表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/68

13.

 少年から離れて起きるのを待つ。


 近付きすぎると臭いがキツイ。


 「……っ」


 「起きた~?」


 少し眠くなっていたが、欠伸を噛み殺しながら声をかける。すると、少年はビクッと震えてこちらを睨んだ。


 それを無視して話し続ける。


 「聞きたいことあるんだけど、答えてくれる?」


 「……」


 「拒否権無いけどね…」


 「そんじゃあ質問、ナナちゃんに具体的に何したの?私、それを聞く前に色々やりそうになってたんだよね~。いやー、危なかった」


 「……」


 「だんまりか~。あんまり手荒なことはしたくないんだけど…」


 少年は俺の言葉に少し体を震わせたが、喋る気配は無い。


 「もしかして、本気じゃないって思ってる?」


 「……」


 起きてから喋らなくなった少年の腹に、躊躇無く蹴りを入れる。念のためと思い、変身したままなので脚力はだいぶ上がっている。


 「ぐっ…」


 少年は、くぐもった声を出しながら踞る。


 「私、本気だよ?」


 「はぁ……はぁ……ぐっ…」


 荒い息をする少年は、まだ俺を睨んでいる。


 「次、骨折るね」


 少年の腹目掛けて足を振り上げる。しかし、そこで待ったをかけられた。


 「クオン、やりすぎだ…。死ぬぞ、ソイツ」


 「スレイヤー…。別に良いよ?」


 「駄目だ。お前が良くともナナはどうする。事情を知ってどうするかは分からないが、あの娘はきっと殺さないだろう。そして、自分の為に他の人間が手を汚すのは、あの娘にとって一番辛い事だ」


 一理ある。そう思ったが、そんなもの後でどうとでも言い訳のしようはある。今、コイツから聞ける情報は俺にとってそこまで価値はない。


 プロードがこんな奴を信用して情報を渡すとは思えない。


 そう考え、スレイヤーの言葉で止まった足を振り下ろす。しかし、間に入ったスレイヤーが俺の足を受け止めていた。


 「我は、待てと言ったぞ。冷静になれ、クオン」


 自分でもおかしいと思っている。本来の俺は、ナナちゃんに危害を加えたこと以外何も分かっていない現状で、あの少年を殺そうと思う程、短絡的な思考は持ち合わせていない筈なのだ。


 だが、無性に頭に血が上る。努めて冷静になろうとしても殺意が沸き上がる。それはスレイヤーにも向かっていた。


 「スレイヤー…。ごめん、不味いかも…」


 「ああ、そのようだな。三十秒、感情を押さえられるか?」


 「わかんない…。でも、やってみる」


 スレイヤーが何故、三十秒と言ったのか分からないが、俺は必死に感情を制御する。


 「ナナ、オウカ!!逃げろ!」


 腹の底から声を出し、部屋の外に居るナナちゃんとオウカちゃんに向けてスレイヤーが叫ぶ。


 「スレイヤー…」


 「ああ、わかっている。存分に出し切れ」


 スレイヤーのその言葉を皮切りに、感情の奔流に思考が染まる。


 「クオン、まだ意識はあるか?」


 「………す…」


 「駄目か…」


『殺す殺す殺す』


 「仕方ない、受けきってやるのも相棒の勤めか!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ