第二話:閉鎖空間の成立と探偵の条件
第二話:閉鎖空間の成立と探偵の条件
リビングに通された四人は、まずは濡れた上着を脱いだ。ユウキが携帯電話を試みたが、やはり圏外。数分後、タケルが外の状況を確認しに戻ってきた。
「最悪だ……。山道が土砂崩れで完全に塞がれてる。車も通れない。この雨じゃ、夜明けまで動けそうにない…泊まらせてもらえないでしょうか!」
タケルが必死の形相で奏太に頼み込んだ。
「ダメだ」奏太は即座に拒絶した。過去の誓いが、彼の喉を締め付ける。
だが、リナとアオイの怯えた表情が、彼の決意を打ち砕いた。この外界から隔絶された空間で、彼らを無責任に放っておくことは、事件を見過ごすことと同じだ。奏太は、再び「業」に身を委ねることを悟った。そのためには、能力を行使するための介入権が必要だった。
「……仕方がない。泊まることを許可しよう。ただし、条件がある」
奏太は、冷徹な視線でユウキを見据えた。
「第一に、俺の部屋と書斎には決して入るな。第二に……」
奏太は言葉を切り、無遠慮にリナとアオイの二人の女性を見つめた。特に、能力の発動条件そのものであるリナの豊かな胸元に、意図的に、長く視線を止めた。
「第二に、女性二人は、この閉鎖された山荘では、俺の指示に従ってもらう。何か手伝いを頼んだら、拒否しないことだ」
タケルが激昂した。「え、おい、まさか変なことしようとかじゃないよな? この状況につけこんで…!」
タケルが前に出ようとするのを、ユウキが静かに制した。ユウキは、奏太の顔をじっと見つめ、タケルの軽薄な推測とは全く違う、深遠な意図を読み取ろうとしていた。
そして、ユウキは、まるで奏太の意図の「本質」をすべて理解したかのように、優雅に笑った。
「良いですよ。皆さん、命の恩人であり、この館の主人だ。人として当然の礼儀でしょう」
ユウキはリナとアオイに視線を向け、命令を下すように付け加えた。
「リナ、アオイ。久我さんの言うことは聞くように。お世話になるんだからな」
ユウキは、さらに笑みを深くし、冗談めかした口調で、奏太の顔を覗き込んだ。
「それに、久我さんは長い間、一人でこの山荘にいるんでしょう? 人肌恋しいかもだから、仮に夜伽と言ったら、ちゃんとするように」
その言葉は、奏太の心臓を冷たく穿った。この男は、俺の提示した「女性への指示権」という条件の裏に潜む、俺の「呪い」の片鱗に、限りなく近づいている。
山荘は外界と隔絶されたクローズド・サークルと化した。そして、奏太が設けた「女性への条件」は、この閉鎖空間において、その意味を強く帯び始めた。




