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探偵は胸を揉む  作者: リチャード裕輝
探偵は胸を揉む:『霊感(パイ)コメトリー・オブ・ザ・デッド』

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『螺旋の断罪:掌が暴く偽りの名探偵』プロローグ

螺旋の断罪:掌が暴く偽りの名探偵

プロローグ:復讐の旋律と漂白された罪


あいつらを、許すわけにはいかない。

法という網の目は、強者がすり抜けるためにこそ粗く作られている。権力、金、あるいは「過失」というあまりに便利な免罪符。それらによって、明白な血の汚れは漂白され、無垢な白へと書き換えられていく。ならば、この手で奴らを真実の色彩――どろりとした地獄の赤へ突き落とすまでだ。

一年前。チヒロは、あいつらの「遊び」の生贄となって命を落とした。

遺品のボイスレコーダーに残されていたのは、凍り付くような悦楽の記録だ。

『ミステリーの洗礼だよ』

『飲めないなんて、空気が読めないな。探偵の素質がないぞ』

湿った笑い声の合間に響く、肺が引き裂かれるようなチヒロの咳き込み。そして、永遠に続くかと思われた死の沈黙。あいつらはそれを、シャンパングラスを傾けながら「不運な事故」として処理した。

今もなお、奴らは「名探偵」を気取り、高尚な知的遊戯に興じている。他者の人生をパズルのピースとしか見なさず、その痛みに想像力を割くことさえない。ならば、相応しい舞台を用意してやろう。最高に知的で、救いのない地獄を。

私は奴らの動向を、その毛穴の一つひとつに至るまで調べ尽くした。嗜好、癖、そして奴らが演じたがっている「理想の名探偵像」。

愛したすべてを奪った報いは、神の裁きなどという生ぬるいものでは済ませない。

「天誅」ではない。これは、泥に塗れた私による「人誅」だ。

復讐という名の刃が、今、標的の喉元へ届こうとしている。絶海の孤島、逃げ場のない嵐の夜。舞台装置は完璧に整った。

……だが、一つだけ計算外のノイズが混入した。

あの、あられもない手つきで死体の胸を揉みだした、下卑た眼差しの男だけは。

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