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黒い影の乱入

青年は目覚めた。







そこは、広い空間だった。

白い壁、白い天井。

病院だろうか…?


「…ここ、どこだよ」



「気がついたか?」


青年…Fの顔を覗き込んできたのは一人の大男。

スキンヘッドに、筋肉質な体型。

何より強調すべきはその顔。

鬼のような、恐ろしいもの。

人間ではあるが、その目つき、その皺、そして硬質感すら感じさせる皮膚。

こんなものが突然視界に入ってきたのだ。Fは肩を震わせ、息を呑む。



…が、彼は、その顔をよく知っていた。


「…師匠か」







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


どうだ、F。

あの仮面クソ女の正体、分かったか。





ああ…。もう薄々気づいてた。





そうか。じゃあ、やつをどうすれば良いか、それもちゃんと理解してんだろうな?






ぶっ殺せ。






さもないと。







世界が終わるぞ。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「…っ!」

全身を貪る激痛に、意識を失いかけていたF。

なのに、今、その激痛によってはっきりと目覚めた。

下を見ると、瘴気に苦しむ仲間達。すぐ横には、愛する妹…クラナ。

「お兄ちゃ…んっ。も、もうダメ…痛いっ…」

涙を滲ませるクラナの口から、血が垂れる。



「…クソが!!!」

Fの右腕が、青く光る。

導狼の証だ。彼の最大の武器であるこの入れ墨が、彼に再び力を与えた。

その力は、今まで全く手が出せなかった縄を瞬時に引きちぎれるほど。彼の体の底から、深い何かが湧き出している。

「あっ!?な、何だと!?」

余裕をこいていた人間達もこれには後ずさる。

Fはクラナの縄に手をかけ、腕力一つで引きちぎり、直後、すぐ近くでうろたえていた女を突き飛ばし、彼女から瘴気バリアを制御する装置を奪い取る。

一瞬の事だった。今の今まで魔力を搾り取られていたとは思えない程のスピード、そして正確性。彼の目が、脳が、全神経が、何かに操られているかのようだった。

Fは装置をひっくり返し、裏面に隠されていた小型の青いボタンを押す。

この一連の流れもまた、迷いの動作一つなかった。

F自身すらも驚いていた。自分の身体ではないかのようだった。

「…お前ら!大丈夫か!」


ワンダーズは、膝を震わせながらも続々と立ち上がる。そのうち、れなはFに親指を立ててみせる。

「…感覚が戻ってきた!ありがとうF!」

瘴気バリアが再展開されたらしい。Fとクラナの身も徐々に軽くなっていき、鬱陶しい瘴気が離れていくのを感じる。


あのボタンさえ押されなければ、アゴンを助けられたかもしれない…。

そんな後悔が一瞬よぎるが、今はそんな場合ではなさそうだ。


『いくぞ!!』

仮面の女がいるが、それ以外は何の変哲もない人間ばかり。あの装置を奪った今、恐れるに足らず。

人間達は顔面蒼白。持参していたハンドガンを取り出し、一斉に発砲するが、素人の腕だった。弾は一発も当たる事もなく、容易くかわされていく。

そして、誰かが手を出すより前に…葵が、ポケットから取り出したハンドガンを、指だけで軽く回す。


バンッ、と、何かを叩くような音が辺りに響く。


人間達は次々に白目を剥き…倒れる。

腕や足。いずれも急所を避けた位置から出血しながら。

今の一瞬で、この大人数の人間を撃ち抜いたのだ。彼女の銃撃技術、そして改造銃ならではの神業だった。

全ての人間が倒れるより前に、葵はドクロとテリーに指示をした。

「二人とも!人間達を部屋の隅へ!!」

言われるなり、死神兄妹は人間達へ手を向け、念動力を放つ。

魔力の塊が複数の人間を持ち上げ、部屋の隅へと集めていく。

何故、このような行動に出たのかというと…。


…仮面の女が、突然動き始めた。

拳を振り上げ、人間達へと向かっていく。

「させるか!!!」

れなが前に出て、女の拳を手の平で受け止め、すかさず蹴りを打ち込む!


そう。この女が黙ってないと感じたからだ。

もうこれ以上の犠牲は出させない。ワンダーズの猛攻が始まった。

粉砕男がれなの横を通り抜け、拳を叩き込む!

「貴様、この期に及んでまだ無駄な殺戮に走る気か!!」

怯んだ女に、今度はれみが背後に回り込み、首元へ腕を通し、軽く締め上げる。

更にラオンがナイフを突き出し、女を連続で斬りつけながら前へ前へと押し出していく。

「大体、何だよその仮面は!!いい加減正体を見せやがれ!」

ある程度の斬撃が終わると、女を蹴り飛ばし、れみもまた背中を殴る。

一方的に打撃を受けた女は、足がふらついていた。

一同が道を開け、ドクロとテリーが手を構える。手の平からは紫の光線が瞬時に発射され、女に浴びせられる。

女は振袖で顔を覆うが、首が動き、正面から視線をそらしている。効いている…!

この女の力は未知数だが、僅かに感じる魔力の質に合わせて、光線の属性を制御、女の魔力に最も効く形で撃っているのだ。

光線は、特殊な材質となっているであろう施設の壁すらもヒビ割らせ…そして、破壊した。

外から、悪寒に溢れる冷気がなだれ込んでくる。瘴気バリアが無ければ、一巻の終わりだっただろう。


光線が消えた。

相当なエネルギーで全身を焼かれたであろう女だが、着物には傷一つついていない。

よろめきながらも、すぐに体勢を立て直す。

もはや驚かない。これくらいで倒せるならば、コゴエザリアの惨劇は起こらなかっただろう。


一同がより気を引き締めた時。


女は…全身を震わせ始めた。


魔力が高まり、地響きのような揺れが辺りを振動し始める…。

「気をつけろ。何か…仕掛けてくるぞ」

魔力に敏感なテリーの、深く、淀んだような恐れを抱いたその言葉。

恐れながらも、逃げる気はない。

今ここで、何としてもこの女を倒す…。

絶対的な力に、絶対的な闘志の矛で立ち向かう!




…その時!








先程の光線以上の轟音が、場に飛び込む。

ワンダーズの目の前に、突如なだれ込む瓦礫、そして僅かに見える黒い影。

それは女の横頬を蹴りつけ、彼女を壁に叩きつける。

崩壊による白煙が立ちこめる…。


倒れ込む女。

そして、彼女を睨む人影…。








現れたのは…。



「…お前は!」




…黒い髪をなびかせる、闇姫だった。











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