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Rosso ala ─紅き翼の天使─  作者: 紅龍
第一章【過去】
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第六話『魔の鎖』

彼らは、ある日突然訪ねて来たのだ。

そして両親に、シルダの身を売って欲しいと頼んだ。

彼を買い取り、家で働かせようとした。

しかし、両親はそれを断った。

たった一人の大切な息子を、貴族に渡すわけにはいかない。

自分達の為に子供に辛い思いをさせることは出来なかった。

すると彼らは怒りを露わにし、剣を抜き放った。

そうして、シルダの父と母は、無残に殺されてしまった。

当時この国では、貴族は絶大な力を持っていた為に、貴族を裁くことが出来なかった。

貴族に不満を与えれば、いつ国に逆らってもおかしくない。

それ故に、シルダの両親を殺した彼らは、裁かれる事なく罰を免れた。

権力を恐れて、シルダを哀れむ者は誰一人いなかった。

彼はその後親戚の家に預けられた。

しかし親戚の人達にとってはシルダが足手まといで仕方がない。

毎日、彼は働かされ、孤独に生きてきた。


やがて自立したシルダは、魔術を学び魔師となった。

何故魔師を目指したかはわからなかったが、自分の歩むべき道は自然と定まった。

魔師として、天使と共に生きる資格を得、レアノに出会った。

天使であるレアノが、自分と同じように不幸な運命を辿らぬよう、支えながら生きてきた。

レアノと共に過ごした時は、儚くも楽しいものだった。

レアノのおかげで、過去を捨て去り、再び前を向く事ができた。

だから…


──レアノを失いたくない──



そこには、レアノの姿があった。

その小さな身体は青く鈍く光る鎖によって拘束され、目に見えて弱っている。

輝きを失った瞳が、僅かに開いているが、そこに色は映っていない。

「レアノ!」

駆け寄ろうとするシルダを、人影が遮った。

強い魔力がシルダの体を突き飛ばす。

「やはり来たか…シルダ」

シルダが擦り切れた腕を押さえ起き上がると、人影はシルダに近づいて来た。

「誰だ…?」

その時、肩に鋭い痛みが走り彼は叫ぶ。

鉄らしき物が肩の骨に擦れ、身体を稲妻が突き抜けるような激痛が彼を襲った。

肩に触れると、べったりとしたものが手に付いた。

生暖かい血が、肩からとめどなく流れている。

ずきずきと痛む肩に手を当て目の前を見ると、月明かりに照らされて男が見えた。

黒い布を纏った、魔師のような格好の男だ。

男はシルダを見、嘲笑うかのように薄ら笑いを見せた。

「レアノを…返せ」

すると男は答える。

「そうはいかない。お前のせいで散々冷たい目で見られた。お前もあの時殺しておけば…俺も何事もなく済んだだろう」

シルダがはっと顔を上げる。

「お前は…まさか…」

男が笑みを深くして言った。

「昔にお前の両親を殺したのは…俺だ」

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