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探偵は胸を揉む  作者: リチャード裕輝
探偵は胸を揉む:『霊感(パイ)コメトリー・オブ・ザ・デッド』

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『死神サイコメトリー:世界を救う右手』 エピローグ

エピローグ:大地の鼓動、地獄の出航

富士山頂、剣ヶ峰。二人の女の罵声と、上空の艦隊が放つ重低音が響き渡る中、久我はふと、熱を帯びた自分の右手のひらを見つめた。


(……ああ、そうか。ユウキくんの計略だったとか、地球の寿命だったとか、そんなことはもう、どうでもいいんだ)


久我は思い出した。あの日、あやなの胸に触れた時に感じた、あの爆発的な生への執着。それは確かに彼女個人のものであり、同時に、彼女がその足で踏みしめている「地球(大地)」そのものの震えでもあったのだ。

俺たちは皆、この星に足をつけ、そのリズムに合わせて呼吸している。星が滅びるなら俺たちも滅びる。星が泣けば、魂もまた共鳴して震える。

地球の余命も、彼女の寿命も、俺の命も……結局のところ、分かちがたく結ばれた同じ一つの鼓動だったんだ。

久我は顔を上げ、修羅場の中心で、聖者のような静かな微笑みを浮かべて言い放った。


「ユウキくん……。地球の寿命だったから何だっていうんだ。俺にとっては、目の前の彼女を助けることと、この世界を守ることは、最初から何一つ変わらない、同じことだったんだよ」


その声には、全人類の死を右手に引き受けた者だけが持つ、圧倒的な説得力が宿っていた。一瞬、あやなの瞳に涙が浮かび、エリスもまた「生の真理」に触れたかのように言葉を失った。

……しかし、そんな神聖な沈黙を、ユウキの無慈悲な拍手が切り裂いた。


ユウキ:「素晴らしい! さすが久我さん、見事な悟りです。地球規模の愛で、二人の女性の修羅場もすべて背負う覚悟というわけですね。……では、その『責任』、しっかり取ってもらいましょうか」


直後、エリスの艦隊から放たれた転送光線が、久我を、そしてなぜか「逃がさないわよ!」と久我の腰にしがみついたあやなを包み込んだ。


「……え? あやな!? なんで君まで!? ちょっと待て、エリス! 乗せるのは俺一人でいいだろ!?」


エリス:「不許可。……地球代表のオブザーバーとして、彼女の同行も承認済み。……三角関係の調律も、あなたの『責任』」


「はあああああ!?!?!?!?」


足元から景色が消え、久我の体は銀河艦隊の旗艦へと吸い上げられていく。眼下には、小さくなっていく富士山頂で、実に清々しく手を振るユウキの姿があった。


ユウキ:「久我さん、お幸せに! 宇宙の密室で、地球代表と銀河代表の二人から同時に『調律』されるなんて、救世主にしか許されない最高の栄誉ですよ! 後のことは僕とセバスチャンに任せて、じっくり愛を深めてきてください!」


ユウキの完璧な見送りを最後に、ハッチが重々しく閉じる。


あやな(艦内の床で立ち上がり、腕まくり):「……さあ久我さん。宇宙は広いけど、この船の中に逃げ場はないわよ? 私に心中を迫った情熱、じーっくり思い出させてあげるわ」


エリス(無表情に久我の右手をホールド):「第一課程、銀河式マッサージによる責任の履行を開始。……抵抗は無意味。久我、覚悟しなさい」

逃げ場のない鉄の箱の中、艦内に響き渡るのは、全人類を救ったはずの男の、あまりにも情けない絶叫だった。


久我(号泣):「ちくしょう!! 悟りを開いても、現実は一ミリも調律できねえのかよ!! 誰か助けてくれえええええ!!」

(完)


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