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探偵は胸を揉む  作者: リチャード裕輝
探偵は胸を揉む:『霊感(パイ)コメトリー・オブ・ザ・デッド』

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『霊障マタニティ・ブルー:新米パパのパニックと聖母の嘔吐浄化』

『霊障マタニティ・ブルー:新米パパのパニックと聖母の嘔吐浄化』


1. 異変:近隣からの「感謝状」

「……お、……オエェェェッ!!」


サヤカの凄まじい呻き声が、早朝の事務所に響き渡る。


「サヤカさん! 大丈夫か!? 今、魂の触診で胸をマッサージして……」


「触らないで!この変態パパ! 寄るな、あっち行けぇぇ!」


サヤカが洗面所に駆け込み、ひとしきり「聖なるリバース」をぶちまけた、その瞬間。


ドォォォォォン!!


事務所を中心に、直径500メートルに及ぶ「黄金の衝撃波」が吹き抜けた。


「……久我さん、見てください。窓の外、昨日までいた『地縛霊の集団』が、サヤカさんのつわり一発で全員成仏しましたよ」


ユウキがタブレットを眺めながら淡々と告げる。

サヤカの「つわり」は、単なる生理現象ではなかった。胎内の『霊の子』が、母体の不純物を外部へ強制排出する際、高純度の法力が混じり合い、「広域殲滅型・浄化ブレス」へと昇華されていたのだ。


「……近所の事故物件が、軒並み『優良物件』に書き換わってるぞ。サヤカさん、君は歩く除霊兵器か?」


2. 買い出し:ベビーザらスへの殴り込み

「いいかユウキくん、今日は戦いだ。俺の『初めて』の記憶がない以上、せめて最高の商品を揃えて責任を取る!」

久我は、気合の入った(勘違い)表情でベビー用品店へと足を踏み入れた。

しかし、棚に並ぶ膨大なベビーグッズを前に、最強の除霊師の脳は一瞬でオーバーヒートした。


「……な、なんだこれは!? 『おしりふき』だけで20種類もあるぞ! どのおしりふきが、一番『霊的摩擦抵抗』が少ないんだ!? 霊子を吸い取らないオーガニックコットンはどれだ!?」


「久我さん、落ち着いてください。ただの不織布です」


「黙っててくれ! おや……この『おむつ』……。この吸水ポリマーの配置、まるで邪気を吸い出す呪印のようだ。……待て、このフィット感はどうだ? 超能力ベビーの『黄金の奔流』を食い止められるのか!? ……よし、俺が履いて試す!」


「やめてください久我さん! それ、新生児用ですから! 破けますし、通報されますよ!」


久我がズボンの上から無理やりテープタイプを巻こうとして「おい、ユウキくん、サイズが合わんぞ……! このおむつは霊的防御力が足りないのか!?」と絶望する横で、周囲の母親たちの視線が氷点下まで下がっていく。


3. 究極の選択:抱っこ紐と法力

「……久我様、わたくし、これがいいですわ」


サヤカが指差したのは、最高級の多機能抱っこ紐。

「待て、サヤカさん。それは物理的な強度はあるが、霊的防護機能バリアがついていない。俺がこれに、こないだ手に入れた特級呪物の『はなだの布』を編み込んで、対魔仕様に改造してやる」


「……久我さん、それだと赤ちゃんが蒸れて死にますよ。あと、その布、呪われてますよね?」


「うるさい! 俺の子だぞ! 産まれる前からきっと、テレポートするような奴だ、このくらいの重石おもしがないと、散歩中に異次元へ飛ばされるだろうが!!」


結局、久我がパニックのあまり「おしゃぶり」を自分でも試そう(感触確認)としたところで、サヤカの二度目のつわりが炸裂。店内の全商品が「完全除霊済み・聖遺物」と化し、価格が暴騰するという珍事が発生した。


4. 帰路:幸せな(?)沈黙

両手に山のような「聖なるベビー用品」を抱えた久我と、スッキリした顔のサヤカ。


「……久我様。あんなに必死になってくださって、嬉しいですわ」


「……ああ。俺は記憶を失くした大馬鹿野郎だが、君とこの子を、絶対に飢えさせはしない」


「……(夢の中で交わっただけで、本当はしてないんですけどね……)」


サヤカは心の中で小さく舌を出したが、久我のあまりの「お父さんっぷり」に、もう真実を話すタイミングを完全に失っていた。


「……ねえ、久我様。帰ったら、また『お腹の触診』、してくださる?」


「……ああ、もちろんだ。今度は、もっと深く、魂の根源まで揉んでやるからな」


しかし、久我はふと立ち止まり、まだ空のままの袋を見つめる。


「……だが、サヤカさん。肝心なものをまだ選べていない。『哺乳瓶』だ」


「えっ、それはまた今度でいいのでは……?」


「いや、妥協は許されん。あの吸い口の形状、弾力、そして超能力ベビーの凄まじい吸引力に耐えうる耐久度……そしてサヤカさんのそれに限りなく近くないといけないからな。俺が納得する『究極の一本』を見つけるまで、俺の戦いは終わらないぞ」


久我の瞳には、かつてないほどの除霊の炎(と、親バカの情熱)が宿っていた。

後ろを歩くユウキは、買ったばかりの「一人用おつまみ」を口に運び、空を見上げた。


「……お幸せに。僕は、明日から『浄化ブレス』のせいで暇になった除霊の依頼を、どう埋めるか考えておきますから……」



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