毛むくじゃらとの戦い!ケダマッチョ
Fとクラナ、兄妹はワンダーズの事務所に案内され、ようやく落ち着いた場所でれなとその仲間達と落ち合った。
ソファーに腰掛ける二人の前に、葵と粉砕男が膝に手を置き、かしこまった様子で接し…そして、すぐに崩す。
F、クラナとは長いこと付き合ってる仲間、かしこまる必要などない。葵が軽く聞く。
「F、最近美味しかった店とかあったら教えて」
「良いクレープ屋を見つけた」
二人のやりとりに、粉砕男が入り込む。
「Fは本当にクレープ好きだな」
そして、そこにクラナ。
「そう!アタシもクレープ大好き!お兄ちゃんはブドウで、アタシはイチゴ!!」
「アタシはシシャモが好きだぁ!!」
れなが身を乗り出す…。
全く会話の順序を気にしない。それほどに仲が良い。
尚、事務所にはいつも必ずワンダーズ全員が揃っている訳では無い。割と自由な彼らは、事務所にいない時はそれぞれの趣味を楽しんでいる。
今日ここにいるワンダーズは、れな、葵、粉砕男の三人のみ。
さて、F、クラナ。この二人が何者なのかというと…。
大悪党、リューガの子だった。
リューガ…それは、れな達もかつて戦いを繰り広げた男。
異様なまでに冷酷で、残酷で、邪悪極まりない…単に人を殺しまくるような人物ではなく、いかに苦しめ、爪痕を残せるかをゲーム感覚で楽しむ。
その上彼は強かった。その力を己の為だけに振るい、最後はワンダーズの死闘の末にようやく命を落とした。
存在そのものが災害のような…邪悪だった。
そんな彼が己の力を使って作り上げたのが、F、クラナ。
ご覧の通り、二人は邪悪ではない。
リューガほど邪悪さが染み込んでいない頃に、偶然にもワンダーズと出会い、仲を深めて今の性格に至った。
冷たくも責任感あるFは、父の罪滅ぼしもかねて世界に蔓延る悪と戦っている。純粋なクラナはそれに続く。
リューガの子という特異な存在ゆえに、一時はテクニカルシティの研究所で研究されていた時期もあったが、二人は文句の一つも言わない。自分達がどのような存在なのか、理解しているから。
彼らが戦う悪。それは実に様々だ。
モンスター、単なる犯罪者、そして…。
「大変よ!!」
玄関から、鋭い声が事務所に飛び込んできた。
見ると…ドクロが慌ただしく駆け込んできていた。
「闇姫軍のモンスターが現れたわ!街で暴れてる!」
そう、あの闇姫の配下…闇姫軍。
街では、人々が慌ただしく逃走していた。
歩道では何故だか人々がくしゃみを繰り返しながら走っている。
その原因は、今まさに道路の中央で暴れてるモンスターにある。
「ふおっほーーい!この街を毛だらけにしてやるどぉー、コロコロ等怖くないどぉー」
真っ白な動物のような毛が屈強な肉体を模したような形をした、毛の集合体モンスターが両腕を振り上げていた。尚、その顔は犬のように可愛らしく、どこかアンバランス。
このモンスター、ケダマッチョ。その体から放たれる白い毛は生物の鼻腔を刺激し、くしゃみを誘発する。
ケダマッチョの身体は毛の集合体とは思えない程に整った形をしており、拳を叩き込めば建物がひしゃげる。
我が物面で道路を進むケダマッチョだが、その前方から何かが近づいてくる。
「やめろー!この毛め!」
れなが手を激しく振りながら走ってきた。彼女の左右にはF、粉砕男。
葵とクラナは住民の避難に向かっている。ケダマッチョと闘うのはれなとF、粉砕男…なのだが。
れなは二人の前に出て、ケダマッチョを見上げる。
「迷惑な奴め。お前なんてアタシ一人で倒してやる!」
「ふぉっほーーい!言いやがったな?闇姫軍雑魚キャラ軍団代表、ケダマッチョとしてお前らをぶっ飛ばす!」
何故か、れなとケダマッチョはタイマンを始めてしまった。れなはこう見えて戦いが大好き。タイマンともなると、機械の血が騒ぐのだ。
ケダマッチョの拳が地面に叩き込まれ、毛が飛び交う。れなはそれをかわし、ケダマッチョの巨体の周辺を飛び始めた。
粉砕男とFは顔を見合わせる。
「…まあ、れななら大丈夫だろ。粉砕男、俺達は建物を直すか」
「そうだな」
二人は瓦礫を運び始める。戦闘が起こってるとは思えない程、能天気な速度で。
ケダマッチョは拳を振るい、その度に毛が飛び、視界を覆う。アンドロイドであるれなの鼻腔には通用せず、この視界妨害もそこまで厄介ではない。
れなは拳を振るって風を発生させ、毛を吹き飛ばしていく。ケダマッチョの胸に蹴りを仕掛け、彼をよろめかせる。
「ふぉっほーーい!!俺を怒らせたなこのガキ!こうなれば俺の得意技を見せてやる!」
ケダマッチョは後ろに飛び、何やら全身の毛を逆立て始めた。
毛は少しずつ固まり、硬度が上がり…。
その状態で発射されてきた!
無数に飛んでくる棘。れなはそれらを見てかわす事もなく、棘を横や上から殴りつけて打ち落としていく。
まっすぐな軌道の棘達は別方向からの衝撃で落ちていく。
十五本程落とすと、ケダマッチョは攻撃をやめてしまった。
「お、俺の技が…効かない!?そ、そんな馬鹿な!」
この頃には毛を放ちすぎた為か、ケダマッチョの身体は細くなっていた。
れなは拳を構え、ニヤリと笑う。
「終わりだ、毛野郎!」
空中を滑るように、彼女は一直線に突撃する。周囲に拡散していた毛が宙に舞い上がり、建物の表面へと飛散していく。
ケダマッチョは慌てて両手を構えて防御をとるが、その細い腕では防げない!
風圧がケダマッチョを縛り付け、拳が顔面に叩きつけられる!
「ぐはあっ!!」
全身の毛が一気に吹き飛び、ケダマッチョの巨体が途端に小さくなる。
地面に叩きつけられ、れな達と同じくらいの身長に縮み、目を回す。
「おー、終わったか」
粉砕男が倒れたケダマッチョを見た。
「も、申し訳ありません闇姫様…街を毛と鼻水まみれにする計画…失敗…です」
そう言い残し、ケダマッチョは気を失った。その周囲に飛散した毛はまるで花束のよう…。
人間達に加え、闇姫軍もこのような迷惑行為に出る。
何とも油断ならない日常。それでもワンダーズは戦い続ける…。




