新春特別編:乳神(ちがみ)の審判あるいは黄金比の福音
『霊感コメトリー・オブ・ザ・デッド』
新春特別編:乳神の審判あるいは黄金比の福音
1. 絶望の初詣と「偽装」の鑑定
大晦日の深夜、除夜の鐘が雪夜に響き渡る中、久我奏太は境内で激しく地を這っていた。
「……なんだ、この『絶壁の万里の長城』は」
そこは、一部の界隈で「乳神神社」と崇められるパワースポット。境内は、切実な表情で未来の質量を祈願する女性たちで埋め尽くされていた。その時、久我の「観察眼」が、パンを落として屈んだ女子高生の胸元を捉えた。
(……くそっ! 正に絶壁。貧乳のくせに、巧妙に寄せてやがった……! ついつい、無理やり作られた偽装の胸元を凝視しちまった……!)
偽装の谷間に目を奪われ、足元への注意が疎かになったその刹那。久我は凍結した石段に足を滑らせた。
「おっとっ……!」
重力に引かれ、前のめりに倒れ込む。咄嗟に衝突を避けようと突き出した両手は、運命に導かれるように、駆け寄ってきた巫女・白鳥の胸元へと吸い込まれた。
「むにゅっ……!?」
指先が厚い巫女装束を貫通し、その奥にある僅かな、しかし芯のある弾力を捉える。
「なっ……!? 何すんのよこの変態!」
怒声が響くが、久我は両手を離すどころか、指先の感触を咀嚼するようにさらに深く押し込んだ。
「待て、動くな……。ふむ、この指先に伝わる微かな抵抗。むにゅ、むにゅむにゅ……。これは、パットや寄せる努力では隠しきれない真実……限りなくBに近いAだ」
「初詣の喧騒の中、神職の胸を揉みながら即座にアンダーとトップの差を算出するとは。久我さん、あなたのその『触れた対象の情報を読み取る特殊能力(解診)』は、本来ならもっと高尚な救済に使われるべきものでしょう。それを巫女さんのカップ数測定に全振りするとは、清々しいまでの才能の無駄遣いです。今、ゴミを見るような目であなたを見ていますよ」
隣でユウキが、冷めた甘酒を啜りながら底冷えするような眼差しを向ける。
「限りなくBに近いAって褒め言葉のつもり!?何鑑定してんのよ! ……というか、あなた、そんな能力があるのね。なら、ちょっと相談に乗ってほしいんだけど」
白鳥は怒りを飲み込み、すがるような、それでいて深刻な表情で自分の胸を抑えた。
「おかしいと思わない? うちの巫女、私を含めて全員美人なのに、なぜか全員例外なくA〜Bカップなの。毎日毎日、あの御神体に『大きくなりますように』って必死に祈っているのに、これっぽっちも大きくならない。まるで見えない呪いで成長を止められているみたいに、祈祷の効果がゼロなのよ。あなたのその能力で、原因を突き止められないかしら……?」
久我は彼女が指差す本殿の奥に鎮座する、一対の巨石を見上げた。
「……白鳥さん。あの石が、ここの神なのかい?」
「ええ。由緒正しき乳神様よ」
2. 神への挑戦:両手の対話
久我は御神体に歩み寄り、その表面を凝視した。滑らかな曲線美、その頂には「生命の源流を象徴する小さな突起」と、それを守るように広がる「夜明け前の淡い月暈のような輪郭」が、完璧なバランスで刻まれている。
「……ほう。なるほど。……めちゃくちゃ良い形の乳だ。しっかり……神の『徴』まで再現されている。芸術的だ」
久我は神主にしか許されない聖域へ足を踏み入れ、両手を広げた。
「では、神と対話させてもらうッ。――両手で行くぞ!!」
久我の両手が、巨石に刻まれた左右の「徴」に同時に吸い付いた。
「むにゅぅぅぅううッ!! ――解診!!」
刹那、周囲の空気が爆ぜた。脳内に流れ込んできたのは、重油のような欲望。この神は、女性の「大きくなりたい」という願いを喰らいながら、自分自身は「究極の貧乳フェチ」として現状維持を強要し、愉悦に浸るサディストだったのだ。
「俺はお前が許せない……! 貧乳の人たちの夢を誑かし、自分だけ板の世界を堪能するとは! 俺はな……貧乳も巨乳も公平に愛せる男なんだよ!! 不当な停滞は、除霊対象だ!!」
久我の両手が猛烈な回転と圧を加え、石の中に眠る情念を「むにゅむにゅ」と強引に書き換えていく。
直後、御神体が激しく振動し、拝殿から地を這うような声が響いた。
《あ……ああぁっ……! 貴様、何をする! われは乳房を司る尊い神、乳神……あぁ、そこは……ダブルは反則だ……!! 貧乳を愛せ。創造の神はまず“平面”から始めたのだぞ?》
「深いようで浅いわ! 語感の差よ! 胸神でいいだろ! ほら、もっと素直になれ!!」
《くっ……素晴らしい手つきだ……。ならば見せてもらおう、貴様の作る理想世界とやらを! 今日から貴様が、この神社の神主だ。揉めばよい。全ては揉むことで解決する!!》
「即就任!? 暴論ッ!!」
3. 救済の儀式:心と質量を支配する「調律」
翌日から、神社の評判は爆速で広まった。噂の「揉み祈祷」である。 調律室にやってきたのは、一人の清楚な女子大生。彼女は切実に訴えた。
「私、胸以外は完璧なんです。でも……Bカップなんです。どうしても、あと一歩届かなくて……」
久我はプロの神主の顔(極上の変態の顔)になり、彼女の胸元に触れた。
「……むにゅ……。――解診」 「ひゃんっ……!? な、なに、その指先……熱い……っ!」
「君の悩みはバストだけじゃないね。君は、誰かに『ありのまま』を認められたことがない。就活の不安、親の期待……。完璧に振る舞うことでしか居場所を作れない孤独が、胸部の霊子を収縮させているんだ。……苦しかっただろう?」
久我の右手を通して、彼女の「心の空洞」が共有される。同時に、肉の奥深くまで霊力を流し込むように、「むにゅん、むにゅん」と丹念に解きほぐしていく。
「あ、ああぁっ……! なんだか、心まで暴われて……っ! 奥の方が、パンパンに熱くなって……温かいものが、溢れてくる……あ、あぁっ、んんっ!!」
女子大生は熱い吐息を漏らし、とろんとした瞳で久我の腕にすがりついた。
「いいですか、週に一度は通いなさい。そうすれば1年も経つ頃には、確実に理想のCカップになります。もしそれ以上の高みが必要なら、衣類越しではなく、直に触れさせてもらえれば、私の霊力を直接流し込む『秘儀』も可能ですからね。とにかく継続が大事ですよ。……あ、お布施はここに。あと乳神のお守りパワーのこもった特製の『育乳ブラ』と『授乳サプリ』。併用すると効果的ですよ」
心身ともに解きほぐされた彼女は、恍惚とした表情で久我の頬に熱いキスを落とし、万札を投入して去っていった。
「……やばい。この仕事、たまらない。天職だ……!」
「何ニヤけてんのよ! 仕事は山積みよ!」と白鳥のドロップキックが飛ぶ。
だが、次に現れた参拝客を見て、彼の表情は一瞬で凍りついた。 そこに立っていたのは、厚化粧に派手な服、お世辞にも美人とは言えない、パンチの効いた「ぶさめなおばさん」だった。
「ちょっと神主さん、アタシもグラマラスにしてちょうだいな!」
久我は一歩も動かず、冷徹な目で彼女を見据えた。
「……はい? あなたが?」
「そうよ、早く揉みなさいよ!」 久我は御神体の方をチラリと見て、深いため息をついた。
「……いやあ、ごめんなさい。今、神様が言ってるんですよ。『あ、あなたは無理。物理的にも審美的にも、うちの神社の管轄外』だって」
「なんですってぇ!?」
「神の神託(お告げ)ですから。お引き取りを」
「どの口が『公平に愛せる』なんて言ったんですか。思いっきり私情で選別してるじゃないですか」
ユウキのツッコミが飛ぶ中、陰で見ていた乳神は 『……よく言った久我! それだけはワシも無理じゃ!笑』 と、初めて久我と深く心が通じ合っていた。
4. 職人のこだわりと商才
久我は、憤慨して帰っていくおばさんの背中を見送りながら、キメ顔で右手の中指をスッと垂直に立て、決めポーズを作った。
「シュッ……!」
「ふっ。神職とは、時に残酷な審判を下さねばならないのだよ。濁った石を磨いてもダイヤにはならない。選ばれし『至高の原石』のみを救い、輝かせる……。それこそが美の探求者たる私の義務なのだ」
「……神の神託とか言ってますけど、結局は『自分の好みの女以外は揉みたくない』っていう最低の私情ですよね。中指を立ててカッコつけていい話じゃないですよ」
ユウキは手元の資料をめくりながら、淡々と久我の「悪徳ビジネスモデル」を言語化した。
「それにしても、恐ろしいシステムを構築しましたね。まずカウンセリングで相手の悩みを聞き出し、心のガードを解く。そうして精神的に依存させたところで、仕上げに『直接揉む』という物理的な快感を与える」
ユウキはさらに、事務的に社務所の売り上げ台帳を指差した。
「更に、どさくさに紛れて、ただのサプリを『育乳のお守り』なんて名目で高値で売りつける。悩みも質量もすべてあなたに預けさせ、『定期的に通わないと元に戻る』と脅してリピーターにする……。久我さん、あなた意外と商才があるというか、やっていることは完全に『悪魔の教育』ですよ」
久我は不敵に笑った。
「フフフ。それだけじゃない。ユウキくん、僕はなぜ乳神の言うことを大人しく聞いて、神主になって胸を育てるのか、分かるかい?」
「それはだね、僕はちょうど良いサイズが好きだからだよ! AやBという素材を、僕の至高の好物であるC・Dという黄金比に調理しているんだ。これぞ、神をも欺くエデンだと思わないか?」
それを聞いたユウキは、一瞬呆れた顔をしたが、すぐに指先を顎に当てて冷静な分析モードに入った。
「……なるほど。賢いな、久我さん。あなたのその『偏った好み』は、実は極めて理にかなっている」
「ほう?」
「貧乳が悩みでここに来る客層は、基本的にAかBカップです。そして、現在の生物学や組織の伸展率から鑑みると、後天的なアプローチで安全に到達できる限界値が、ちょうどその『CからD』だ。つまりあなたは、自分の好みを押し付けているようでいて、実は『顧客が最も望み、かつ物理的に実現可能な最高傑作』だけを確実に提供していることになる」
5. エピローグ:三方良しの狂った福音
夕暮れの境内。鏡の前では、巫女の白鳥が上気した顔で自分の胸を確認していた。
「ふふふっ、むにゅっ……。ふふふ……Cカップ。これよ。この、手に余るようで余らない絶妙な重量感……。神主の変態性は許せないけど、この『結果』だけは神の奇跡以上だわ!」
彼女は今や、久我から毎日直接「調律」を受ける特権階級(VIP)であった。
「白鳥さん、日課の調律の時間だよ。……ほう、今日も良い霊子の張りだ。むにゅ、むにゅん……」
「ちょ、ちょっと! 誰かに見られたらどうすんのよ! ……ん、ぁっ……。あんたの手、熱すぎんのよ……。……でも、まぁ、あんたがどうしてもやりたいって言うなら、今日だけは特別に揉ませてあげてもいいわよ。……明日も、忘れたら承知しないんだからね!」
不満げな態度を装いつつも、白鳥は久我の手のひらに身を委ね、恍惚の吐息を漏らす。
一方、空高くからその様子を見下ろしていた「乳神」も、かつてない多幸感に包まれていた。
『……ふむ。久我の奴、育ててはおるが、その噂を聞きつけた新たな貧乳予備軍が全国から殺到しておる。結果的に境内は常に、美しき板と美胸が入り乱れるパラダイス……。最高ではないか! 羨ま……いや、不純なり久我ぁぁ!笑』
神主が胸を揉んで理想を刻み、巫女がサイズアップに歓喜し、神がそれを見て喜ぶ。
「ユウキくん、見てごらん。あそこに並んでいる『原石(Aカップ)』たちを。あれを全て、俺の手で最高傑作(C〜D)に叩き直すんだ。世界中を俺の好きなサイズで埋め尽くす。これこそが、世界平和だと思わないか?」
「私利私欲を『世界平和』と言い張るそのメンタル、尊敬しますよ。さあ、次の『素材』がお待ちです」
乳神神社は、今日も日本一不純で、日本一幸福な「黄金比の福音」に満ち溢れるのだった。
― 完 ―




