無垢
Pure
ボクは悪いことなんてしてないのに、どうしてこんな姿になったんだろう?
きっと罰が当たったんだってママは言っていたけれど、どうしてもボクは納得がいかないです。朝も早く起きて、夜も八時には寝ているのに。毎日家に帰ってから、三時間は勉強して、ママからもらった難しい御本を読んでいる。ご飯を食べたり、お風呂に入るくらいならお勉強したい。
ママは「経済的で助かるわ」と笑っていた。
たまには息抜きが必要だと思って、ママに買ってもらった〈くろまじゅつ〉の本を試したのがいけなかったのかなぁ?〈処女の血〉を集めたり〈ネズミの子供〉を潰して生け贄にしたりしたからかな?
それとも一昨日の学校の帰りに、同じクラスのカナコちゃんを埋めてしまったからかな?
でも、あれは仕方ないよ。だってカナコちゃんは大笑いしながらボクの悪口を言ったんだもの。『汚らしいわね』とか『見てると気持ち悪いから視界に入らないで』とかいろいろ言われたけれど、一番ボクが傷ついたのは『早く死んでしまえばいいのに』って言われた時だった。
ボクの頭の中で何かが割れる音がして、意識が遠くなった。気がついたら、学校の近くの工事現場の深く掘られた穴の中に、動かなくなったカナコちゃんを落としているところだった。あの子のシャツは真っ赤になっていた。ボクの悪口を言っていた子がいなくなって気持ちはスッキリしたけれど、勉強する時間が迫っていたから急いで家に帰った。それがいけなかったのかなぁ?
ボクは悪いことなんて、ちっともやってないのにな。
皮が黒く剥がれて背中から変な骨が生えてきてから、ボクは学校にも行かず、ずっと部屋で寝ている。
階下から、ママが変な男の人とヒソヒソ話をしているのが聞こえる。今夜、ボクは殺される気がした。
その時、頭の中で見たこともない声が響いた。
目を閉じると、どす黒い皮膚、血の滲んだ目、大きなコウモリの羽根、頭から二本の角が生えた男の人が現れた。その人は「ボクを助けに来た」と言って手を差し伸べてくれた。
ママは頭から血を流して笑っていた。
いつもの笑顔だった。
「これでもう、独りじゃないよ」
口の奥で、白い牙が光った。
──やっと、見つけた。
「え?」
男の人はただ、笑っていた。
何だか楽しくなって、一緒に笑った。
もう独りじゃないんだ。
一緒に誰かの身体をボウケンしたり、頭のナカミを見たりできるかなぁ?
今日から、毎日が楽しみだ。
ママもきっと喜んでくれる。
相当病んでたんやろなぁ……
2006年、夏、大阪にて。




