10.
館の三階から落ちた俺は、割れるような頭の痛みと、体の内側を這うような痛みに苛まれていた。
頭から血が流れるのが、背に伝わる生温い感触でわかる。最近こんなのばっかだなと、思いながら冷静な頭で考える。
取り敢えず、変身しなければ俺は死ぬ。
「変身…」
頭と手と足の回復を最優先に力を使う。ミシミシと軋む音が体からするが、なるべく気にしないようにする。
二分くらいでおおよその修復が終わり、動けるまで回復した。
「よし…」
軽く跳んでみるが異常はない。
確認が終わった俺は、三階の飛び降りさせられた窓を見る。そこにはまだこちらを見ている影が居た。
少し助走を着け跳び。三階の窓、目掛けて跳び蹴りで入る。
慌てた様子で逃げようとする影を捉え、蹴り跳ばした。
派手な音を発てて転ぶ影。よく見ると周りに影を纏った人なのがわかった。
「誰?」
答えるとは思わないが一応聞く。
「……」
案の定答えない。なので、チャッチャとボコして捨ててこようと思い距離を詰める。
影は抵抗を試みるが、蹴られた背中が痛み、よろける。そこに俺の一発が鳩尾に入り意識を失った。
すると、何かの能力で掛かっていた影が消え、素顔が見える。
男だった…。わかってはいたのだ、蹴り跳ばした後、少し見えたシルエットで男だろうとは思っていた。
いや、男と言うと語弊がある。正しくは少年だな。多分、ナナちゃんと同じくらいの年齢?
「さて、捨てに行くか…」
相手は悪意があったし、殺意もあったが、俺は殺さない。そして、男を看病する趣味もない。
変身時の身体能力を活かしてゴミ捨て場までひとっ飛びする。
そして、少年をゴミ捨て場に置き丁寧にカラス避けのネットを被せておく。
「あれ、クオンさん。何してるんですか?」
タイミングの悪いことに、ナナちゃんに見られてしまった。
「あー、これはね……」
「あれ、その男の子。私の同級生じゃないですか?」
状況が飲み込めないナナちゃんは、俺と少年を交互に見ている。ようやく飲み込んだナナちゃんは口を開く。
「クオンさん…。趣味趣向は人それぞれですけど流石にこれは……」
「違うよ!?誤解だよ!?」
必死に弁明して誤解を解いた。事情を一から十まで説明してようやく解けた。
年下の少女に土下座をしながら弁明をする俺はさぞ面白い光景だったのだろう。
いつの間にか近くに来ていたスレイヤーとオウカちゃんが腹を抱えて笑っていた。
許せねぇ…。




