表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/68

29.最悪の発明

 自分で天才とか言ってるのは流石にキツイ。そう思う俺の横で、スレイヤーも同じ事を思ったのか、呆れた様子で首を振っている。


『おい!こっちが説明してやったと言うのに。何だ、その態度は!』


 声の主は俺とスレイヤーの反応が相当頭に来たようで、声を荒げる。上から目線の態度は少し腹が立つが、キレるポイントが子供っぽいのでなんだか笑えてしまう。


「ふふ…」


「おい、笑ってやるなクオン……ぷっ」


『おい!また笑ったな!』


 ヤバイ、自称天才の名乗りから聞き手の態度に即ギレは流石に面白い。ここまで緊張続きだったからってのもあるが。これまで色々な仕込みをしていた黒幕がこれは予想外だった。


『まあ、いい。これから出てくるモノを見たら笑えなくなるんだからな!』


 言動が一々、子供っぽいが技術は本物なのだろう。現に、さっき出てきた怪人擬きも命令を待つように止まっている。


『見せてやろう!僕の最高傑作を!!』


 その声と共に、俺達の視界がグニャリと歪み酩酊感を一瞬覚える。感覚は直ぐに戻り、辺りが見覚えの無い場所へと変わる。


 白くだだっ広い部屋に、ポツンと成人男性一人分の大きさの箱が横たえてある。


 プシュッと言う音と共に蓋とおぼしき部分が開き、瞬間的に俺達は防御の構えを取った。


 ガンッと鈍い音が鳴り、とてつもない衝撃におれは少し後ずさる。


 対してスレイヤーは、構えこそしたものの対して力を入れず受け流した。


 その様子を見ていた俺にスレイヤーはニッと口端を上げ、これくらい出来ないのかと言外に挑発してきた。


 スレイヤーにはこれまで負けっぱなしだし、助けられっぱなしだ。最初の襲撃の時も手加減をされていなかったら死んでいた。この家に入ってからもそうだ、自称天才の仕掛けた罠をいち早く察知し声掛けをしてくれた。


「…多少は良いとこ見せないとな」


 これでは協力関係ではなく、俺の一方的な寄生関係になってしまう。高速移動で動き続ける敵に俺の斬撃は当たらないし、範囲が広すぎてスレイヤーまで巻き込む。


 避けるだろうとは思うが、味方を巻き込む様な奴とは協力関係は築けない。なので、思い切って攻撃に当たりに行くことにした。


 高速の一撃が飛来し腹部に直撃する。


 衝撃で少し浮く位の威力の一撃。肺から空気がでる。


 「ぐっ…がはっ!」


 クリーンヒットと言って良い攻撃。でも、喰らったかいは有った。


 「はぁ…はぁ…」


 「クオン!何をしてるんだ!?」


 心配そうに俺を見るスレイヤーを強く見つめ返す。


 「っ…わかった。我は我の相手に集中する」


 挑発してきたのはスレイヤーなのだが、なんだかんだ心配して、何時でも助けに入れるようにしてくれていたのだろう。


 それを今、俺は断ったのだ。ここからは俺がやると、スレイヤーに守られる訳には行かない、お前の隣に立つと言う意思を持ってスレイヤーを見つめ返したのだ。しっかりと汲んでくれたようで一安心。


 スレイヤーと俺の、感動的な場面を敵が眺めていてくれることはない。単に、スレイヤーを恐れて二匹とも近寄ってこなかっただけだ。そして、スレイヤーが俺の側にいない今、敵はまた攻撃に移る。


 俺はまだ、敵の姿形は見えていない。高速で動くのだ、余程目が良くないと難しい。


 なので、目には頼らない。俺は、敵の攻撃リズムに頼る。


 俺の周りを旋回しつつ時折攻撃を仕掛ける敵。


 「ここだ…!」


 バシュッ


 手に持った刀に感触が伝わってくる。何かを斬った。だが、浅かったのか敵は以前、旋回している。


 互いにもう一度、隙を伺う。


 「今度こそ!」


 ギッ


 鉄の軋む音が響き、遂に敵の姿が見える。


 手応えを確かめながら敵の姿を見る。


 「何で…」


 手から力が抜ける、激しい痛みが胸部に響く。


 熱い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ