1.
唐突だが、猛烈に困ったことがある。
別に誰か居ないとか、悲しいことがとかではないのだが…。
何を隠そう、猛烈に暑いのだ。
そう暑い、暑すぎるのだ。
何でも、世間はもう夏本番だと言う。困ったな、俺達の拠点にクーラー等の冷房器具は無い。
まあ、少し前に壊滅させた、マツリを洗脳した組織から掻っ払ってきた金を使えばなんとかなるのだが。どこの取り付け業者も今は手一杯の状況の様で最短一ヶ月待ちなのだ。
ちなみにどこまで俺達が追い詰められているかと言うと。オウカちゃんは、家事を全てやってくれているが、どこか目が虚ろで、昨日は料理に入れる野菜を洗剤と間違え掛けて慌てていた。
ナナちゃんは夏休み初めに、学校の課題を片付けようと奮闘していたが物の数分で暑さに負け、庭で水浴びをしていた。その時の服が薄手の生地だったのもあり中々にエッチな濡れ透けだった。
マツリは何時も通り、俺の側を離れる事はないがショートパンツにノースリーブのシャツでうろうろされるので俺の目に毒だ。本人はいたって暑さに堪えてはいなさそうだった。
そして一番酷いスレイヤーは、暑さに速攻でやられ武器に戻り俺の腰にぶら下がっている。
そんなこんなで、俺達は各々の夏に立ち向かっている。
「だめだ、暑すぎ…。アイス買ってくる…」
俺はそう言い残しフラフラと拠点を出る。
外に出た瞬間、ムワッとした熱気と陽射しでジリジリと肌を焼かれる感覚が襲ってくる。
息を吸っても吐いても暑い。風が吹いても熱気がかき混ぜられ温風が吹いているだけ。
「キッツい…」
帰りたいと嘆く体を動かし、徒歩数分のコンビニに向かう。
「ああ、夏って最悪…。秋か春か冬が過ごしやすいのに…」
その瞬間、季節外れの雪が降り始めた。




