14.説明って案外、難しいよね
転移魔法でナナちゃんを拉致ってから色々あった。
ナナちゃんが変身して俺に蹴りを入れようとしてきたり。それを避けたら工場の壁に穴が空いたり。壁壊して冷静になったナナちゃんが核になってた女性に気付いて号泣したり。そんで、散々泣いた後に落ち着いた、今ここ。ちなみに核の女性は今は寝てる。
「どうかな?私の言ってたこと信じて貰えた?」
「…ええ、これを見せられて信じない方が無理です…」
少し鼻を啜りながら答えるナナちゃん。まあ、さっきまで凄い泣いてたからね。ティッシュかハンカチでもあれば良いんだけど、衣食住、全部借り物の俺は持ってないからね。
俺もナナちゃんも話すことが無いのでまた、無言が続く。意外なことに、今度はナナちゃんから無言を破った。
「あの……突然、襲い掛かってすみません…」
「いいよ~、俺も転移魔法で誘拐したしね!」
「あっ……いえ、それではなくて…いや、それもなんですけど…。最初に会った時の事で…」
「あぁ、あれか、それこそ気にしないでよ。ナナちゃんには立場があるからしょうがないよ~。何だっけ?魔法……冷麺?」
「連盟です」
「そうそれ。だからさ、何て言うかな…喧嘩両成敗?とか、そんな感じで良いんじゃない?俺も気にしない、ナナちゃんも気にしない、ついでに核の女性も助かった。ばんざーい!!でオッケーでしょ」
「ですが、その…私が私を許せません…」
まあ、そうだよね。ナナちゃんはクールになっても、そう言う根っこの部分は変わってないよね。でもな、本当に俺は気にしてないんだよな~。でも、それはナナちゃんの望むところではないと…。中々難しいな。
折衷案を出さねば。うーん…うーん……。あ!
「ならさ、ナナちゃんに罰を与えよう!」
「はい、どんなことでも従います」
だいぶ覚悟が決まった返答を頂いたが大した事を頼むつもりはない。ただちょっと、情報を貰うだけだ。
「良い覚悟だねぇ…。じゃあ、魔法連盟の知ってる事を全部話して?」
「え、いや、それは、私の一存で決められる事では……」
「何でもするって言ったよね?」
「うっ……はい…。分かりました…」
そこからは驚きの連続だった。二時間程、ナナちゃんから魔法連盟の事を聞いた俺は、開いた口が塞がらなかった。
まず、人体実験は本当にやってた。これはナナちゃんも知らされた訳ではなく、疑心を持って独自に調査をした結果だと言っていた。
次に、魔法少女はかなりの数いると知った。魔法連盟お抱えだけで二十人近くいるらしい。知らない魔法少女を見れるのは楽しみだ!!
最後に、怪人の中に一際強い個体が五人いるらしく、今までソイツに出会った魔法少女は全員漏れなく再起不能にされていると言う。これで、俺の心に残った「もしかしたら原作の知識がまだ使えるのでは?」と言う甘えは消え去った。
そう、原作にはいなかった。
怪人を生み出すマッドサイエンティストはいたが意思を持つ怪人はいなかった。敵は未知、数多の魔法少女を倒した怪人。出来れば会いたくはないな。他にも色々な事を聞いた。
話しにあった怪人は、そんなに強いのに魔法少女を殺さないのか?考えても答えはでない。
案外平和主義なだけの可能性もあるな。なんてね。
「これで、私の知っている事は全部です。本当にこれだけで良いんですか?私は魔法少女ではありますが、今お話した情報以外は持っていませんよ?」
「うん、十分だよ。ありがとう。それよりも、そろそろ時間的にまずいかな?」
「え?…あ!!塾、行かなきゃ!……どうしよう、間に合わない…」
心の声が焦りすぎて声に出てる。可愛い。ずっと見てたいけど流石に、塾は遅れたらまずいよね~。
「ナナちゃん目、瞑って?」
「え、はい」
すんなりと目を瞑るナナちゃん。正直ビックリしたけどやり易いから良いか。
「ほい、転移」
呆けた顔で、転移の光に呑まれるナナちゃんを見送り手を振る。