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探偵は胸を揉む  作者: リチャード裕輝
探偵は胸を揉む:『霊感(パイ)コメトリー・オブ・ザ・デッド』

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『一億円の指(ゴッドハンド):その5 巨災対(巨大乳首災害対策本部)神の指 vs 破壊神』

『一億円の(ゴッドハンド):その5 巨災対(巨大乳首災害対策本部)神の指 vs 破壊神』


第十九章:内閣総辞職の危機と「第03救護計画」

【202X年 14:00 官邸・地下危機管理センター】 モニターに映し出されるのは、現実とは思えぬ地獄絵図だった。東京湾から上陸した巨大不明生物「ゴジラ」は、自衛隊が誇る10式戦車の砲火を嘲笑うかのように蹂躙し、その背びれから放たれる熱線によって港区一帯を火の海に変えていた。


「目標、歩行を再開。進行方向に品川、大井町。防衛省、総力を挙げて大和型火力を投入するも効果なし! 皮膚貫通能力、ゼロです!」


絶望的な報告が飛び交う中、官房長官・黒沢は、タブレットで支持率が「1%」を割り込んだのを確認し、冷徹な笑みを浮かべて神崎総理に詰め寄った。


「神崎総理。国民の生命を守れぬ政府に存在意義はありません。総辞職し、全権を私に委譲すべきです。……この『化け物』には、暴力ではなく、政治的な妥協が必要だ。私が対話の窓口となりましょう」


(と言っても、そのゴジラを呼び起こしたのはこの私なのですがね……フフフ。秘密裏に開発した低周波発信機で、深海の古神を叩き起こした。すべては私が新世界の王となるための舞台装置だ……)


黒沢の狙いは明白。混乱に乗じた政権奪取。しかし、神崎総理は震える手で、ボロボロのパイプ椅子の背もたれを強く掴み、立ち上がった。その瞳には、狂気にも似た決意が宿っている。


「……妥協など不要だ、黒沢君。私はユウキくんからすでに、この日がくることを聞いていたのだよ。君は忘れているようだが、私はこの日のために、法をねじ曲げ、憲法解釈を根底から変更し、『特級胸部救護士』という名の特殊人型兵器を囲い続けてきたのだよ」


「正気ですか総理! あれはただの、女の胸を揉むことしか能がない変態だ!」


「違う。あれは……神が人類に残した最後の『触覚インターフェース』だ。――ユウキ君、やりたまえ」


傍らで秘書として完璧に立ち振る舞っていたユウキが、冷酷なまでに美しい指先でエンターキーを叩いた。 「了解。これより『第03救護計画』を発動。――対象、久我奏太。強制投下シークエンスへ移行します。黒沢官房長官、あなたの『発信機』の周波数、すでにこちらで上書き済みですので悪しからず」


「なっ……!? なぜそれを!」驚愕に顔を歪める黒沢。ユウキは一瞥もせず、作戦を開始した。


(想定誤差、±0.7%。政治、世論、怪獣、生理反応――どれも人間が作ったシステムだ)


ユウキはモニターを見つめたまま、内心でだけ呟く。


(久我奏太。あなたは英雄ではない。ただ――この世界が神に触れるために用意した、唯一の指だ)


(逃げ道?最初から、設計に存在しない)


第二十章:ヤシオリ作戦改め『ドラゴン殺し作戦』

【同日 16:45 東京都上空・高度2000メートル】 「いや、怖いよ! 高いよ! 風速40メートルだよ! 物理法則を完全に無視した特攻だろこれ! 助けてユウキきゅん!!」


自衛隊最新鋭ヘリ・アパッチの機外、ワイヤー一本で吊るされた久我奏太は、死の恐怖で失禁寸前だった。眼下には、ビル群を紙細工のように粉砕するゴジラの巨体が迫る。


地上、移動指揮車から冷徹な計算式を弾き出し続けるユウキの声が、インカムを通して久我の鼓膜を叩く。 「久我さん、泣き言は聞き飽きました。ゴジラは太古の怨念の集合体。通常兵器による物理攻撃はエネルギーを吸収されるだけですが、生体組織である以上、『末梢神経の極点ツボ』は必ず存在する。……一億円の価値があるあなたの指を、奴の逆鱗(乳首)へ叩き込むのです。ターゲット、ロックオン。射出!」


(失敗しても、計画は次に進む。――だが、成功するのはあなただけだ)


「ヤダァァァァァァァ!!」


ワイヤーが切断され、久我は自由落下の加速を霊力へと変換。全身から黄金の輝きを放ちながら、ゴジラの胸部へと一直線に激突した。 接触の瞬間、久我のサイコメトリーが起動する。脳内に流れ込む、数億年分の絶望と孤独。


(……なんだこれ。怨霊じゃない。こいつ……あまりの巨大さゆえに、数億年もの間、誰からも触れられなかった。ただの『猛烈な痒み』と『孤独』で狂ってるだけなんだ……!)


「久我さん、報告を!」


ユウキの声が飛ぶ。


「ユウキくん……こいつ、デカすぎて自分でも掻けなかったんだよ! 今、人類最高の手が、奴の孤独に触れたッ!!」


第二十一章:伝説の薬剤と四手合体 ―― 昇天の臨界

しかし、現実は非情だった。ゴジラの皮膚は超高密度の装甲と化しており、久我の指先は摩擦熱で炭化し始める。


「ユウキくん、乳首に到達したけど……皮膚が硬すぎて、このままじゃ指が……!」


インカム越しにユウキの冷徹な声が響く。


「久我さん、聞こえています! ですが……まだ諦めるわけにはいきません。もう少しです、耐えて!」


「や、やだぁぁぁぁ!! まだ……まだ終われない……ッ!」


久我は黄金の輝きを放つ指先を押し込もうと必死だった。汗と血で濡れた手に、焦燥と絶望が渦巻く。皮膚の硬さは尋常ではなく、指先は痛みに悲鳴を上げる。


(……折れる……このままじゃ、俺の指は……ッ! ここで……終われるはずがないッ……!)


絶体絶命。その時、巨大な轟音が西の空から近づいてきた。旧式輸送機の影がビルの谷間を滑空する。


「間に合った……これで、最後のピースが揃いましたよ、久我さん」


ユウキの声が少しだけ笑みを帯びた。


ハッチが開き、虹色に発光するドラム缶が数百本、空中へと投下される。そして、その先頭に立っていたのは――失踪していた師匠・阿修羅。

いや、失踪していたのではない。世界の裏側で、これを“掴んでいた女”だった。


「久我! 弟子がそんな情けない顔をするんじゃないよ! 修行代の残りは、このローションでチャラだ!」


「アマゾン奥地の秘境で、原住民の神から奪い取った秘薬……『感度一万倍・神々のローション』! 全てを浸透させな!!」


空中で霧散した虹色の液体が、ゴジラの巨体と久我の指を黄金の粘膜で包み込む。滑らかさは摩擦の概念を消し去り、感度は銀河系を突破した。


「いくぞ……阿修羅先生、手を貸せ! 特級胸部救護士、真の秘儀! 四手合体……『超・双頭の龍殺し(ハイパー・ダブル・ドラゴン・スレイヤー)』ッッッ!!!」


久我の二本の手と、阿修羅の二本の重厚な手が重なり、黄金の四手がゴジラの「極点」に深く、優しく、そして激しく食い込んだ。 一万倍に増幅された快楽の波動が、破壊神の全細胞を駆け巡る。


「グ、ギャオォォォォォォォ……ッ(訳:あああ、そこ、そこぉぉぉぉ!! もっと、もっと深くぅぅぅ!!)」


ゴジラは白目を剥き、都心のど真ん中で弓なりに反り返り、史上空前の「昇天」を遂げた。一兆リットルの放出エネルギー(霊力の残滓)が東京を包み、破壊神はついに、安らかな眠り(フリーズ)へと沈んだ。日本は、指先一つで救われたのである。


第二十二章:権力構造の逆転 ―― 官邸の影とパイプ椅子の王

【三ヶ月後 官邸・総理執務室】 日本は「ゴジラを鎮めた国」として、国際社会の絶対的な頂点に君臨していた。神崎総理は、完全に手懐け(久我により)、巨大な発電機と化したゴジラをエネルギー源とする、全人類の楽園『神崎ジュラシック・パーク』を建設。再度、内閣支持率は統計学上あり得ない「120%」に到達した。


しかし、その黄金時代の官邸内部は、別の意味で地獄と化していた。


かつて総理が座っていた「イタリア製最高級本革の椅子」には、今や公務に疲れ果て、目の下にクマを作った久我奏太が座らされていた。その膝の上にはシズコ夫人が、右腕にはリンが、獲物を狙う蛇のように抱きついている。


「久我さん、次は……この『聖域の浄化』を……」 「ダメよママ! 久我さんの指は国家の宝。私の専属なんだから!」


シズコ夫人は乱れたブラウスから、およそ人前で見せるべきではない肌を露出し、リンはリンで久我の耳を甘噛みしている。


「……あ、あの……俺、そろそろ事務所に帰りたいんですけど……」


久我が弱々しく声を上げるが、背後に立つユウキが、総理の備蓄していた時価数百万のワインをラッパ飲みしながら微笑む。


「無理ですよ久我さん。あなたは今や『国家の安全保障』そのもの。もしあなたが官邸を離れれば、ゴジラが再び孤独で暴れ出し、日本は滅びます。一生、この官邸という名の豪華な牢獄で彼女たちを揉み続けるのが、あなたの『公務』です」


さらに、部屋の隅で震える黒沢官房長官にユウキが視線を送る。


「黒沢さん、あなたの『ゴジラ覚醒計画』の証拠は、すべてシズコ様に提出済みです。彼女、あなたが自分の趣味――生ける熟女好き――を隠して総理の座を狙っていたことに、ひどくお怒りですよ」


黒沢は青ざめる。


「ひ、ひぃぃぃ! 申し訳ありません、シズコ様! 何でもしますから、それだけは秘密に……」


かつて野心家だった黒沢は、今やシズコの「弱み」を握られ、官邸のパシリへと成り下がった。もちろん、相手は自分が憧れてやまなかった“生ける熟女”、シズコ様である――従うしかないのだ。


そして。 執務室の最も日当たりの悪い、埃の舞う隅っこ。 そこには、三ヶ月前よりもさらにボロボロになったパイプ椅子に腰掛け、虚空を見つめる神崎総理の姿があった。


「ポチ……タマ……お前たちまで、あっちに行くのか……。久我君の指は、猫まで虜にするのか……」


総理が可愛がっていた愛犬も愛猫も、今や久我の足元で腹を見せて恍惚としている。総理の足元には、数枚の10円玉と殴り書きのメモが置かれていた。


『パパへ。期間限定のソーダ味アイスと、新作のブランドバッグ買ってきて。間違えたら内閣不信任案提出ね。あと、レジ袋はいらないから。 リンより』


「……黒沢君。君も行くか……? コンビニへ……」


パイプ椅子の隣で、同じくすべてを諦め、官房長官としての威厳を塵一つ残さず失った黒沢が力なく答える。


「……ええ。私も、シズコ様から『深夜限定の高級スイーツを買ってこなければ、貴様の秘密(生ける熟女好きの趣味)を久我さんにバラす』と脅されております……。行きましょう、総理。私には、ファミチキを揚げる音さえ、ゴジラの咆哮に聞こえる……」


支持率120%という虚飾の黄金時代の影で。 深夜のコンビニへ向かって、肩を寄せ合い、寒空の下をトボトボと歩く日本最高権力者たち。その背中には冷たい夜風が吹き抜け、路面には、拭いきれない敗北と哀愁の涙が点々と落ちていた。


一方、官邸の最上階では、久我の「ヤダァァァァァァァ!」という悲鳴が、今宵も官能的な調べと共に響き渡るのだった。


(完)

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