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泥天使のドリャック!!!!!

ケダマッチョがテクニカルシティで暴れまわっていた同時刻。


不在だったメンバー…骸骨男のテリー、荒くれたナイフ使いアンドロイド、ラオン、れなの妹、れみ。


舞台はジャングル。テクニカルシティから遥か離れた場所だが、ワンダーズは全員飛行ができる。移動するだけならどんな長距離でもそこまで負担になる事は少ない。そう、移動だけなら…。


今回受け付けた依頼は、ジャングルで怪しいモンスターが居座っている、というもの。


つい最近雨が降ったのか、湿気が立ち込め、木々からは時々水滴が垂れ、地面には水溜りが混在している。こんなジメジメとした場所に居座るとは、相当な物好きと見える。

「うわ、また泥踏んじゃった!早く帰りたいよ…」

子供らしい、可愛らしいピンクのスニーカーに泥をつけてしまい、落ち込むれみ。

ラオンはナイフを無意味に振り回し、何やら苛立っている。どうやら今日も、パチンコでボロ負けしたようだ。

そしてテリーは…。

「はあ…妹がいないと、俺、もうダメだ…」

ドクロがいないだけで、テンションがあまりにも低い。普段から妹を愛しすぎている分、彼女がいないといつもこんな調子なのだ。

色々な意味で、長居は不要…早いところモンスターを見つけて調査をするべきだった。



時々、木々の隙間から見える遠くの景色に何人かの人影が見える。

「こんな所に人間?何してるんだろう」

なるべく見つからないように木陰に身を潜めつつ監視するれみだが、ラオンがその肩に手を置く。

「面倒そうだから放っとこうぜ」

今回の目的はあくまでモンスター。関係ない人間にわざわざ干渉する事はない。



しばらく、何もない時間と共にジャングルを突き進んだ。会話もなく、障害物はスムーズに乗り越え、何事もなく先へと進む。その静寂の時間は、えらく不気味なものだった。



そして、辿り着いたジャングル奥地。

水滴が降り注ぎ、水溜りが特に多い広場に到着した。

「…何もいねえな」

ラオンが辺りを見渡すが、何も変わったものは見当たらない。薙ぎ倒されたような朽ちた木々が多く、長い事誰も来ていないように見える。

れみはラオンの横に出て、拳を構える。

「こんな場所だからこそモンスターのアジトになってるのかも。気を付けて!」

後から続いたテリーは背中を丸めたまま、右腕を刃に変形させて戦闘姿勢をとる。まだ虚ろな様子だが、ドクロの存在はそこまで大きいのか。



三人が身構えていると…。

一際湿った土が盛り上がり始めた。

「!?」

その土から一斉に離れる三人。土は少しずつ崩れていき…中から何かが飛び出してきた。

「…っはぁぁぁ〜…やっっと誰か来た〜…」

現れたのは…全身が泥で構成された天使のようなモンスターだった。

やたら苦しそうに息をあげており、地面に手をつき、地中に埋まった身体を引きずり出すように現れる。ゾンビのような登場の仕方に、れみが軽く身を震わせている…。

「私は泥天使、ドリャック…!この辺が湿気があって力を出しやすいと聞いて待機していたけど…地中に待機というのもなかなか息苦しいもんねっ!!」·

何やら苛立ってる様子。それにしても、手足も羽衣も羽も全て泥でできている。何とも珍妙な天使だった。

しばらく黙っていた三人だが、ここでれみが人さし指を突き立てた。

「…さてはお前、闇姫の手下だな!」「」

「…当たり!」

何故これで闇姫軍だと分かったのか、ラオンもテリーも丸い目でれみを見つめてる。

お構い無しで、ドリャックは唐突に戦闘を開始した!

手先に泥を集め、槍を生成する。羽ばたく事で上昇し、れみを頭上から串刺しにしようと襲い来る!

それを見たテリー、骨の足に魔力を集めて瞬時に飛び出し、刃の腕を構えて槍を受け止める。泥、骨、二つの異形の刃が交差した。

衝撃でドリャックは強制的に距離を離されるが、彼女は槍を投げ捨てる。槍はジャングルの木々よりも遥か上に飛んでいき、姿を消してしまった。

「中々の刃ね。でも…泥の力を侮るな!」

今度は両手に泥団子を生成し、投げつけてくる。三人にぶつかってくる泥団子、見かけに合わない硬さで打撃のような痛みを生じさせる。

「いってえ…!やりやがったな!!」

元から不機嫌だったラオンがますます心を燃やす。ナイフで泥団子を切り裂くなり、彼女は地面の泥を掬い上げ、空中のドリャックに投げつける!

ドリャックは泥の体の癖して泥団子が効くらしい。ぶつかるなり、明らかに動揺した様子を見せた。

れみとテリーも続いて泥団子を投げつける。雪合戦からぬ泥合戦だ。

一時、ドリャックが劣勢になったかに見えたが…。


「…くくく、良い気になってるみたいだけど甘い!砂糖水で湿らせた公園の砂場よりも甘いわ!」

ドリャックのその一言と共に…突然、泥の雨が降り注いだ!

三人の顔や腕に泥がへばりつき、嫌な冷気が張り付く。

「な、なんだこれは!」

テリーが動揺の声をあげつつも、気づいていた。これは、先程ドリャックが投げ捨てた槍だ。あの後、泥は空中で分解され、泥の雨へと変わったのだ。

三人が止まっている隙に、ドリャックは新たに槍を生成する…。


…が、思わぬ逆転が起きた。

「ちっくしょー!!!私の髪を!服を!美しい顔を!汚しやがってえええ!!!そのクソドロがぁー!!」

ラオンの怒りが頂点に達し叫び声をあげる。アンドロイド特有のエネルギーが怒りで上昇し、体温が高まり、熱を放つ。


…すると。

「ちょ、お、怒るな…、体が…乾燥して…」

ドリャックの肌の色が、黄土色になってきたかと思うと、動きが遅くしまう。


泥だからか、熱に弱いらしい。

あっさり行動不能に陥ったドリャック。これならば怖くない。

ラオンが飛び出し、ナイフを下段に構え…。

「後でクリーニング代、きっちり請求させてもらうぜ!!」

紫の閃光が、地上から天へと放たれた!

ドリャックの身に痺れる痛みが走り、真後ろへと倒れ込む。


「ひぎゃあ……」

ゆっくりとした鈍痛。戦闘不能に陥ったドリャックの目に、もう闘志はなかった。

「しばらく待てば動けるようになる。そしたらここの東にある川に行って頭冷やすんだな、ボケ」

ひとまず、ドリャックを撃退する事に成功した三人。こんな所に長居は不要だと、背を向けて入り口方面へと立ち去っていく…。



残されたドリャックは、しばらくすると痛みが引いてきた事に気付く。よろよろと立ち上がり、固まった体を重く動かしながら川へと向かっていく。


途中、彼女の泥の羽衣の下から振動が走る。


中から取り出した物は…一台の小型通信機。何者かから、通信が来ていた。

「…こちらドリャック。なんかワンダーズが来て、やられちゃったわ」

あの三人の登場が想定外であったような言葉だった。そして、通信機の向こう側から聞こえるのは…。


「こちらケダマッチョ。そうか。俺はテクニカルシティでワンダーズを陽動していたんだが…現れたのはれな、F、粉砕男だけだった。他のメンバーがそっちに向かっちまってたんだな」

ケダマッチョ。同時刻、テクニカルシティで暴れ回った彼に課せられていた使命は、ワンダーズの陽動だった。その陽動の本来の目的は、彼らをドリャックのもとへ寄せ付けない為。結果としては三人のワンダーズが現れてしまった以上、作戦は失敗だろう。

そして、そのドリャックの目的は…。


「でも安心して。あの三人が来る前に、怪しい人間たちを見つけたわ。やつらは恐らく、闇姫様が言っていた人間…」

「…人間の癖して悪を名乗るゴミクズどもだな」


真の目的。

それは、このジャングルに密かに根付く、怪しげな人間達だった。

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