25.
「おい、お前の仲間達はイカレてるのか?」
監視の男が俺に話しかけてくる。
「…ノーコメント…」
「なあ、お前の仲間は計画って言葉知ってるか?」
「……ノーコメント…」
「計画のけの字も無さそうな一直線の突撃をしてるんだが…。これは一種の陽動だよな?」
「……」
監視の男が頭を抱える、俺も同様に頭を抱える。
「「マジか…」」
立場は違うはずの俺達は同じ言葉を吐く。それから十分後、スレイヤー達は俺が居る階まで爆速で走っている。
各フロアを潰しながら…。
「アイツら止められる?」
「…無理です…」
「お前のことを解放したら撤退する?」
「多分…しないと思います」
「和解できる?」
「無理です…。うちの仲間がすみません…」
「…うん、知ってた…。何で、一回目の襲撃より人数減ったのに強くなってんだよ…。おかしいだろ…」
監視の男は一人ぼやくように言って項垂れた。
その間にも破壊音は近付いてきている。
「お前を人質にするってのは効くか?」
「ワンチャンあるかも知れないですね!」
「ワンチャン無かったら?」
「火に油ですね」
「……そっか…」
遠い目をし始めた監視の男を横目に、部屋の扉へ耳を傾ける。
足音、数は三、十中八九スレイヤー達だ。
荒く蹴飛ばされた扉が宙を舞い転がる。
「クオン、無事か!?」
慌てた様子のスレイヤー達が、監視の男に目もくれず俺の方へ走ってくる。
「うん、無事だよ」
取り敢えず落ち着けるために言葉を返す。
俺の言葉にホッとした様子のスレイヤー達は、やっと監視の男に目を向ける。
「お前、クオンに何かしたか?」
何時も話している時とは違い、低く棘のある言い方をするスレイヤー。
「何にもしてないです…」
初手から降参ポーズの監視の男。
「そうか…。ではな」
あっさりと許したスレイヤーに少し驚いているとスレイヤーの姿が消えた。
何かを殴った様な音がして、横に居た監視の男が吹っ飛ぶのを見た。
「ぶぉっぷ」
その音を残して監視の男は彼方に飛んでいった。
「監視の人~!!」
余りにも芸術的な飛んでいき方につい叫んでしまった。
監視の男、アイツは良い奴だった。安らかに眠れ…。
そう思った俺に何処からか「死んでねぇーよ!!」と聞こえた気がした。
敵本拠地のビルは度重なる破壊の結果、倒壊した。




