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探偵は胸を揉む  作者: リチャード裕輝
探偵は胸を揉む~宵闇の傷痕:巨乳探偵の罪と情動の劇薬

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第4話:コンビニの告白:藤本の拒絶と連続殺人の確信

山梨へ:呪いのアンテナ

都心での合同捜査会議を終えた一行は、二手に分かれた。黒岩刑事と相田刑事は警察の覆面パトカーで山梨へ先行した。


久我、ユウキ、そして伊織は、ユウキの運転する漆黒のフェラーリで彼らを追うことになった。これは、久我の異能という非公式な「情動のアンテナ」を、警察とは切り離された状態で動かすというユウキの提案を、黒岩が不承不承ながら受け入れた形だ。


黒岩は、車に乗り込む前に久我を睨みつけた。「いいか、小説家。貴様らの非科学的な『情動の確信』が、我々捜査一課のプライドをかけて捜査を動かしている。その黒塗りの車で、勝手な真似をしたら承知せん。肝に銘じろ」


「ご心配なく、黒岩刑事。久我先生の『呪い』は、すでに最高の答えを導き出しています」 ユウキは後部座席で優雅に足を組み、笑みを崩さない。彼は久我と伊織の間に、冷たい隔たりを作って座っていた。


錆びたコンビニの記憶

黒岩刑事の指示で、一行はまず、藤本がアルバイトしていた郊外の寂れたコンビニへと立ち寄った。店舗は、10年以上前の姿のまま、古びた蛍光灯の唸る音だけを響かせている。五人の異様な捜査チームに、当時の店長は緊張した面持ちで応対した。


コンビニのガラス戸を抜けた伊織は、周囲をゆっくりと見渡した。 「懐かしい。このコンビニ。昔のままだわ。店長さんも変わらないわね」 彼女の口調は、感情の振幅が一切なく、まるで防犯カメラの映像を読み上げているかのようだ。


伊織のその言葉を聞いた相田は、驚きと戸惑いの表情を隠せない。 「伊織さん、覚えているんですか? 10年も前のことなのに……記憶喪失ではなかったんですか?」


「中島優希なんていう嫉妬深いアバズレ女もいたわね」 伊織は、相田の問いには答えず、まるで誰か別の人物の記憶を批評するかのように静かに呟いた。その声は、一瞬だけ藤本を軽蔑した女性の響きを帯びており、久我は背筋が凍るのを感じた。


拒絶の記憶:氷の告白

店長は渋い顔で語り始めた。 「藤本? ああ、藤本くんはね、真面目だったよ。でも、中島優希ちゃんとは、ちょっとね……」 「中島優希は、藤本くんと一番親しかった。彼女は藤本くんに好意を持っていたんだ。でも、藤本くんが美沙さんと付き合い始めてから、中島さんは疎遠になった。ああ、そういえば、美沙さんの妹さん、伊織さんも、アルバイト終わりに藤本くんに会いに、よく遊びに来ていたね。優希ちゃんは、それが面白くなかったんじゃないかな」


店長は、ふと何かを思い出したように言葉を切った。その表情は一気に青ざめる。


「そういえば、優希ちゃんが失踪する少し前、優希ちゃんは泣きながら『藤本くんは裏切り者だ、美沙と一緒にいるなんて許せない!』と叫んでいたらしい。それを聞いた藤本くんは、ただ冷たく『もう関わるな』とだけ言ったそうだ。無表情で、氷のように冷たい声だったと。その直後、優希ちゃんは行方知れずになった……」


店長は、美沙が殺された事件と、優希の事件の関連性に、初めて気づいたように顔を青くした。


倒錯の覚醒と相田の熱望

店長の証言が終わるや否や、伊織は微笑み、顔を紅潮させた。 彼女の瞳は潤み、頬は熱を持ち、数秒前までの無機質な表情は完全に消えていた。 「ふふ。カッコ良いお兄ちゃんだったの。早く藤本さんに、会いたいわぁ」 その声は、一幕目でペンダントを外した後に発した、妖艶で倒錯的な響きを帯びていた。


相田は、伊織の急激な変化と、その倒錯的な美しさに完全に魅入られ、ゴクリと唾を飲んだ。彼の瞳には、得体の知れない恐怖だけでなく、久我の能力を通じて彼女に触れたいという、病的なまでの熱望が宿っていた。 「伊織さん……? まるで別人みたいだ……」相田は、思わず久我の背中を一瞬憎々しげに見てしまった。久我こそが、彼女の「真実」に触れた――呪いによって――男だからだ。


ユウキは、久我と伊織の間の空気の変化を一瞬も見逃さなかった。彼は相田の病的な熱望、久我の動揺を観察し、小さく笑った。 「相変わらず、最高の被写体ですね、伊織さん。先生の『呪い』が、彼女の深層の情動の蓋を完全に開けてしまった。この情動の波は、最高のアンテナとして機能するでしょう」


確信の決定:愛を歪ませた者

久我は伊織の不穏な変化に気づきながらも、店長の証言と、伊織の胸から読み取った情動の一致に意識を集中させた。久我の額には、呪いの苦痛による冷たい汗が滲んでいる。


「藤本は、美沙さんの時と同じだ。女性の愛と、その対象への支配欲を拒絶し、そして殺意に変える。伊織さんが読み取った情動は、中島優希さんの事件の真実をも語っている。彼こそが、愛を歪ませた連続殺人犯です」久我は静かに断定した。その声には、呪いによる苦痛と、真実を掴んだ快感が混ざり合っていた。


黒岩刑事は、腕を組みながら深く頷き、相田刑事を見た。 「これで、我々の捜査の方向性は確定した。藤本は、拒絶された女性を標的とする異常者だ。小説家の『確信』を、我々が『証拠』に変えてやる」


相田は、久我の能力への興奮と、連続殺人犯の存在への恐怖で震えながら、敬礼した。 「は、はい! この連続殺人の偽装工作、必ず、この手で暴いてみせます!」


ユウキは久我の背後に立ち、その耳元に囁いた。 「最高の導入部ですね、久我先生。これで、あなたは『連続殺人事件を解決に導く探偵』になりました。あなたの『呪い』は、この世で最も素晴らしい『光』です」

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