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探偵は胸を揉む  作者: リチャード裕輝
探偵は胸を揉む:『霊感(パイ)コメトリー・オブ・ザ・デッド』

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川に流れたダッチワイフの謎 ~神の手とサヨコの夜~』

『川に流れたダッチワイフの謎 ~神の手とサヨコの夜~』



1. 導入:川沿いの通報


川沿いの遊歩道。街灯の光が途切れるあたりで、三人は足を止めていた。ユウキが、やや気まずそうに口を開く。


「……匿名で、死体みたいなのがあると連絡がありました」


久我奏太は川面を一瞥し、わずかに眉を上げる。


「“みたい”か。ずいぶん歯切れの悪い表現だな」


「警察に回す前に、確認してほしいとのことでした。本当に死体だったら……その時は通報すればいい、と」


サヤカは無言で周囲を見回し、低い声で言う。


「夜の川で、匿名。……ろくな案件ではありませんね」


久我は小さく笑う。


「だから、俺たちの出番というわけだ」


三人の視線が、闇に沈む水面へと揃った。長い髪の毛が水面で揺れるのを見て、三人は息を呑む。ユウキの手は軽く震えた。


「……まさか、死体ですか?」


「落ち着け、まずは近くで確認だ。恐怖で動けないのでは、救いにならん」


サヤカは冷徹な瞳を細め、周囲の闇を観察する。


「……本当に死体なら、もっと血の色が濃く出るはずです」


ユウキの手は軽く震えた。




2. 川の中の正体


川辺に着き、久我がそっと水面を覗き込む。


「ばさっ」


長い髪が水に漂う瞬間、サヤカは目を細め、冷徹に観察する。

「……とても精巧に作られた人形ですね。女性で裸ですが、なぜこんな場所に……」


ユウキは眉をひそめ、口ごもる。

「明らかにあれです……服とかを着せる練習用のマネキンでしょうか」(ごまかし)


久我はうなずき、笑みを含ませて返す。

「そうそう、役者が演技や動作の練習に使うものです……まあ、ここに置かれる理由は俺にもわかりませんが」(ごまかし)


サヤカは指先で何かを示す。


「なるほど……練習と称して、殿方がここに出し入れするのですね」


久我とユウキが、同時に頷く。


「……なんだ、分かってたんですね」


ユウキは冷や汗をかきつつも、久我の余裕に呆れかえる。



3. 白い液体の謎とサイコメトリー


久我が手に取ると、ダッチワイフの股間部分に白い液体が付着していることに気づく。

ユウキは慌て、手を伸ばすサヤカを制止する。


「サヤカさん、触らないでください! 体液ですよ!」


サヤカは真っ赤になり、目を逸らす。


「……久我さんのですか……?」


久我は微笑み、否定する。


「僕のじゃないぞ。まだ出してない……じゃない、えっと、DNAで調べれば分かると思うが」


そして静かに小声で付け加える。


「いや、僕のサイコメトリーで調べる方が早いかもしれないなぁ……」


サヤカは眉をひそめるが、頬は赤いまま。

ユウキは背筋を凍らせた。



4. サイコメトリーによる真実の解明


久我が意を決して、ダッチワイフの冷たい肌に手を触れる。彼の「神の手」がサイコメトリーを発動させた瞬間、脳裏に暴力的なまでの「視覚情報」が叩きつけられた。


「視えた……っ!」


しかし、次の瞬間。久我の顔面は急速に青ざめ、胃の底からせり上がる不快感に襲われた。 脳裏に映し出されたのは、六畳一間の万年床。そこで、汗だくの凄まじいブ男が、この人形を抱きしめながら絶頂に達し、獣のような咆哮を上げながら「イク」瞬間のドアップ映像だった。


「グハッ……!!」


久我は激しく咳き込み、膝から崩れ落ちた。あまりの精神的汚染に、鼻血が出そうになるのを必死にこらえる。


ユウキが慌てて駆け寄る。


「久我さん! 大丈夫ですか!? 何を見たんですか!」


「ユウキくん……あまりにも、あまりにも濃密な地獄だった……。ブ男の……ブ男の魂の叫びが、俺の脳細胞をダイレクトに焼き払いよった……」


しかし、これだけでは「なぜ捨てられたか」の核心が見えない。久我は歯を食いしばり、再び指先を這わせた。


「……もう一度だ……! グハッ!!」


二度目のダイブ。今度は別アングル。ブ男が「愛してるよぉぉ!」と叫びながら、人形の顔面に至近距離で顔をうずめる脂ぎった光景。久我はあまりの不潔感に嘔吐きそうになる。


「……ま、まだだ……! グハッ!! ぐはっ……はぁ、はぁ……!」


繰り返されるブ男の絶頂シーンに久我は、見えない衝撃波を受けたかのように体を折って悶絶する。サヤカが心配と嫉妬の混じった表情でそれを見守る。


そして三度目の「グハッ」を乗り越えた時、ようやく映像が切り替わった。 涙を流しながら、ブ男がスマホで誰かと話している。


『……俺、結婚することになったんだ。……トメコ、ごめんな。今まで、ありがとう』


ブ男は、愛用していた人形を川へと流した。それが、彼なりの「過去との決別」だったのだ。


久我はフラフラと立ち上がり、目元を抑えて宣言する。


「……解けたぞ。直近まで、彼はここで全霊を注いでいた。だが、彼は、人生の新たな門出のために、愛用していた彼女をここに放ったんだ」



サヤカは小さく息を呑む。

ユウキは目を見開き、声を殺して驚愕する。



5. 謎の解決と久我の宣言


ユウキが尋ねる。


「警察に届けますか? それとも彼に返しますか?」


久我はニヤリと笑い、決める。


「いや、ここは、僕がいただこう」


そして静かにダッチワイフに名前をつける。


「トメ…….いや、サヨコ……これから君には、僕と一緒に過ごしてもらう」


「……サ、サヨ……、……名前、似てます……、……っ」


サヤカは自分の名前サヤカと酷似したその名に、羞恥心で爆発しそうになり、両手で頬を押さえた。


サヨコ(ダッチワイフ)は静かにそこに存在するだけだが、久我の命名で“人格”を与えられたかのように心理的な重みを帯びる。



6. サヨコ誕生後の和やかな緊張


久我はサヨコに触れつつ微笑む。


「練習用ですから、安心してください。ふふふ」


サヤカは冷徹な目を細めつつも、赤面しながら小声で呟く。


「……もう、久我様ったら、何をしているんですか……」


川沿いの暗がりに、ふっと緊張がほどける。

笑いと安堵、そして言葉にされない違和感が、静かな波のように広がっていった。


サヨコという名前は、捨てられた置物に役割と物語を与え、

今日もまた、久我の神業はギリギリのところで“事件”を“ギャグ”に変えてみせた――

そのはずだった。



7. サヤカの小声ギャグ+心理揺さぶり


久我がサヨコを愛おしげに抱え、事件(?)は幕を閉じた――そう見えた瞬間。


サヤカが、ほんの少しだけ距離を詰め、


「……人形それが、練習用というのなら」


蚊の鳴くような、しかし久我の耳には確実に届く温度で彼女は呟いた。


「……私は、いつでも本番でも良いのに」


久我は一瞬だけ眉を上げた。 サヤカは自分の発言のあまりの破廉恥さに耐えきれず、顔面を真っ赤に染め上げたまま、まるで氷像のように固まっている。


「……ほう?」


久我はニヤリと笑い、サヨコを強く抱き寄せた。


(ふふ……サヤカさんも、こういう小さな刺激で動くのか……たまらん……今日のおかずだよ、サヨコちゃん)


川沿いの暗闇に、緊張、笑い、心理的快感の三重構造が完璧に絡み合い、

神の手、サヨコ、赤面小声ギャグ……すべてが揃った至高の夜がここにあった。

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