『一億円の指(ゴッドハンド):最終章 神の指が造る「究極の利権構造(永久機関)』
『一億円の指:最終章 神の指が造る「究極の利権構造(永久機関)』
官邸の狂騒から少し離れた地下。そこにはユウキが新たに設立した『株式会社ゴッドハンド・セキュリティ・ホールディングス』の本部があった。
ユウキは時価数百万のワインを転がしながら、ホログラムディスプレイに映し出される「完璧な収益モデル」を眺めていた。かつて投じた一億円は、今や国家の血税と世界の欲望を吸い上げる巨大な心臓部へと化けている。
1. 「救世主」の機密費という名の直接送金
久我奏太は今や「国家安全保障の要」であり、政府からは年間数千億円の「国家機密費」が支払われている。しかし、官邸に幽閉され、指を酷使されるだけの久我に金を使う暇などない。
「久我の福利厚生および精神管理」という名目で、機密費の99%は合法的にユウキの会社へ外注費として流れ込む。久我の指が動くたび、国庫からユウキの口座へ直接、黄金の滴が滴り落ちる仕組みだ。
2. 「ゴジラ発電」による独占的エネルギー利権
久我の指で「フリーズ(賢者タイム)」状態になったゴジラは、今や世界最大のクリーンエネルギー源。ユウキはこの供給ルートを掌握し、日本政府に時価で売り付けている。
「一億円の投資で、国家のインフラそのものを握る。安い買い物でしたね」
3. 世界各国の要人を「指」で懐柔する外交ビジネス
ゴジラを鎮めた久我のブランディングは完璧。今や世界中の大統領や王族が、久我の指による「魂の浄化」を求めて列をなしている。その予約窓口と仲介手数料はすべてユウキが管理し、一回の施術料で小国の国家予算並みの外貨が流れ込む。
4. 「阿修羅ローション」の独占販売
阿修羅先生が持ち帰った神の薬を化学分析し、希釈したものを「超高級アンチエイジング・コスメ」として一般販売。女性たちの欲望を燃料に、市場を独占した。
エピローグ:投資の果て
ユウキはワインを飲み干し、窓の外に広がる、ゴジラのエネルギーで輝く不夜城・東京を見下ろした。
ふと、一ヶ月前のあの日の自分の言葉を思い出す。
修行前、何者でもなかった久我にバカラグラスを向けながら放った、あの冷徹な予言を。
『いいですか、久我さん。これは単なるマッサージの練習ではありません。僕の人生、僕のプライド、そして一億円という巨額の先行投資を賭けた、国家転覆級のビジネスなんです』
あの時、久我はそれを誇大妄想だと思っただろう。
だが、現実はどうだ。
国家試験の合否すら「変数」の一つに過ぎなかった。
合格すれば表の権威として、不合格なら裏の救世主として。
総理が霊に取り憑かれやすい娘のために擦り寄ってくることも、ゴジラという巨大な「孤独」が爆誕し、既存の火力が通用しないことも、すべてはユウキが久我という「唯一無二のインターフェース」を導入するための、完璧な市場環境(舞台装置)でしかなかったのだ。
黒沢官房長官が裏で糸を引いていた「ゴジラ覚醒計画」も、ユウキは当初からすべて把握していた。あえて泳がせ、ゴジラを導入させ、それを久我に解決させることで、ユウキは「神崎内閣」の支持率を不可能な領域まで押し上げたのだ。
その狙いは単純。
神崎を総理の座に「キープ」し続けること。
支持率120%という黄金の鎖で神崎を椅子に縛り付け、自分のコントロール下にある「傀儡の王国」を維持するため。
「……有言実行ですよ、久我さん。変態の力でも、磨き方次第で国家を救い、そして国家を呑み込む『聖技』になる。僕の言った通りになったでしょう?」
モニターの端には、支持率120%という虚飾の影で、コンビニのイートインコーナーにて一本のファミチキを分け合う神崎総理と黒沢の惨めな姿が映っている。
「久我さんはシズコ様やリンさんに囲まれて『公務』に励み、僕はその横で、彼のために計上された機密費で世界を動かす。……完璧な循環だ」
ユウキがタブレットを確認すると、南の島で札束のベッドに寝そべる阿修羅先生から写真が届いていた。
『ユウキ、おかわりが必要なら言いなさい。次は月でも揉ませる?』
ユウキはワインを飲み干し、静かに呟いた。
「いいえ、先生。今はこれで十分です。……久我さんの指一本、そして国民の税金。それさえあれば、世界は僕の掌の上にあるんですから」
「……これで、誰も不幸にならない」
官邸の奥底から聞こえる、久我の「もう勘弁してくれぇぇぇ!」という絶叫。
それはユウキにとって、投資が120%どころではなく、最高の利回りで回収されていることを告げる、甘美なBGMであった。
『一億円の指』――完




