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死への先導

コゴエザリアの惨劇…血雪の戦いが終わった。

歴史上二度目となる血雪の戦い。繰り返されてはならぬ惨劇を、人は繰り返した。




「うぐっ…」

ビルに叩きつけられたまま、粉砕男は目を開く。

激しい目眩が襲いかかる。

だが、彼は自身の身以上に、仲間達を心配した。

「み、皆っ、大丈夫…かー!!」

苦痛に耐えながらも、はっきりと叫ぶ。





「大丈夫だぁー!!!」

れなの声が聞こえてきた。どのビルに叩き込まれたかは分からないが、この声なら無事なようだ。

耳を澄ますと、他にも苦しげなうめき声が聴こえてくる。苦痛に身を捩ってる声だが、息苦しそうではない。恐らく皆、あの衝撃波を食らう際に無意識に防御の構えを取っていた。急所を庇った守り…戦士として戦い続けた経験の賜物だ。

もしもう少しでも経験が足りていなかったら…彼らの命は無かったかもしれない。



ふと、上を見上げる。


白みがかった青空…そこから見下ろす二つの人影。

グルテ、そして仮面の女。

空虚の仮面に、思わず身震いしてしまう。あの仮面の奥で、一体どんな顔をしてこちらを見ているのだろう。無表情か、満面の笑みか…。

少なくとも、自身の行いを後悔しているような顔はしていないだろう。

あのオーラ、身振り手振りからそれが分かる。

女が何かを喋るだろうかと、そういう期待も少しばかり実ったが、やはり彼女は一言さえ発さない。

また何かを仕掛けてくる…だが予想ができない。


女は、また手を振り上げた。

葵はビルの壁にめりこんだまま、ハンドガンにエネルギーを集め始めていた。

(何をする気…)

攻撃の予兆が出れば、女の手を撃ち抜くつもりだった。


しかし…やはりやつの行動は、予測不能だった。

女の手に集まる魔力…それは、穏やかな緑色の光のような見た目をしていた。

その光からは緑の粒子が放たれており、ワンダーズ全員の頭上から雪のごとく降り注いでくる。

その粒子は、暖かった。体を包み込み、癒すような…誰かに抱かれているような、あまりに穏やかで暖かい粒子。

それが、あの邪念の塊から放たれているのだ。暖かいはずなのに、悪寒に震える。感覚すらも矛盾させる存在だった。


そして、その粒子で…皆の体が回復していく。

何かのカモフラージュかと思われたが、間違いなくこれは癒しの魔術だった。

「え、ど、どういう事…」

ドクロが、血の気が戻っていく両手を交互に見渡す。

あの女が、助けてくれた…?



味方かも、そんな能天気な思想が誰かの頭によぎったまさにその時。


上空の女が、突然こちらに降下してきた。

『ーっ?!?!?』

まさしく、言葉にならない叫びがその場にあがった。

女は、一際高いビルに叩き込まれていたテリーの前に移動し、拳を振るう!

この状況に疑心を募らせていたテリーは即座にそれに反応、手を刃に変形させ、拳を受け止める。女の血が、テリーの白い顔を赤く彩る。

「皆!!こいつはまだ襲ってくるぞ!気をつけろ!!」

咄嗟に離れる女。流れるような不気味な動きで、今度は他のビルへ接近した。

「皆、降りるぞ!!」

叫んだのはFだ。両腕を振るい、ビルから飛び出す。他のメンバーも次々に拘束から逃れ、コンクリートがばらまかれる。

女が次に狙ったのはクラナだった。

小さな体に容赦なく突き出される拳。クラナはためらわず、魔力壁を正面に展開して防ごうとする。

だが女の拳は…魔力壁を簡単に貫き、クラナの腹部に炸裂する。

血を吹くクラナ。口内に広がる鉄のような味に、目元が揺らめく。

「ク…クラナ!!!」

Fがクラナを助けようとするが…それよりも前にクラナを助けたのは…。


誰あろう、殴った張本人…女だった。

彼女はまた緑の魔力を片手に集め、クラナ目掛けて粒子を放つ。

たちまちクラナの血色が良くなり、魔力まで濃くなっていく。

「な、なんなの…何で殴ったり助けたりするの!?」

混乱しながらも、クラナは女に蹴りを浴びせた。回復されても、先程の重い打撃…あれを食らった後で、[やはり味方かも]と考えるのは野暮だ。

女は吹き飛ばされながらも近くのビルを土台にし、そのまま上空へと飛び出す。

グルテもそれに続いていくのが見える。どうやらどこかへ飛び去っていくようだ。

突然の戦闘放棄。また不可解な行動が一つ追加された。

「追うぞ!!!」

Fが先導する。

血生臭いコゴエザリアから離れていく一同。

深追いは危険かもしれない。だが…今回ばかりは悠長にしていられない。

あんなやつを放っておけば、一日だけでどれだけの命が失われるか分からない。

戦士達は、いつの間にか決戦の地へと導かれているようだった。




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