3.魔法少女と俺
捻挫した足を動かして、状態を確かめながら考える。
この娘、どうしよっかな?
さっき覚悟決めた手前間違ってたら恥ずかしいけど、俺の予想が正しければ多分、前世で好きだったゲームHigh&Deathの魔法少女だ。
思い出してもこの娘の最後が悲惨なんだよな~まあ、こうして俺が転生したのは多分この娘達を救えって事なんだよね?
違っても救うけど。
なんだか布教したい気分になってきた。布教します。
では軽く説明。
High&Deathはマルチエンディング型のRPGで舞台となるのはこの娘の住む街なんだけど、その街で不可解な失踪事件が起こってそれを引き起こしてたのが怪人達なんだ。
そいつらを倒すために強い思いを形にした各々の変身アイテムで変身して戦うって言うお話。
そんでもって、この娘の他にも後二人仲間として出てくるんだけど…この娘達誰も幸せにならないんだよね。
誰に布教してんだかね?誰も聞いてないのに。
「…ぅん…っう」
目が覚めたのかな?
あ、こっち見てる。
警戒してるねぇ、あぁ可愛いね~。
ニマニマ眺めてたいけどこっちから話さないとね。助けた時は既に意識無かったから、最悪敵と見られる可能性もある。さぁて、推しと話すぞ~!緊張してきた~!!
「お目覚めかな?そんなに警戒されると困っちゃうな~。一応、貴女を助けたんだけどなぁ~」
「………助かりました」
すっげぇコミュ障だね俺。意識せずに怪しい言動してるね。最早才能の域だね。ど~しよっかな~、取り返しつかねぇ~!第一印象で人は決まるものなのにやっちまったぁ!!
見た?あの娘の返事。
「………助かりました」だよ?百パー疑われてんじゃん。
味方アピールしたかったのに良くて第三陣営、悪くて気まぐれに助けたよくわからない敵って認識になってない?なってるよね?だっていつでも反応できるように俺の動きを見てるし、何なら逃走経路の確保までやってるねぇ!
ウソ、転生直後に助けた推しに自分の言動のせいでムッチャ警戒されてる。
悲し~(T_T)
と言うことで誤解を解いていきます!
「先ずは自己紹介といこう。私は……うん、ごめん待ってね?」
「…………」
やっちまった、名前わかんねぇ。俺の前世も含めて名前が思い出せねぇ。しかも、ここで思い出せても咄嗟に出した偽名にしかならない。
あの娘もスッゴい目で見てるもん。一段警戒レベル上がった目してる。そう言う目もできるんだね~!可愛いね~!現実逃避しても何も変わらないねぇ~!
はぁ、もういっそ第三陣営MOVEで茶濁しするか?するしかないな。このまま敵対より敵寄りのグレーで落ち着かせるか。
そう言うMOVEならできる。この娘の名前は知ってるし、後に味方になる娘達も、物語の流れも知ってる訳だから、上手く使えば味方寄りグレーに近づけるかも!
よし、頑張る!
「貴女は敵…ですか?それとも味方ですか?」
痺れを切らしたあの娘、瑞帆ナナちゃんが話し掛けてきた。
「う~ん、味方だよって言ったら信じてくれる?」
「……無理です…判断材料が少なすぎます」
ナナちゃんに少し意地悪な質問をして反応を伺う。ごめんねぇ、俺も心苦しいよ~。でも、しっかりと無理なモノは無理と言えるのは偉いね!
あーヤバい。イレギュラー(俺)を相手にするナナちゃんの不安げな表情。ただでさえ自分で抑えきれない怪人がいるのに、俺まで相手にしなきゃ行けない可能性から来る、死の恐怖による身体の震えを押し殺そうとする仕草。
どれを取ってもパーフェクト可愛い。
生粋のハッピーエンド信者の俺の心に良くない感情を芽生えさせる。ナナちゃん、なんていけない子なんだ!
この表情を見ていたい。美しい。その為にはこの娘をいや、これから出てくる子達も含めて俺が守護らねば!!
「安心してね~、今すぐ判断して欲しい訳じゃない。信頼は互いに理解あっての物だからねぇ~」
「そう…ですね」
「信頼の証として、手始めに君がさっき戦ってたヤツを私が殺そうね!」
「は、え?」
なんか昂って言っちゃったけど行ける気がする。今なら何か力が出る気がする。出なくてもこの身体のスペックなら行ける。多分、メイビー。
何はともあれ、うおぉ~やるぞ!変身!!