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探偵は胸を揉む  作者: リチャード裕輝
探偵は胸を揉む~宵闇の傷痕:巨乳探偵の罪と情動の劇薬

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第9話:警察署での鑑識結果と解散の夜

警察署での鑑識結果と解散の夜


深夜の警視庁捜査本部。張り詰めた空気の中、捜査班は鑑識の結果を固唾をのんで待っていた。久我の「情動の確信」と、科学捜査の事実が対立する瀬戸際だ。


やがて、白衣を着た鑑識官が疲労の色を濃く浮かべながら、黒岩刑事に報告した。


「河川敷から発見されたナイフ(凶器)からは、美沙被害者の血液型とDNAが検出されました。これは、このナイフが美沙さんの殺害に使われた凶器である可能性を極めて強く裏付けます。しかし、ナイフの柄からは、美沙さんのDNA以外に、藤本容疑者のDNAは検出されませんでした」


鑑識官は、報告書をデスクに置き、次の紙を指差した。「一方、アトリエから見つかったメモの筆跡は藤本のものに酷似しているものの、故意に崩した形跡があり、偽装の可能性も否定できません。科学的には、このメモが藤本の殺意を示す決定的な証拠とは断言できません」


鑑識の結果は、警察のプライドと、久我の異能との間で宙吊りのままだった。凶器は特定されたものの、藤本と結びつける客観的な証拠(DNA)が不足しているという、極めて不安定な状況だった。


しかし、久我は伊織の体を通して読み取った藤本の具体的な「犯行の情動」を証拠に、最終的な断定を下す。久我はメモを鷲掴みにし、熱を帯びた声で言った。


「柄から藤本のDNAが出なかっただと? 凶器を隠蔽する際に、わざと指紋を拭き取ったり、手袋を使った可能性が極めて高い。彼は冷静に、そして計画的に犯罪を完遂したのです!」


久我はメモをデスクに叩きつけ、続けた。「筆跡など、瑣末な問題ではない。この紙片から溢れる情動は、ナイフに残留していた憎悪と全く同一だ。藤本は美沙への歪んだ愛と憎悪を、このメモで昇華させようとした。私の胸に読み取られた情動は、血やDNAよりも真実だ。このメモは、彼の殺意の宣言書であり、彼は『彼女の死』を自分の狂気の愛の『傑作』として完成させたつもりだ!」


黒岩はデスクに置かれた書類を睨みつけた。鑑識の結果と久我の常軌を逸した確信との板挟みで、彼の顔には深い皺が刻まれていた。


「藤本=連続殺人犯説は、これで濃厚となった。だが、鑑識が断定を避け、超能力者(久我)の証言に依存している以上、公判維持は厳しい。時効も目前だ。もはや、我々に無駄な時間は残されていない」


黒岩は重い口調で結論を下した。捜査班は、久我の供述に基づき、藤本の過去の交友関係や移動経路を夜通し洗い出し、すでに潜伏先候補を複数特定していた。


「逮捕状を請求する前に、明日早朝、特定された藤本の潜伏先候補を極秘で張り込み、身柄を確保してから徹底的な事情聴取を行う。今日はお開きだ。全員、明日に備えろ。くれぐれも、今日の情報は外部に漏らすな」


久我は、自分が最高のミステリーを解き明かしたという達成感と、伊織という「可愛い」女性を救ったという満足感に浸った。夜が深まる頃、5人は解散となり、黒岩と相田は残りの逮捕準備のため署に残った。


警視庁前の深夜の街路。ユウキは、タクシーを待つ伊織に、にこやかに、しかし意地の悪い笑みを浮かべて話しかけた。


「伊織さん。こんな時間に一人で帰るのは危険ですよ。先生のおかげで真犯人はほぼ確定したのですから、今夜は祝杯をあげましょう。私の都心の豪邸に泊まっていきませんか? 久我先生も泊まっていきますから、先生の『劇薬』を共有しながら、もっと深いお話しができますよ。もちろん、久我先生と同じ部屋で……なんてどうですか(笑)」


ユウキは久我を横目で見て、久我の達成感を性的な情事に矮小化しようとした。


伊織は、その誘いを一瞥すると、ユウキの思惑を見透かすような、夜の闇よりも冷たい笑みを浮かべた。きっぱりと首を横に振る。


「ご親切、感謝します。ですが、私は今日中に『完成させなければならない、大切なお仕事』がありますので。あなた方のお遊びには付き合えません」


伊織はそう言うと、久我にだけ聞こえるよう、そっと、強い決意を込めて付け加えた。


「真犯人を確定してくださった久我先生のためにも、この夜を無駄にはできません。先生の能力は、私に『真実の実行』を許可してくれたのですから」


久我は、伊織の去り際の張り詰めた様子と、彼女の瞳に宿る異常な光に、ふと胸騒ぎを覚えた。それは、悲劇のヒロインの復讐心のようにも、あるいは、何かを急ぐ冷酷な決意のようにも見えた。久我は思わず伊織の背に手を伸ばしかけたが、タクシーはすでに走り去っていた。


ユウキは、久我の動揺と、伊織の去り際を見て、満足そうに囁いた。


「フフフ。断られましたね、久我先生。最高のミステリーは、常にヒロインの『単独行動』でクライマックスを迎えるものです。さあ、先生。私の城で、明日の『終焉の始まり』のシナリオを語り明かしましょう」


ユウキは興奮した様子で、久我を自分の豪邸へと誘った。

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