13.
少年から離れて起きるのを待つ。
近付きすぎると臭いがキツイ。
「……っ」
「起きた~?」
少し眠くなっていたが、欠伸を噛み殺しながら声をかける。すると、少年はビクッと震えてこちらを睨んだ。
それを無視して話し続ける。
「聞きたいことあるんだけど、答えてくれる?」
「……」
「拒否権無いけどね…」
「そんじゃあ質問、ナナちゃんに具体的に何したの?私、それを聞く前に色々やりそうになってたんだよね~。いやー、危なかった」
「……」
「だんまりか~。あんまり手荒なことはしたくないんだけど…」
少年は俺の言葉に少し体を震わせたが、喋る気配は無い。
「もしかして、本気じゃないって思ってる?」
「……」
起きてから喋らなくなった少年の腹に、躊躇無く蹴りを入れる。念のためと思い、変身したままなので脚力はだいぶ上がっている。
「ぐっ…」
少年は、くぐもった声を出しながら踞る。
「私、本気だよ?」
「はぁ……はぁ……ぐっ…」
荒い息をする少年は、まだ俺を睨んでいる。
「次、骨折るね」
少年の腹目掛けて足を振り上げる。しかし、そこで待ったをかけられた。
「クオン、やりすぎだ…。死ぬぞ、ソイツ」
「スレイヤー…。別に良いよ?」
「駄目だ。お前が良くともナナはどうする。事情を知ってどうするかは分からないが、あの娘はきっと殺さないだろう。そして、自分の為に他の人間が手を汚すのは、あの娘にとって一番辛い事だ」
一理ある。そう思ったが、そんなもの後でどうとでも言い訳のしようはある。今、コイツから聞ける情報は俺にとってそこまで価値はない。
プロードがこんな奴を信用して情報を渡すとは思えない。
そう考え、スレイヤーの言葉で止まった足を振り下ろす。しかし、間に入ったスレイヤーが俺の足を受け止めていた。
「我は、待てと言ったぞ。冷静になれ、クオン」
自分でもおかしいと思っている。本来の俺は、ナナちゃんに危害を加えたこと以外何も分かっていない現状で、あの少年を殺そうと思う程、短絡的な思考は持ち合わせていない筈なのだ。
だが、無性に頭に血が上る。努めて冷静になろうとしても殺意が沸き上がる。それはスレイヤーにも向かっていた。
「スレイヤー…。ごめん、不味いかも…」
「ああ、そのようだな。三十秒、感情を押さえられるか?」
「わかんない…。でも、やってみる」
スレイヤーが何故、三十秒と言ったのか分からないが、俺は必死に感情を制御する。
「ナナ、オウカ!!逃げろ!」
腹の底から声を出し、部屋の外に居るナナちゃんとオウカちゃんに向けてスレイヤーが叫ぶ。
「スレイヤー…」
「ああ、わかっている。存分に出し切れ」
スレイヤーのその言葉を皮切りに、感情の奔流に思考が染まる。
「クオン、まだ意識はあるか?」
「………す…」
「駄目か…」
『殺す殺す殺す』
「仕方ない、受けきってやるのも相棒の勤めか!!」




