった形の建物であった。この博物館は世界の中でも有数のウミガメ化石を収蔵しているらしい。穂別は不思議と海に棲んでいた生物の化石がよく発見されるが、どうやら8000~9000万年前の北海道は東と西で2つに分かれており、穂別はちょうど海の中にあったかららしい。
-穂別・町民博物館-
ジュン「うお!いきなりでかいクビナガリュウの化石の御出ましか!」
サトコ「クビナガリュウって呼ぶのはイエローカードなんやで!」
そこには物凄いドヤ顔をしたサトコが立っていた。
ジュン「ドヤ顔やめろや!(笑)」
レン「で、クビナガリュウじゃなく何て呼べばいいんだ?」
サトコ「チョウケイリュウかダイケイリュウって呼べばええんや!ところで地球体験館はどうやった?」
ジュン「3、4、5はヤバイ!」
サトコ「なんやそれ!?」
レン「まあ自分で確かめるんだな。」
サトコ「了解や!なら隣の展示室に行ってみるとええで!まだまだ色々な化石や模型があるんやで!」
ジュン「おおそうか!なら行ってみるか!」
こうして俺達2人は隣のの展示室へと移動した。そこには「メソダーモケリス」や「ティロサウルス」様々な化石や模型などがあった。しばらく見学しているうちにとあるものが目に入った。
ジュン「なんだこれパズルか?」
レン「なんか神々しいものができてるな・・・誰だこれ作ったの。」
サトコ「それ悠木がつくったんよ・・・あー!!!」
ジュン「いきなりなんだ!?」
サトコ「悠木で思い出したんやけどベースとかって言ってたんよ!」
ジュン「ベース?何かの聞き間違えじゃないか?だってあの〇〇ゲーマスターだぞ。」
レン「音楽活動している1年生って俺達4人しかいないし、あの悠木がベースやるとも思えないし。なにかのゲームに出てくる生物をベースにこのパズル組み上げたとかじゃないか?」
サトコ「まあ・・・そうかもしれんな!それじゃあそろそろ時間やから地球体験館に行ってくるで!」
ジュン「おう!くれぐれも3、4、5は気を付けろよ!」
そしてサトコ達3組は地球体験館へと向かって行った。
レン「じゃあこの後は見てないところでも見るか。」
ジュン「そうだな!レポートも書いていかないとな!」
俺達はまだ見ていないところを隅々まで見た。そして時間になり、1年生全員はバスへと乗り込んだ。
-宿泊研修バス1号車-
しばらく山の中をバスが走っているとだんだん山が開けてきた。日高に到着である。ここから少しのところに今日泊まる日高国際青少年自然の家がある。
矢島「突然ですが明日登山する北日高岳には熊が生息していますよ!」
ジュン「マジでかよ!」
レン「まあ北海道の山なんて大体クマが生息してるもんな。」
ちなみに俺達の住む山野町でも最近熊の足跡が発見されたりしている。少し前までは山野町の馬追山には熊が生息していないと言われていたが、最近では話が違ってきているのかもしれない。
矢島「でも人のいるところに熊は滅多に現れませんのでご安心ください!」
ジュン「本当か・・・?よくテレビでもクマに襲われた話は聞くのに。」
レン「熊は嗅覚がすごく発達してるって聞くからな。いま俺達がバスで走っているところでも匂いがわかるとかなんとか。」
ジュン「犬とかもそうだけどすごいよな動物のそういうところ。」
矢島「もしも熊に遭遇したら下のほうに全力で逃げましょう!」
ジュン「先生!何でですか!?」
矢島「熊は体の構造で下り坂が苦手なのよ。その代り上り坂は得意なので上にいた人はドーン!だけれどね。」
ジュン「ドーンって・・・。」
実成「言うの忘れてたけれど日高国際青少年自然の家にも2回くらい行ったことがあるよ。」
レン「どんなところなんだ?」
実成「結構広い施設だよ。部屋には二段ベッドがあって朝食はバイキング形式だね。」
ジュン「広いのか、なんだか迷いそうだな。」
レン「また変なところで階段上っていくのか?(笑)」
ジュン「その心配はねーよ!」
実成「あと風呂もそこそこ広いよ。」
ジュン「よっしゃ!やったぜ!」
レン「お前は風呂好きだもんな。俺は少しでも長風呂に入ったらのぼせるからな・・・。」
そんな会話をしているうちに大きな施設の前にバスが止まった。日高国際青少年自然の家に到着である。バスから降りた1年生全員は各自の部屋へと荷物を置きに向かった。
-日高国際青少年自然の家・男子部屋01号室-
ジュン「これが俺たちの部屋か!結構広いな!」
レン「実成が言ってた通り2段ベッドがあるな。」
考輝「よう!また会ったな!」
博樹「同じ部屋同士よろしく。」
考輝とともに部屋に入ってきたのが政角博樹だ。実成が自称親友と呼んでおり、リバーネット21に所属している。植物に関して詳しくグリーンマスターという称号を持っているらしい。グリーンマスターは植樹活動などを複数回経験することでもらえるものらしい。実成もグリーンマスターの称号を持っているとか。
レン「じゃあ荷物も置いたことだし、そろそろ炊事場のほうに行くか。」
ジュン「カレーだワッショーイ!!!」
考輝「よっしゃ!燃えてきた!」
博樹「野外炊事とか中2以来だな。」
荷物を置き終えた1年生全員は川辺の野外炊事場へと向かった。野外炊事のグループ分けはクラス関係なく自由だったのでアメリカンロック部のメンバーで作ることにした。
-日高国際青少年自然の家・野外炊事場-
野外炊事場は石がゴロゴロしている川辺にある。近くの川では魚が釣れそうな感じで、ここで釣った魚をすぐに焼いて食べたりするのもアリなのかもしれない。
ジュン「じゃあ他も始めてるみたいだし、こっちも始めますか!」
レン「野菜はサトコとユリが切るのか?」
サトコ「まかしとき!」
ユリ「調理全般は私たちがやるね。」
ちなみにサトコとユリは料理がうまい。サトコはプライベートでよく料理を作っており、ユリは親が仕事で家を留守にすることが多く、自分で料理を作る機会が多いのでこの2人に調理を安心して任せられるのだ。家庭科などの調理実習などでもこの2人は心強い存在だ!
ジュン「じゃあ俺とレンは力仕事だな。」
レン「そのほかにも手伝えることがあったら手伝うぞ。」
サトコ「それやと助かるわ~。」
さっそく俺とレンは川の炊事場から日高国際青少年自然の家の調理道具置場に移動して調理道具を運んできた。調理器具がたくさん入った入れ物は2人で持ってもなかなか重かった。
レン「火を熾すところは自分で作らないといけないんだな。」
ジュン「石を積み上げて・・・よし石造りの即席コンロの完成だ!」
サトコ「下準備できたみたいやし始めるで!」
10分後
ジュン「大体いい感じになってきたみたいだな。」
ユリ「ここから先はあまりすることがないから2人はほかのグループの偵察にでも行ってきていいよ。」
サトコ「ここはウチら2人にまかしときや!」
レン「じゃあ任せた。」
俺とレンはほかのグループの偵察へと向かった。俺たち以外にも偵察部隊が複数ウロウロしていた。
実成「あれ、ジュンじゃん偵察かい?」
ジュン「その通りだ!」
雪阿「なかなか暇そうだな部長!」
弘喜「よう!もう少しで出来上がりそうだぞ!」
実成とともに野外炊事の見張りをしていた男が南雪阿だ。小柄な体型をしており、1学年のマスコット的な存在だ。もう1人は中学校時代からゴルフを経験していて、現在でもゴルフ部に所属している堀海弘喜だ。弘喜のゴルフの腕は見事なもので、あだ名は「ヒッキー」と呼ばれている。
そのころレンは別のグループを偵察していた。
レン「調子はどうだい?」
洵「おぉっと!ここでほかのグループの偵察が来たかい!」
雅明「うえ~い!なんか来やがったぜぇ~い!」
康太「こっちは順調だよ。」
レンが偵察に行ったグループには生徒会に所属しており、将来生徒会長になるのを目指している熱い男の畑瀬洵と、面白いしゃべり方をしてあだ名が「まーちゃん」の久保木雅明と、卓球がうまくてゲーマーな堀崎康太がいた。ちなみにこの3人に共通するのが全員中学で卓球部に所属していたことだ。俺の通っていた山野中学校では卓球部は1番人気の部活だったので部員がすごい数だった。
10分後
ユリ「そろそろ出来上がりね。」
サトコ「ふぅ~これで一安心やね!」
瑠璃「あ!おいしそうに出来てるね!」
楓「いい感じじゃん。」
秋菜「これは期待だね!」
美代「ここもなかなかの実力みたいね。」
美智子「私たちも負けていられないわね~。」
ユリ「あら5人して偵察?」
この偵察部隊5人の女子は小柄な体系で人形みたいな浅賀瑠璃と、中学時代のバレー部のキャプテンでバレーがうまい宮森楓と、現在ゴルフ部に所属していてスポーツ万能な幾野秋菜と、スタイルが良くバイクが好きらしい林美代と、ちょっと天然でおっとりした性格の東間美智子だ。
5分後
ジュン「偵察部隊ただいま帰還!」
ユリ「おかえり~。」
サトコ「カレーはもう出来とるで!」
レン「おう、わかった。」
ジュン「片づけに関しては俺たちに任せとけ!」
ユリ「ありがとう。助かるわ!」
こうして出来たてのカレーを食べ始めた。俺はあまり調理のほうはやってはいないが、やっぱり自分たちの力で作った料理は絶品だ。まあ普段料理をやっている2人が作ったものなので美味いのは当たり前なのだろう。カレーを完食した俺たちは片づけを済ませて野外炊事を終えた。時間は夜になり、いよいよ男子の入浴時間になった。
-日高国際青少年自然の家・大浴場-
ジュン「やってまいりました風呂の時間DA!」
レン「テンションたけ~な。」
ジュン「そりゃそうよ!どこかで泊まるときは風呂の時間が楽しみで仕方ないからな!」
レン「はいはい・・・わかったからさっさと体洗うぞ。」
俺たちは先ず体を洗いに向かった。やっぱりこういう大きい宿泊施設だとシャワーの数がたくさんある。山野高校の生徒もかなりの数が使用していたが、山野高校以外の人も使用していた。
レン「ジュン少し洗顔石鹸分けてくれ。」
ジュン「おう!(ニヤニヤ)」
レン「何ニヤけてるんだ・・・・・お前すごいスースーするやつ渡しただろ。」
ジュン「バレたか!」
レン「甘いな。俺はこういうのは得意だからまったく効かないぞ。」
ジュン「くそぉ!なんてこったい!」
レン「そういうのいいからさっさと体洗っちまおうぜ・・・。」
その後俺たちは風呂を満喫した。風呂から上がって俺は部屋の班長になっていたので班長会議に行って、部屋に戻った後班長会議で聞いたことを部屋のメンバーに伝えて就寝した。こうして宿泊研修1日目が終わった。1日目からしてかなり濃い内容の宿泊研修だったが、明日はいよいよ宿泊研修の目玉行事の登山だ。途中何もトラブルが起きないことを祈り、そして何よりもクマに合わないことを祈るばかりだ。
2010年5月13日(木曜日)
-日高国際青少年自然の家・広場-
宿泊研修は2日目になった。山野高校の生徒はバイキング形式の朝ご飯を食べ終わり、朝の集いをするために入口から少し進んだところにある広場に集まっていた。
洵「国歌斉唱!」
♪~
実成「じゃあ旗あげていくよ。」
考輝「おう!いくぞ!」
国歌が流れ始めると同時に旗をあげる所にいた実成と考輝がそれぞれ日本の国旗と日高町の旗をあげ始めたが、片方の旗のあがるスピードがやけに速く、それにつられてもう片方の旗も早くあがってしまっている。
実成「ちょっとまって!早すぎるって!」
考輝「うわぁ!スマン!」
普通は国歌が終わるタイミングで旗があがり終るものだが、まだ国歌が途中なのに旗があがり終ってしまった。2人は国歌が終わるまで恥ずかしそうに前に立っていた。
レン「おいおい・・・国歌が終わる前に旗あがり終っちまったぞ。」
ジュン「なんかトラブったか!?」
そんな軽いトラブルがあった朝の集いも終わり、山野高校の生徒は各自自分の部屋に一旦戻って登山の準備をした。準備を終えた生徒全員が再び広場に集合したのを確認していよいよ登山口へと歩き始めた。
-北日高岳-
あっちを出て30分ほど砂利道を歩いてようやく登山口へと到着した。でもこの段階ではまだまだ序章に過ぎないのだ。ここから先は深緑のジャングルだ。さらにそこから登山を始めて30分ほど経過したときだった・・・。
ブーン
実成「ぎぃぃぃやぁぁぁあああ!!!」
ジュン「うぉお!いきなりどうした!?」
レン「あ、ハチが飛んでいるな。」
実成「いや~驚かせてゴメン。昆虫は好きなんだけれどハチとアブは苦手なんだ・・・。」
ジュン「ダメじゃん!つーかハチとアブも昆虫じゃねーか!」
-北日高岳・頂上-
後で聞いたが実成は小さいときに首をハチに刺されて大泣きして病院に行ったことがあるらしく、その時のことがトラウマになってしまっているらしい。実成が悲鳴を上げた地点からさらに30分ほど山を登っているとだんだん周りが開けてきた。
矢島「頂上に着きました!」
レン「ふぅ・・・ようやくか。」
ジュン「おーーー!最高の景色だーーー!」
山の頂上からは日高の景色を一望することができた。山の頂上は空気がとても澄んでいて、さらに壮大な景色が広がっている。登山はやはりこの頂上に登り切った時の達成感がいいものだ。ただし、この頂上は中間地点に過ぎないのだ。ここからは山を下山していかなければならないのだ。下山は下手をすると登りよりも体力を奪われるのだ。遠足は帰るまでが遠足などとよく言われるものだが、山登りも同じようなものだ。何事もなく下山し終るまでが登山なのだ。しばらく景色を眺めてから生徒たちは下山を始めた。
-北日高岳-
ジュン「ん・・・?」
レン「どうかしたか?」
ジュン「・・・いや気のせいだ、何でもない。」
俺はこの時に遠くのほうに黒くて大きな動物のようなものが見えたような気がした。距離もかなり離れていたのではっきりは分からなかった。下山した後もそれについては結局は謎のままに終わってしまった。
-日高国際青少年自然の家・サンゴの家-
登山を終えた生徒たちは各自の部屋で晩ご飯の時間になるまで休憩をしていた。その間アメリカンロック部のメンバーは「サンゴの家」と呼ばれる広場に集合していた。
ジュン「みんな今日は登山ご苦労さん!」
ユリ「頂上の景色は最高だったね!」
サトコ「登山なんて小学校の遠足の時にした以来やったで!」
ジュン「それはそうと明日はいよいよ山野町に帰るわけだが、今度の土日はオフってことでいいから各自体を休めてくれ!そして来週の月曜日から<ONステ>に向けての練習を再開するぞ!」
レン&サトコ&ユリ「了解!」
アメリカンロック部のメンバーが解散した後に晩ご飯を食べて、風呂に入って就寝時間になって俺は寝た。2日目も登山があり、なかなか壮大なものとなった宿泊研修。でも気が付けば明日は山野町に帰る日だ。思い返してみるとなんだかあっという間だった気がする。来年の修学旅行は今回よりも比べものにならないくらい壮大な行事になるのだろう。だいぶ気が早いかもしれないが、なんだかワクワクしてきた。
2010年5月14日(金曜日)
-宿泊研修バス1号車-
朝ご飯を食べ終えた生徒は荷物をまとめてバスに乗り込んだ。お世話になった日高国際青少年自然の家の従業員の方々に手を振って別れを告げ、バスは日高を出発した。気が付くと山野町の道の駅付近を走っていたが、どうやら今までの疲れがたまっていたのか爆睡してしまっていたらしい。そこから少し走って山野高校に到着した。
-山野高校・入口-
矢島「これにて宿泊研修終了です!皆さんお疲れ様でした!」
生徒は各自解散していった。時間は12時前とお腹が空く時間だ。
ジュン「そうだ!この後みんなでラーメン食いにいかないか?」
レン「それいいな。俺は行くぞ。」
サトコ「ウチもええで!でもお金取りに家に戻らんと。」
ジュン「別にいいぞ!」
ユリ「私も1回家に戻るわ。」
レン「じゃあ俺たち2人は先に行って待ってるか。」
ジュン「そうだな、じゃあまたあとで!」
こうして高校生活最初の大きな行事の宿泊研修が終了した。3日間という小学校の修学旅行よりも長い期間で様々な経験ができた。そして高校生活でもトップクラスに盛り上がる行事の学校祭の日が着々と迫るのであった。
ToBeContinued
最後まで読んでいただきありがとうございました。