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第六話「常夏にある工場」

一回目にチョコレートってだした事あったような……。

気のせいですね!

 世界にはさまざまな性格の人間がいる。

 わしが今まで生きてきた五十六年間で会ってきた中で、最も変わっていた男の話をしよう。その男はわしにだいたいの世界の広さと、あいまいな人間の可能性を教えてくれた。そして一番重要なことを教えてくれた人だ。


 あれはわしがとある町にいた頃のことだ。

 その町は熱帯にあってココナッツとカカオがよく取れてた。その為かチョコレートを中心とした甘い物が特化していて、海沿いの町と言うこともあって世界中に町のチョコレートが出回っていた。そうだな。あの町で一番有名な会社「YAMADA製菓」と言えば誰しもが聞いたことあるはず。

わしはそのYAMADA製菓の広告部でお茶くみとして働いていた。まだ十六の頃だ。そんな仕事を貰うのが精いっぱいだった。別に金が無かったわけではないが、学校へ行く意味が当時のわしには理解ができなかったのだ。学校へ行かなくても働くことはできる。そう思って、わしは会社へ何の意志も持たずに働いていた。

町の人々は甘い物が大好きだった。朝はカカオ九十%の苦いチョコレートと甘いココナッツジュースで目をさまし、昼はココナッツがふんだんに使われた料理とチョコレートケーキを楽しみ、おやつにブロック型のホワイトチョコレートとミルクチョコレートをつまんで、夜はココナッツのカクテルやらウイスキーのココナッツ割などのお酒とちょっと上品なお酒入りチョコレートをつまみで食べる。聞くだけでも口が甘ったるくなる。

おかげでその町では糖尿病になる人が多く、平均寿命が五十歳の境をさまよっていた。

わしも小さい頃からチョコレートを食べてきた。だからこそチョコレートが嫌いだった。あんなものは毒だ。何でこの町の人々は寿命を削ってまで食べ続けるのだろうか。わしはその町を憎み、チョコレートを憎んだ。


そんなある日、へんてこな自動車に乗ってあの男がやってきた。自動車はまだその時代珍しかったが、この町が貿易港であったため自動車は幾度か見たことあったのでそれほど驚きはしなかった。

「そこの少年。ちょっとチョコレート工場まで案内してくれないか?」

 昼休憩で駐車場に座り込んでいるわしにその男は近づいてきた。年齢はもうおじさんと呼べるくらいだろう。

「あんた誰?」

「人にものを聞くときは名乗るのが礼儀だろ.少年はそんなことも知らないのかい?」

「残念だけど俺には学がないんだ。しらねーよそんなこと」

 当時やさぐれていたわしはおじさんを見るなり地面に唾を吐いた。

「いやー君は実に生意気だな。どうして俺の周りには生意気なガキしかいないんだ?」

「おじさんが生意気だからだろ」

「そうだなー。それは一理あるが、俺はまだおじさんって呼ばれるような年じゃない。それにお前は俺が会ってきたきたガキの中でも一番生意気だ」

 おじさんは俺の顔をつかみにこやかに言った。そして「これは教えがいがあるな」とも言った。何を教えるのか寒気がした。

「さて、生意気な少年よ。チョコレート工場に案内してくれたまえ」

「ちっ、分かったよ」

 わしはしぶしぶおじさんをチョコレート工場に案内した。


「これは素晴らしい」

 工場に入った途端、おじさんは言葉を漏らした。わしはチョコレートの匂いが充満するその中に入った瞬間吐き気がして外へ一刻も出たくなったが。

「まあまて、どこへ行く、少年」

 外へ逃げ出そうとしたわしの襟をおじさんがひっぱり、首が閉まった。

「な、何すんだ!」

「そんな逃げることはないだろう。見てみろこの素晴らしき光景を」

 おじさんは工場の中を見せびらかすように腕を広げた。

 広がる工場内は見慣れた工場内だった。ごろごろとカカオが転がり、鉄色の機械の中に入っていき、出てくるころにはチョコレートとして川のように流れてくる。天井のいくつものライトが機械の銀色を輝かせ、チョコレートを生き生きとさせている。

「こんな素晴らしいチョコレート工場を俺は見たことがない。みろよあの働く人々の笑顔。チョコレートをこよなく愛してやまないって顔してる。こりゃあ世界一のチョコレートができるわけだ」

 わしはその時、吐き気を忘れて見とれていた。おじさんも隣で作に寄りかかり工場内を眺めている。

 俺はこんなによく工場内を見まわしたことがあっただろうか。いつもお茶ばかり運んで工場を行きたがらなかった。けど、入ってみたらここはそんなに悪いところじゃない。

 わしはその時感じたことを言葉に出せず、ずっと流れるチョコレートを眺めていた。

 その時おじさんが隣で言ったことを覚えている。

「な?すごいだろ、甘いもんってのは」

 外へ出た頃にはもう夕日が海を赤く染めていた。


 次の日、わしは朝会社ではなく学校へ向かおうとしていた。働き始めてからほとんど行ってない学校へ行くには足が重かった。

「少年。勉強しに行くのか?」

 あの変てこな自動車が俺の横にとまり、あのおじさんが出てきた。

「やっぱガキのやることは遊びと勉強だ。それを完璧にこなしてやっと大人になれる。少年、頑張んばって立派な大人になりなよ」

 おじさんはそう言って再びエンジンをかけた。

「おじさん。これからどうするんだ?」

「数十年前に出た故郷に戻る。約束を守らなきゃならないんだ」

「最後に一つ聞いていいか?」

 わしはその瞬間、何となく、どうしても聞きたいことができた。

「おじさんは、立派な大人になれた?」

 おじさんは白い歯を見せて笑い、言った。

「立派な大人になるために約束果たしに行くんだよ。約束破るようじゃ大人とは言えないからな」

 そう言って古ぼけた籠を見せてきた。

「そうだ、餞別としてこれやるよ。これ喰って頑張んな」

 おじさんはアイスクリームを渡してきた。何度か話には聞いたことはあったが、実際食べるのは初めてだった。


 ほのかに苦いチョコレートの味がした。


「少年、甘い物ってのは素晴らしいんだ。これだけは覚えとけ。あばよ」

 この短い間におじさんが教えてくれたことの中で、この事がもっとも重要で馬鹿げていたと今でも思っている。

 離れていく自動車を、わしは静かに見送った。ほんのり口の中に残った苦い味が、寝ぼけた頭をさまし、足を軽くした。


 アイスクリームのおじさん。今でも所々で噂は聞く。まるで伝説か神話のように世界中でその人らしき人物の話を聞く。だが、誰もその行方を知らない。

 本当に変わった人だ。そして甘い物をこよなく愛していた。


まあ、あれです。ネタ切れです。

次回最終回!ついにおじさんの秘密らしきものが明らかになる可能性があるかもしれない!

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