タイトル未定2026/01/09 18:14
宇宙はこれから知るだろう。
いや、それ以上の、上位たる存在が知る事になる。
思想に囚われぬ戦いを。
不思議を。
「…」
Fは、全てを覚悟していた。
妹が殺され、戦力がついに自分一人となった今。
目の前の相手の攻撃を、受け入れるしかない。
涙が止まらない。
数々の戦いを乗り越えてきた。
その戦いの末路が、父親が下す理不尽な死…。
「おわりだ」
虹色のベールの向こうのリューガの顔は、美しかった。
悪意など感じさせない。
悪意以上の何かが、そこにある。
そして。
意識が一瞬奪われたような、時間をすっ飛ばされたような感覚が、Fをどこかへ飛ばす。
「…!?」
Fの意識が、目の前の光景を目に映し出し、脳へと送る。
リューガは、いつの間にか、Fから興味を無くしていた。
辺りの空間は遊園地ではない。
変えられたはずの、宇宙空間に戻っていた。
リューガの目に前に、誰かがいる。
無重力を忘れさせる程、綺麗な佇まいで。
黄色を主体としているが、桃色のグラデーションの、鋭く跳ねたツインテール。
髑髏を模した髪飾り、黒と黄色の服。
腰からは、大きなナイフと一本の骨。
右腕には、猟銃のような武器を装備している。
背中からは、羽が生えていた。だが生物的な羽ではない。ビットのような突起が生え、緑の光を展開している…機械的な羽。
その瞳は、虹色の輝きを見せている。
リューガの虹色とは異なり…何か、柔らかいものを感じさせる。
Fは、その人物を知っていた。
「…れな…か?」
間違いなかった。
あの瞳、オーラ、何度も感じた、仲間の力。
誰あろう、れなだった。
死んだはずの…破壊されたはずの彼女が、今、アンドロイドとは思えぬ変身を遂げて、目の前にいる。
これもリューガが作った悪質な幻影なのかと、Fは疑った。
だが、違う。
リューガの顔は…心底驚いているようだった。
「…んでだ?」
目を見開き、その美しく長い髪を乱雑に掻く。
はじめて、完全に理解が及ばない出来事に遭遇したようだった。
そんな彼に、更なる驚愕が覆いかぶさる。
「なっ…テメェまで」
…れなの横から、何かが現れる。
黒い霧を纏いながら現れたそれは…異形だった。
人間の形をしつつも、背中からは何か巨大な腕のようなものが生えている。
その腕は…紫と黒色、暗い色に染まり、青い結晶が張り付いている。所々に緑のラインが張り巡らされている。本人の体とは別に用意された物体のようだった。
全身に黒い霧を常に纏い、左目は赤く、そして…右目は緑色に輝いている。
その姿を見せつけるなり、彼女は…突然消える。
「闇姫っ…闇を極めたのか…!?」
Fは、思わず目眩も忘れていた。
どうやら彼女…闇姫は、何かしらの術で闇を極めたらしい。結果、彼女を認識する為の光すら闇に呑まれ、その姿は見えなくなるのだ。
れなとリューガだけが、向かい合っているように見えた。
れなは…無言で両手を構える。
いつもなら何かしらの煽り文句をつけるリューガも、黙って構える。
れなの拳が振るわれる。
いつもの何ら変わらぬ仕草が、余計にれなである事を示しているのだが…。
あまりにあっさりと。
…宇宙が消し飛んだ。
「は?」
Fは、あたりを見渡す。
暗黒の宇宙が一瞬で消え、真っ白な空間が顔を出す。宇宙というハリボテを引き剥がされた、世界の本来の姿。
あらゆる星が、世界が、はじめから無かったかのように、消えた。
だが確かに世界はあった。その世界の産物達が、何よりもそれを証明してる。
リューガはその光景を見て驚く事もなく、ただただ屈辱に悶える表情を見せた。
「…やつらの力を借りたのか?そんな事、許されていいものじゃ…!」
リューガは瞬時にれなの前に飛び出し、拳を叩きつける。
れなは吹き飛ばされ、無の空間を飛び交う。
吹き飛ばされた先で、彼女は両足を無に突き立て、足先からまた宇宙を生成した。
無重力の波が襲う。
リューガのすぐ横から、闇姫が出現する。
彼女の動きもまた、今までの闇姫と変わり無い動きだ。華麗に、かつ力強く拳を突き出し、リューガの横頬を殴りつける。
血を吹きながら、リューガは反撃の蹴りを仕掛けようとした。
闇姫は背中の腕でもう一度殴りつけ、一瞬の反撃さえ許さない。
「…っ」
もうこの時点で察したのかもしれない。
究極の理不尽を前にした事を、悟ったのだ。
理不尽を与えていた彼が、今度は受ける側となったのだ。
…声が聞こえてくる。
「その二人は、絶対に負けない事になってます。なので、何をしても勝てませんよ」
男声と女声が混じりあった異様な声が、リューガの耳だけに響いた。
「そんな…そんな訳の分からねえ事が許されるか、クソが!!大体…都合が良すぎだろうが!!」
「ええ、都合が良いですね…」
声が止む。
リューガの頭部と足が、同時に吹き飛ばされる。
れな、闇姫…二人の蹴りが、全く同じタイミングで衝突したのだ。
時間が狂う。突如、今までの戦いが巻き戻され始める。
たった今破壊したリューガの首と足が、巻き戻しによって修復していく。
…が。
闇姫が、首を軽く捻ると…時間が巻き戻されている中で、また別の時間軸が始まった。
「もう戻れないぞ、クソれな」
「分かっとるわ、ボケ闇姫」
どんな上位となっても、二人のやりとりは変わらない。
リューガは、新たな時間軸で尚も抵抗する。
「クソッ…また、またかよ!!また負けんのか!?嫌だ、そんなのは…!!」
れなの拳が、リューガの腹を貫く。
闇姫の手刀が、リューガの手足を切り裂く。
そして、瞬時に再生する。
あまりに大きな存在がぶつかりあい、世界が世界でなくなろうとしていた。
三人は瞬時にミクロの存在となり、宇宙を飲み込み、そして飲み込まれ、またミクロへ、原子へ、世界を繋ぐ回線に戻ったかと思えば、運命が逆行。
時間の概念がないはずの場所で、三人はそれぞれの誕生を追体験した。
未来は、まだ作られていない。その未来さえ作らんと、生き急ぎ、そしてゆっくりと歩み渡り、また宇宙と調和する。
やがて空間は歪む。
歪みすら歪み、それすら歪み、そして一つの形に戻ったかと思うと、また歪む。
世を構成するあらゆる要素が誕生、滅び、原子に戻り、分子が錯乱し、肉体が耐えられず、分裂と消滅、可視化された消滅がまた分裂、宇宙が生まれ、そして滅び、無の中を彷徨い、無を理解し、そしてまた無に悩む。
最早概念すらない。なのに、彼らは殴り合い続けている。
何も見えず、何も聞こえないのに、全てを感じ、押し寄せる叡智に対応し、そして放置し、ある程度形を成せばそれをまた終わらせる。
それは、かつて人間が謳っていた、宇宙の創造だろうか、そして破壊だろうか。
いや、それよりも遥かにレベルが高く、そして原初的。簡単であり、誰でもできる事であり、そしてあまりに長い年月を有する。
百年、千年、百万年、千億年。
殴り合い続けた。
時間は忘れ去られ、別の概念が世界の動きを伝える。
色覚も失せ、光も失せ、闇も失せ、何もかもが新しく更新され。
またミクロに戻る。
原子が還り、孵り、帰り。
生き急ぎ、生き急ぎ、原初へ。
だが記憶は全て保持して。無限の器に記憶を積み重ねて。
何も忘れることなく。
何 も忘れることはなく。
記憶 保持。
に。
クロに、 され。
還元 による。 にも、 理 かへと謳われる。
ぶん) め 寄越しながら 更 にに
え 宇 うへ 。
。。。
あ ん
ち
か よ
。
へ よっ て。
不 とは だ。
けではない。
先 へと。
れ
だよ!!」
「ち




