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15.

 あれだけ見得を切ったが、我の力は大した能力ではない。言うなれば小手先の技のようなもの。


「だが、スペック任せの今のお前にはちょうど良いか…」


 クオンの剣と斬り結ぶ。一合、二合、と打ち合う中でクオンのスピードが落ちていく。


「……?」


 不思議そうに自分の体を見るクオン。理性が欠落しても気づく程の物だったようだ。


「ようやく気付いたか?」


 挑発するように剣を下げ、手招きをした。すると、先程の自分の体に起こった事を忘れたかのように飛び掛かってくる。


 また、剣がぶつかる。


 ジリジリと鍔迫り合いになるが、クオンは力任せに押し勝とうとする。だが、我はビクともしない。


「もう、勝てないぞクオン」


 クオンは、仕切り直しとばかりに飛び退き、もう一度仕掛けてくる。


「何度やろうと同じだ」


 死角からの奇襲、速さでの翻弄、正面からの打ち合い。


 先程まで通じた物が全て効かないと焦るクオン。理性が無くとも案外、多少の考え事ぐらいはできるものだ。


「教えてやろうか?」


 クオンは様子見とばかりに警戒をしつつ隙を伺っている。


「説明は得意ではないからな、簡潔に言うぞ…。我の能力は、吸収。剣を交えたもしくは斬った相手から徐々に力を吸うものだ」


 我の声は聞こえているのかピクッと反応する。


「そしてお前は、何回刃を交えた?」


 言葉と共に切っ先をクオンに向け、ニヤリと笑ってやる。


 弾かれるように飛び掛かってくるクオン。しかし、我には届かずヒラリと躱す。飛び掛かりの後のコンマ数秒の硬直を狙い刃を振り下ろす。


 クオンを殺す気でやっているわけではないので、薄皮を斬る程度の力加減だ。しかし、我の剣はそれでも効力を発揮する。


 躱そうとしたクオンが倒れる。


 一定量の力を抜かれたことで、体が着いていかなくなったのだ。


「我の力の面白いとこだ。力を吸収しても本来の筋肉量を減らした訳でも武装の力を半減させている訳でもない。もちろん、魔力やらを抜いている訳でもないぞ?つまり、お前の体が勝手に力をセーブしてしまうようになっているんだよ」


 そう言いきり我は、倒れたクオンに剣を振り下ろす。


 外傷は殆ど無いままクオンは意識を失った。


「あー疲れた。我の力、燃費悪すぎ…」


 我も仰向けで寝っ転がる。


 普段から我がこの力を使わない理由がこの、奪った力を使った後の肉体への反動だ。


 そもそも我は剣が本体。この体は怪人としての姿だ。人間と限り無く近いが肉体の老いも成長も無い。だから、力の許容量がある。伸びる余地が無い袋なのだ。


 そんなものに無理矢理力を注いだら破れるだろ?それを更に無理矢理補強して使う。それを繰り返し続けるのだから使用限界も早いし、反動もでかい。


「我も、少し寝る…」



 目を閉じ心地よい疲労に身を任せ眠る。



 起きたらクオンに説明せねばな…。



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