『一億円の指(ゴッドハンド):その2 国家試験編』
『一億円の指:その2 国家試験編』
第六章:真面目すぎる国家試験 ―― 肩透かしの「乳首殺し」
運命の当日。会場は異様な緊張感に包まれていた。今回は「国家資格設立10周年」を記念する特別な試験。合格すれば、政財界の専属も夢ではない「特級資格」が付与されるという。
まずは豪華な式典が始まった。壇上には政財界の重鎮が並び、来賓席には一際目を引く清楚な令嬢・リンの姿があった。
「お、実技試験の相手、あの綺麗な人かな?」
久我が期待に胸を膨らませていると、デモンストレーションとして現れた太ったおっさんが、リンに教科書通りの美しい指圧を披露した。
「チッ、どうやら周りも強者揃いか……。だが、俺の指は一億円だぞ」
その時、会場のスピーカーから、感情を一切排した冷徹な声が響き渡った。
「――時間です。これより、実技試験を開始します」
その静かなアナウンスが合図となり、会場の空気が一瞬で、まるで重い石を投げ込まれた水面のように沈黙した。
しかし、いざ実技試験が始まると久我は愕然とした。現れたのはリンではなく、体重120kgの超重量級女性、通称「ブサ女」だったのだ。
(……クソッ、明らかにハズレだが、俺はどんな女だろうがやってやるぞ。先生とのあの激闘を思い出すんだ……!)
久我は黄金の指を光らせ、阿修羅先生直伝の『乳首殺し』を発動しようとした。……が、その瞬間、久我は凍りついた。
(……待てよ。これ、国家試験だよな? 審査員がペン持って採点してるよな?)
目の前の巨女のそこを掴んで超高速回転させる自分を想像し、冷や汗が流れる。
(これ、ただの公然わいせつだろ!! 警察沙汰だろ!!)
さらに追い打ちをかけたのは試験官の声だ。
「では、基本手技『揉捏法』を行います。肩甲骨の筋肉の走行に沿って……」
(揉捏法って何だ?おい!師匠!全然、乳首殺し関係ないじゃん!! )
仕方なく、普通の指圧を試みるが、修行で鍛えすぎた指先は脂肪にめり込むばかり。
「あなた、全然ダメね。センスがないわ」
ブサ女に一蹴され、久我が魂を抜けかけさせていると、非情なアナウンスが響いた。
「――引き続き、別室にて筆記試験を開始します。受験生は移動してください」
久我は崩れ落ちそうになった。
「……は? って、実技だけじゃねーのかよ! 筆記もあるのかよ!!全く勉強してないんですけど....俺のこの一億円の指は、マークシートを塗りつぶすためにあるんじゃねえ! 」
久我の叫びは虚しく会場に消えた。
ふと見ると、隣に来たユウキが、冷や汗を拭いながら小声で囁く。
「久我さん、言ってませんでしたっけ? 国家試験ですから、当然ありますよ。……あ、でも大丈夫です。久我さんの頭なら、基礎知識でいけますって!」
第七章:禁断のカンニング ―― サイコメトリーの罠
(そ、そうだよな……落ち着け……こう見えて俺は一応、有名大学卒だ。筆記はいつもトップだったはず……!)
だが、問題用紙を開いた瞬間、久我の脳裏には「乳首」の二文字しか浮かばなかった。この一ヶ月、阿修羅先生との地獄の特訓で、脳細胞のデータがすべて「乳首」と「除霊」に上書きされていたのだ。
問1:肩こりに有効な経穴を答えよ。
久我の回答:『乳首の付け根(ドラゴン殺しの始点)』
問2:揉捏法の注意点を述べよ。
久我の回答:『摩擦熱で発火しないよう、霊力で冷却すること』
(……全然ダメじゃねぇか!! 知識が全部、煩悩に変換されてる!!)
追い詰められた久我は、ついに封印していた技を解禁した。ちょうど前の席には、カリカリに痩せたガリ勉風の女性が座っている。
「……あの禁断の技をやるしかないな。ちょっと失礼」
コロコロ……と後ろから、消しゴムを上手いこと彼女の胸元へ転がす。
「あっ、すみません。消しゴムが……」
拾い上げるふりをして、久我の黄金の指先が彼女の膨らみを電光石火で「揉み」、サイコメトリー(残留思念読解)を仕掛けた。
「――っ!?」
彼女の身体がビクンと跳ね、顔が耳まで真っ赤に染まる。しかし、あまりにも一瞬の、かつ「極上」の刺激に声も出せない。彼女は震える手で眼鏡をクイッと上げ、小刻みに震えながら小声で囁いた。
「……っ、うそ、今のは……。……い、いいわ。今回の試験、私、絶対に受かりたいの……。今のことは黙っててあげる。……だから、続きは合格発表の後に……」
(いや、続きとかないから! 勘弁してくれ、俺は答えが知りたいだけなんだ!)
だが、流れ込んできた正解データは、久我の脳内で最悪の変換を遂げた。彼女の控えめな胸部装甲に触れた瞬間、久我のサイコメトリーは冷徹にその「サイズ」を検知してしまったのだ。
問3(修正):(彼女の思考:筋肉の走行に沿って円の螺旋を描くように……)
久我の筆記:『Aカップの走行に沿って、乳首の螺旋を描くように……』
問4(骨格筋の構造):(彼女の思考:筋繊維の束が膜で覆われており……)
久我の筆記:『Aカップという名の平原が、薄いブラウスの膜で覆われており……』
久我のペンが止まらない。もはや解答欄は記号ですらなく、彼女のスペックに対する「寸評」と化していた。
「……よし! 全部『A』だ! 記号問題も記述も、全部『A』で埋めてやったぞ!!」
(……全部「揉み」の煩悩でフィルタリングされてる!!)
結局、すべての解答を「乳首」と「A」に書き換え、久我は完全に放心状態でペンを置いた。
第八章:双頭の龍殺し(ダブル・ドラゴン・スレイヤー)
不合格の危機。その時、来賓席の先ほどの令嬢リンが泡を吹いて倒れた!
「誰かお医者様はいらっしゃいませんか!?」
阿鼻叫喚の試験会場。泡を吹いて倒れた令嬢・リンを囲み、SPや試験官たちが右往左往する。今回の試験は、制度設立から「10周年」を記念する特別な国家試験。来賓席には政財界の重鎮が並び、例年以上の厳戒態勢が敷かれていた。
その混沌を割って、一人の男が静かに、だが圧倒的な威圧感を放って歩み出た。
「俺だ」
久我奏太である。その指先は、すでに修行で練り上げた黄金の霊圧を纏っていた。
「な、何をする気だ受験生! 下がれ!」
一人の威厳ある男が久我の前に立ちはだかる。仕立ての良いスーツを纏ったその男は、リンの身を案じ、鋭い眼光で久我を威圧した。だが、久我はその男の顔すら見ない。
「邪魔だ、どけぃ。一刻を争う」
「なっ……貴様、私が誰だか……!」
「処置を行うと言っている。命と肩書き、どちらが大事だ」
久我は冷徹に言い放つと、男を片手で押し退け、倒れたリンの元へ膝をついた。
久我は一瞬、(なんだ今の男は……しかし、今の流れるような身のこなし。どこかで見たことがあるような……)
「では、いくぞ。……失礼!」
バリィィィィィィンッ!!!
久我の黄金の手が、リンの清楚なブラウスを無慈悲に引き裂いた。露わになったのは、小ぶりながらも彫刻のように完璧な形を誇る美乳。その中央で、死の淵を彷徨うように色を失った、小さな桜色の突起。
「形、よし……!」
久我は覚悟を決めた。右手の二本指、そして左手の二本指。阿修羅先生との死闘で完成させた、左右同時発動の禁断奥義。
「片方ずつではない。ダブルでいくぞ……。秘技・ドラゴン殺し――『双頭の龍殺し(ダブル・ドラゴン・スレイヤー)』ッ!!!」
左右の指先がリンの「聖域」を完璧に捉え、超高速螺旋回転を開始した。
「――っ!? ……ああ、ああああああああっ!!!」
リンの身体が弓なりに反り返る。死の影に覆われていた瞳に、強烈な「悦楽」と「生命」の光が戻っていく。同時に、彼女の胸元からドス黒い霧がタコの形を成して噴き出した。
「やはりな……。失恋したタコの怨霊が、執念深く憑りついていやがったか」
久我の指が回転を速めるたびに、タコの怨霊は断末魔を上げ、黄金の光の中に爆散して消えていく。リンはかつてない快感の荒波に揉まれながら、完全な復活を遂げた。
「ああ……温かい……私、救われたの……?」
周囲の受験生や試験官たちは、10周年記念という晴れ舞台で起きたこの「奇跡」に呆然と立ち尽くした。
だが、現実は残酷だった。
先ほど押し退けられた男が、震える声で叫んだ。
「……娘が感じてしまったじゃないか……! いや、違う! 貴様、神聖な10周年記念試験会場で何を……! 私の娘に何という破廉恥な真似を!! 許さんッ! 摘み出せ!!」
「待て! 俺は処置を……!」
久我の抗弁も虚しく、即座に駆けつけた十数人のSPたちに囲まれる。久我は両脇を抱えられ、足を引きずりながら強制的に連行されていく。
「不合格だ! 永久追放だ! 警察へ突き出せ!!」
怒号が飛び交う中、会場の隅でユウキだけがその光景を食い入るように見つめていた。
「あっ、あの人は……」
ユウキは確信していた。一億円をドブに捨て、詐欺師のような師匠に逃げられ、試験内容すら違っていた。しかし、久我奏太という男は、そんな「常識」の枠を指先一つでぶち壊したのだ。
久我奏太。国家試験、史上最悪の不合格。 だが、彼が救った少女の父親こそが、この国の頂点に立つ男であることを、彼はまだ知らなかった。




