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争いは続く

森の近くにある小さな村。

小さくも、人口はかなりのもの。近場に広大な都市がいくつか存在しているが、モンスターの襲撃、高すぎる市税への不満、借金から逃亡…様々な理由で、この小さく目立たない村に多くの人々が集っている。

今回の騒動のように近頃はトラブルが多く、一部の村人の家は未完成のまま。今尚、大地の上、太陽に焼かれながら眠りにつこうとする者の姿もちらほら見られる。


この日、村人達は村の入り口…紅葉が乱れる門前に密集していた。

先程襲撃した原始人達が復讐に来る事を恐れていたのだろう。銃や槍を手に、全方位に警戒を張り巡らせている。



「…!」

一人が息を呑み、全員が目を吊り上げる。


森の方角。そこからゆっくりと歩いて来る、二つの人影。

一人は長く、黄色いツインテールヘアーの少女、もう一人は黒い髪、青いコートに冷たい目の青年。

原始人ではない…それでも人間達の視線は、この二人にのみ集中していた。


二人は彼らの前で立ち止まる。

まず先に出たのは…れなだ。

「皆…原始人達と今度焼肉パーティーでもして親交を深めない?」

…人間達の目は、変わらない。咳払いと同時にFが歩み出る。

「…まず俺達は、あんたらと喧嘩しに来た訳じゃない。原始人達をこれ以上怯えさせるのはやめろと言いに来たんだ」

それを聞き、一人の男が銃を向ける。黒い銃口がFの顔を狙うが、その手は震えてる。Fには分かる。こいつは素人だと。

そのまま続けるF。

「たったそれだけなんだぞ。原始人達が怯えてるから攻撃を止める。原始人だけじゃなく、お前らの為にもなるだろ」

「部外者が安々と出るんじゃねえ、クソ野郎が!!」

ついに一人が発砲した。Fは軽く首を傾けてかわすが、弾丸はその後ろのれなの額に命中。

「うおおおっ!?!?いってええええ!!」

額を抑えて叫び、歯を食い縛って怒りをあらわにするれな。

人間達はこの瞬間まで二人を人間と思っていたらしく、撃たれても平然としているれなを見て後退り、震える。

…いや、この震えはれなに怯えてるのではない。たった今、弾をはじめて何かに当てたのだろう。その実感に恐怖しているのだ。

今でこそ恐怖してるが、これに慣れてしまったら…。

「…おい。落ち着け」

「うるせえ!!ぶっ殺してやるクズのクソが!」

Fの制止に構わず、彼らは一気になだれ込んできた。Fよりも背の高い人々が一気に突っ込んでくるが、当のFはびくともしない。

全力で押してくる彼らに、Fは左手を軽く突き出す。

たった一本の腕の力で、何人もの人間が倒れ込んだ。先頭の男がまた銃を向ける。

「て、テメェ…やる気ならこっちも…」

いよいよ危うい雰囲気となってきた。

このあたりでれなとFは両手を構えようとしたが…人間より遥かに強い力を持つ二人、下手に手を出せない。

それを良い事に、人間達は一斉に二人を殴りつけ始める。所詮人間の素人の手、こんなものは大した事はないが…。



「ぐがあああっ!!」

それ以上の問題が発生した。

森の方角から咆哮が響いたのだ。


…全身を草にまみれさせた茶色い人型モンスター、ナガデンが両腕を振り回しながらこちらに直進してきていた!

ナガデンだけではない。後ろから、何人もの原始人達が武器を手にナガデンに続いていた!

れなは目を見開き、両手を広がる。

「待って!!君達まで敵意を向けてどーすんの!そんなんじゃ争いは終わらな…」

れなのツインテールが大きく揺れる。彼女の横を、原始人達は一気にすり抜けていった。

彼らは人間達と正面衝突を始めてしまったのだ。結局暴力は何かを解決する際に最適だ。

互いに殴り合い、蹴りあい、地面に叩きつけ合う。人間は原始人を押し倒して顔面を執拗に殴りつけ、原始人は人間を持ち上げ、近くの建物に叩きつけては踏みつける…。

「…やめろ!!」

ここでれなが我慢ならなかった。彼女は拳を突き出して空を突く。

すると…その拳圧で暴風が発生した。人間も原始人も等しく吹き飛ばされ、倒れて動きが止まる。

荒い方法ではあるが、とにかく一時的に止める事はできた。Fは頷き、彼女に続く。

彼は右腕を捲り、その下からある物を見せつけた。


それは…青い入れ墨。狼を模したような異様な紋章が現れ、青く発光し始めた。

れなはそれを見て口角を上げる。これはFに備わった強力な能力…導狼の(どうろうのあかし)という力だった。

その光からは不思議な魔力が放たれ、周囲の人間や原始人の動きを止め始める。

ようやく事態は収まりつつある…。

「れな、原始人を森に返すぞ。もうまともに会話できねえだろ、こいつら」

二人が次の行動に移ろうとすると…。




突如、乾いた音が響く。

「っ!?」

耳をまっすぐ突き、心臓を震わせるような音。それは…紛れもなく発砲音だった。


…一人の人間が、近くの建物の裏に隠れていたのだ。そして彼は、片手に持った銃で…一人の原始人に発砲した。

撃たれた原始人は胸から血を流し…ゆっくりと倒れこんだ。

「ぁあ…」

仲間の原始人達はとうとう意志薄弱となった。あの勢いはどこへいったのか、肩を落とし始める。


「っくしょう!!」

れなが声を荒げ、撃たれた原始人に駆け寄る。Fも導狼の証の光を解き、近づく。



胸を撃たれており、意識を失いつつあるようだが…。

「心臓には当たってねえ…まだ何とかなる!」

Fは再び導狼の証を光らせた。原始人の胸の傷が少しずつ塞がり、身体にこびりついた血も消えていく。

尚この時、人間達はいつの間にか逃げていた。撃った者も当然その場にはいない。


…三十秒ほどで何とか治癒は成功した。原始人はムクリと起き上がる。


…一応の終結を迎えた。


それから、原始人達はようやくこの森を移動する事となった。これ以上ここにいれば自分達の命が危ういと本当に理解したらしい。


この原始人達と人間が共存する日は、遠い未来の話となるだろう。

そんな日があるのかさえ、分からないが…。






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