14.
クオンが暴れ始めて十数分経った頃。我は焦りを覚えていた。
クオンのスピードが上がり、一撃の威力が上がっているのだ。これは不味い。
そもそもの肉体のスペックが違うことで何とか凌げているだけで、このままのペースだとクオンの体力が尽きるより我の核が破損するのが先だ。
「成長が早すぎるぞ、クオン!」
クオンに声は届かず、唸り声と殺すと言うだけで返答はない。
「やはりな、クオン。お前の変身は我等と同系統の物だ」
クオンの身に起きたこの暴走は、我と同格の物達も経験したものだ。力が一定まで着くまたは、強烈な感情の動きで始まるものだ。
これを我等は覚醒と呼ぶ。
何故覚醒かと言うと、この暴走の後格段に強くなるのだ。原理は良く分からないが我の同格は全て覚醒後に超常とも呼べる力を得ている。
そして、これは我等のような怪人の成り損ないにしか起こらない。
つまりだ、クオンは我等と同じ存在だと言える。
そう考えると得心が行く。クオンの異常なまでの回復力と戦闘力、そして複数の変身スタイル。
「ふっ……覚醒終わりに何を得るのか楽しみだな…」
鍔迫り合いを押し返し、我は力を解放する。
「覚醒後の者達は皆、超常の力を得る…。それは我とて例外ではなくてな」
我の武装は西洋で使われるロングソードだけだ。特別な逸話が在るわけでもない。ただ古いだけの剣だ。誰が作ったかも分からず、誰に贈るための装飾なのかも分からず。
そんな無銘の我だからこそ得た能力が一つ。
「殲滅侵装…」
我の核である剣が鼓動する。飲み込まれるように虚空へ沈み、鎖が飛び出る。鎖を掴み力の限り引き抜く。空を割り、飛び出る剣。
我の核である剣をベースに、虚空にて打ち直された力を喰らう剣。
「クオン、ここからは勝負になると思うなよ」




