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12.許せない事もあるでしょ

 目の前の少年がまだ何か言っているが、今の俺にとってはどうでもいい。


 「おい、少年。さっきの本当?」


 「は?さっきのって…アレか?嘘なわけないだろ!お前が邪魔したんだ!!弁償しろ!」


 ザ・ガキって感じの反応が返ってきた。弁償は適切じゃないと思うけど…。


 取り敢えずは、言質は取れた。コイツが加担していたことに間違いはない。だが、この事実をナナちゃんに知らせるべきか否かは別の問題だ。


 もしも、自分の身近な人間が大切な家族を危険に晒し、それも自分目当てで行ったことだったと知った時、ソイツへの怒りと同時にそんなことに気づけなかった自分を責めてしまわないだろうか。


 ナナちゃんはきっと自分を責める。目の前の少年を責めるよりももっと深く、自分を責めて許せないだろう。


 この少年がどうなろうと、もうどうでもいいが、ナナちゃんがコイツのせいでまた傷付くのは嫌なので、内々に処理します。


 「決めた…」


 「は?何だよ!ブツブツ言ってないで早く頭下げろよ!」


 ピーピー言っているのを無視して少年を蹴飛ばす。


 「いった…!」


 衝撃で舌を噛んだのか、情けない声を出しながら倒れた。


 不意の痛みに思考が追い付き俺を睨む。


 特に抵抗が出来るわけでもないので、そのまま馬乗りになり、ホールドして頭を掴む。


 「何だよ!!離せ!ブス!」


 ブス?


 俺のこの顔を見てブス?あり得ないな。ここまでの美少女を前にブスだと?


 自分の今の容姿に自信がある分、それを否定するような言動が頭に来る。怒りに任せて殴りそうになりどうにか留めて顔の横に落とす。


 ボスッと言う音を発てて、少年の顔の横に拳が刺さる。


 「は…?は?」


 何が起こったのか分からない様子の少年は、俺の拳と顔を交互に見ている。


 「言葉に気を付けてね?次は当てるから」


 「………」


 「おい、返事は?」


 少年に凄むが何も返さない。気でも失ったかと確認のため動く。すると、ツンッとした臭いがして理解した。


 「え、その歳になってお漏らししたの?」


 「…っ……!」


 泣いてるし。いや、泣いたからって同情はしないけどね?やったことがやったことだし。


 でも、汚いな…。触りたくない。一緒の部屋に居たくない。はぁ、最悪。


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