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悪魔の情報提供

以前、ユリカが謎の男にさらわれた不可解な事件。れなは事務所に帰るなり、慌ててそれを仲間達に説明した。

あの場所で起きた不可解なできごとを全て鮮明に伝えるのは難しかった。出来事そのものが、鮮明ではなかったのだから。


それでも不思議な出来事には一応慣れている。ワンダーズ一同は腕を組み、ラオンやドクロは足をも組んでいた。


何より気になるのは、やはりその男。

邪悪な心と外見は比例しない。堕天使がいるのだから、それは間違いないはず。

それにしても、あれはどう見てもただの人間だった…本当にどこにでもいるような、目を引くような箇所は何も見られない人間。

モンスターではなかった。


ただの人間が何故そんな力を?

首を傾け、考え続ける…。



「分からねえか、バカども」

突然、辛辣な声が場を突いた。

事務所の玄関から、それは聞こえてきた。その声…ワンダーズは聞き覚えがある。

視線を向けると…。



そこには、黒いツインテールヘアーの女が立っていた。

右目は翼を模した眼帯で隠されており、左目は鋭く吊り上がり、赤く染まってる。紫の宝石のペンダントを首から提げており、シンプルながらもどこか底知れぬ何かを感じさせる…静かな威圧感があった。

「…闇姫!!!」

怒鳴るように、れなが言った。


彼女は闇姫。ワンダーズの前にここまで堂々と現れただけあってやはり人間ではない。

彼女は…人の世で言う悪魔と呼ばれる存在。日々悪事を働き、闇姫軍という軍をも率いて悪の種を撒いていく存在。

ワンダーズが最も長く敵対してきた相手と言っても過言ではない。彼女はこうして突然現れ、いつもなら何かしら刺客を送り込んでくるのだ。


ーいつもなら。

「闇姫…まず、土足で入るんじゃねえ!!」

れなが顔を突き出して闇姫を睨む。見れば闇姫は黒いハイヒールを履いたまま、床を踏みつけてる。

そして、れなの忠告を無視するどころか…。


「いでっ!?!?」

れなの足を踏みつけた。


これが闇姫の在り方…。いつも通りの様子だ。

闇姫はれなを左手で払い除けると、そのままワンダーズが囲むテーブルへと近づく。


「アホれなが見たというその男、そいつは紛れもなくただの人間だ。ただし、何者かに力を与えられ、それを一時的に使いこなしていただけだ」

一瞬で答えを出す闇姫。

ただ力を与えられただけの人間。そいつがユリカをどこかへ連れ去らったのだ。

葵はテーブルに手を置き、立ち上がる。闇姫を睨みつつも、彼女からできるだけ情報を引き出そうと話しかける。

「そんなに早く情報を得てるなんて…あんたの軍の科学力で探ったのね」

「街に監視ドローンを何台か放った。そいつらがただの人間から発せられてる怪しげな魔力を探知した。ただそれだけだ」

闇姫はポケットに手を突っ込み、変わらず無愛想に続けた。

「テメエら、言っておくがあんなやつらを悪のあるべき形だと思うなよ」

唐突に、哲学的とも言える出だしから闇姫の言葉は始まった。

「悪とはもっと誇り高く、孤高なもの。情弱で腰抜けな人間どもが語っていいもんじゃねえ」

彼女は悪魔。それゆえに彼女にとって、悪という言葉は軽い気持ちで語られるべきものではない。彼女なりに悪には美学というものが存在しているのだ。


…そんな空気も読めず、闇姫の足を掴む者がいた。

先程はっ倒されたれなだった。

「…おやぁー?天下の闇姫様が人間ごときにマウントなんて、随分堕ちたもんですなー?」

もはやお察しのものと思われるが、れなと闇姫は昔から特にいがみ合ってきた関係…とんでもなく、尋常ではない仲の悪さ。犬猿の仲とすら言えない程であり、ただ目が合っただけで殴り合いを始める程。

そんな彼女にあんな嫌味を言われれば、闇姫の拳が黙ってない。


…鈍い轟音と同時に、闇姫はれなにげんこつを食らわした。


仲間達が目を丸くして見守る中、事務所の床に大穴が空いた。


深すぎて、どこまで続いているのか分からない穴が瞬時に形成されたのだ。

れなは…その奥底へと瞬時に消えていった。


闇姫は無表情のまま、目だけをこちらに向ける。

「…情報はくれてやる。今、このテクニカルシティをはじめとした様々な場所で人間どもが怪しい動きを見せている。だが忘れるな。我が闇姫軍の刺客達も、クソ人間どもの暮らしを脅かしている事を」

全員の表情がこわばるのを見て、闇姫は、ふん、と息を吐く。

背を向け、そのまま立ち去り始める。その背は尚も余裕に溢れ、底知れぬ威圧、そしてプライドを感じさせた。



「…あー、穴空けられたから修理費出さんと」

ドクロがため息をつく。

これが闇姫…隙を見せれば、必ずこうして悪さをしていく女だった。

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