17.食料泥棒
「ごめんね、オウカちゃん。逃げるって作戦は無しで」
「…なんで?怪人が来たら私、なんもできないよ?」
「うん、わかってる。でもね、私達もう怪人に目つけられてる」
オウカちゃんの息を呑む声が聞こえ、安心させるように手を握る。
女の子の手ってこんなに柔らかいんだ~。初めて触っちゃった!
ああ、ちなみに。俺は緊張とか危機感とか無い。さっきのはオウカちゃんに現状を伝える為に緊張感ある言い方をしただけだ。
まあ、オウカちゃん的にピンチなのは変わらないけどね。あの怪人さっきから、オウカちゃんを舐めるように見てる。気がする。
感覚的な物言いなのは、怪人の姿が見えないからだ。
幻覚系の能力、もしくはステルス系の能力か…。
うーん、たぶん前者は無いな。幻覚系ならもう襲われて死んでるはず。なら、消去法でステルス系になるんだけど、コレもしかして俺が知ってる怪人かもしれないな。
そうなると、非常食の残量が突然減ったのも納得だな。
まてよ、じゃあもう人も食ってるのか?
それは不味いぞ。いや、別に不味いとマズイを掛けてる訳ではなくてね?
俺の知ってる怪人ならば発生してから何日たったかで行動が変わる。食料に手を付け始めたと言うことは、少なくとも十日は経っている。
そして、もう一度人間を襲うのは手負いの時だったはず。High&Deathの公式ファンブックに書いてあったからたぶんあってる。
ここまで行動が似通っているのなら、弱点も同じはず。そう考えた俺はオウカちゃんの手を引いて廃工場を出た。
「氷見さん、なんで外に出ちゃったの!?怪人が来るかもしれないんだよ!?」
「説明も無しでごめんね。工場の中に怪人が居たから危ないと思って出てきた」
「え…?」
もう少しで死ぬかも知れなかったと言うことを実感したオウカちゃんは、ただでさえ蒼白だった顔が生気の無いものになっていた。
自分が一度、怪人になっているから、その破壊力や暴力性は嫌と言う程、知っている。気絶しないだけ良くこらえている。
もう一押しあったらお漏らししそうな感じだから、さっさと片付けて来ますか。
「大丈夫だよ。私が片付けて来るからね」
「氷見さん、待って!危ないよ!?」
ああ、そうか。オウカちゃんは怪人の時の記憶が断片的にあるだけだ。衝撃の強い部分は良く覚えていないのかも知れない。例えば、俺が魔法少女なのは知ってるけど、強さ自体は覚えてないとかそんな感じかな?
なら、安心させる為に変身から見せてあげた方が良いかもね。
「変身」
今回はクールに変身と行ってみようか!!