青色の魔法が訪れた日
紅桜です。
今日も魔法は訪れない、と好きな色、の続きです。
今日もまた屋上で過ごすつまらない一日。いつも通り過ぎて、いつもと違うことを期待する気もなくなるようなそんな一日。そう思っていた三時間目の授業中、屋上で俺の上から降ってきたシャボン玉。
……誰かいるのか?
確かめようと立ち上がると今度は頭に何かが当たった。地面に転がったそれは消しゴムだった。消しゴムに気を取られていた俺はガシャンという派手な音と共に頭が濡れたのを感じ振り向く。そこには水たまりとガラスの破片。
……危なっ!
「大丈夫ですか〜?」
上からかけられた声の主は恐らくさっきのシャボン玉、消しゴム、水とガラスが降ってきた原因だろう。見上げた俺の目に写ったのは空に溶け込んでいるかのような青。恐らく染めたりコンタクトを入れたりしているのだろうが、その少年は髪も瞳も真っ青だった。
ってかこんな奴この学校にいたか?どうやらネクタイの色からして後輩らしいが。
「あぁ、無事だ。それより、お前見たことないが、ここの生徒か?」
「転校生です。今日からここに来ました。」
……そういえば、なんかそんな話があったな。じゃなくて、
「初日からサボりか?」
「あなたもサボりじゃないですか。……あんまり教室にいたくないんです。みんな怖がるから。」
意外だ。こんな派手な色にしてるからには不良なんだと思ったがそういう訳ではないのだろうか。まぁ真実はどっちにしろ、周りには不良だと思われるからこそ怖がられるのだろうが。
「みんな怖がるから、ねぇ……。お前気使いすぎじゃねぇか?」
「ただでさえ怖がられてるのに更に嫌われるのって嫌じゃないですか。」
面白い奴。見た目は不良っぽいのに嫌われたくない、か。
なんとなく、俺はこいつを気に入っていた。
「降りて来いよ。空色野郎。」
これはちょっと怒らせるか?と思いながらも笑いを含んだ声で言ったそれに、驚いたことにそいつは嬉しそうな顔をした。
「降りて来いよ。空色野郎。」
僕の色彩を目にしても臆することなく話しを続けた珍しい人が言ったその言葉は、僕にとって嬉しいものだった。だってまるで僕が髪と眼を青くしてる理由を分かっているかのようなそんな風に思えたから。もっとこの人と話してみたいな。この人なら、僕を分かってくれるだろうか。
淡い期待をして彼のところへと降りた僕の選択は正解だった。彼ーー天野 凛音は僕にとって初めての友人となったのだった。
「凛音、早く行こ〜よ〜。クレープ食べにいくんでしょ?」
「ちょっとくらい待て、茉歩。そんな急がなくてもクレープは逃げねーよ。」