四男て後継げないから冒険者しか選択肢無いよね
「僕ってさあ、プロスペリテ家の四男だよね」
「はい」
「継げないよね。ボク」
「長男のエリク様がそのまま辺境伯になられると思います」
「次男以降は成人になるとどうなるの?」
「次男・三男ですと万が一もございますので王都や自領で役人や代官などをするのが一般的ですが」
「それ以降はそういう仕事は難しいと」
「ご主人様は将来貴族様になりたいのですか?」
「転生した自分は窮屈な貴族社会は遠慮したいんだけど、貧乏生活も勘弁したいなと」
「それですと、騎士になったり魔術師になるという選択もあります」
「ぼく的には商人になって異世界チート使って荒稼ぎということもしたいけど」
「やりすぎて命を落とすか、謀略にあって奴隷落ちだと思います。大抵の異世界から来た人はこのような運命です」
「うわ!こわ!気を付けるね」
「そうならないように私がお守りいたしますので」
「ありがたいよ。 で? 用事は何?」
「冒険者になれる年齢が本来は15歳からなんですが、ここ辺境では能力があるものにつきましては特例で10歳から登録できるのです」
「転生者がいるから?」
「まあ……それもありますが。ご領主様の優秀な人材は早く発見するようにというお触れで、冒険者ギルドも協力しているということです」
「ふーん。父上がねぇ」
「冒険者になってある程度身を護る程度の力を付けておくのもよろしいかと思いまして」
「定番だもんね。そういうテンプレがあるみたいだし」
「今日ギルド長とアポをこちらが取りましたので」
「いきなりギルド長?それに今日会うの?」
「お忙しい人のなので……明日からは国境の山でワイバーンを狩ってくるとか」
「それは今日会わないとまずいよね」
「ご主人様の方が暇だと思いますので」
「なんか言った?」
「ひとりごとです」
辺境の館から、馬車を使い街に降りてきた。
街には何度か記憶が戻る前に降りてきたが、いまいちよく覚えていないんだよなぁ。だから新鮮というか。
「馬車の乗り心地はいかがでしょうか。痛くありませんか?」
「やっぱり貴族の馬車だからかなあ。振動がほとんどないね。まるで浮いているみたい」
「ご主人様に乗ってもらうために街の職人の皆様が改良を重ねて作りあげたものです」
「そういえば異世界人も住んでいるって言ってたよね」
「街の2割くらいでしょうか」
「多いな!それ!」
「領主様が様々のところからスカウトしてきたというのも原因でしょうが。ほかの街よりははるかに多いですね」
「反乱起こされないか心配になってきた」
「到着しました。ご主人様」
御者が扉を開ける。まずリタが下りて、僕を先導する。
「裏口?」
「基本冒険者ギルドへは正面に馬車で乗り付ける者はいませんので」
そりゃ目立つわな。
リタは裏口の扉を開け、中に入るように僕を促した。
裏口すぐの階段を登り直接ギルド長室に向かうリタ。
「テンプレだと受付に入った子供主人公がガラの悪い冒険者に絡まれての展開になるんだけど」
「絡まれたいのですか?」
「遠慮してきます」
部屋前にリタは止まった。リタはノックをして相手の返事を待たずに開ける。
「おい。こちらが合図する前に開けるなよな。リタ」
「問題ありませんでしたから」
奥からきれいな声が聞こえてきた。
「相変わらずね。本当に。お坊ちゃまのお守りはどう?」
「かわいくて死んでもご一緒にいたいですね」
「本当惚れこんでるわねぇ」
いかついマッチョなおっさんを想像していたが。いい意味で裏切られた。
金髪のモデルさんみたいな容姿で、一見優しそうな表情をしてるが、なんとなく強そうなオーラをまとっている感じがした。
「これはこれは申し遅れましたアレク様。私はここのギルドマスターをしているものです」
立ち上がり深々と礼をしていた。
「アレク様を連れてきたということは冒険者登録という事ね。ちゃんと準備してあ 」
「ところで、急にワイバーン討伐って国境で何かあったの?」
「ああ、そのことね……実は……」
リタとギルマスは真剣な表情になり話し込んでしまった。
あ。こうなったら止まらんわこれ。
僕は2人の中に割って入ることをあきらめた。
つまらないのでギルド長室を後にした僕は、下に降りて探検してみることにした。
僕は一階のホールにつながる扉を開けた。そこにはギルドの受付と併設された酒場兼食堂が広がっていた。
まさにテンプレ通りの光景だ。
ただ、目を凝らすとPCっぽいものやカードリーダーのような異世界には不釣り合いな魔道具がちらほら。
無理やりそんなものだと納得する僕。
「ここから裏口に入っちゃダメよ、かわいい坊や」と、茶色髪のボブカット受付嬢に声をかけられる。
受付のお姉さんと話していると、ある冒険者が僕をを見てまわりに話しかけていた。
「辺境の屋敷で見たお坊ちゃまに似てる……あ、服の紋章が同じだ!」
そのことで身元がバレた僕は、辺境伯にお世話になったということで歓迎され、冒険者たちにご馳走されることに。
隣りで飲んでいた冒険者の「アオモリ」というお酒のお湯割りの香りで酔ってしまったと感じた僕は、意識が遠のいていく感覚に襲われた。
次に目覚めると、酒場は騒がしい。
騒ぎに気づいたリタは、無理やり酒を飲ませたと勘違いし、冒険者に「〇ッスル〇パーク!!」を炸裂させていた。
「長かった、本当に長かった戦いよさらば!」勘違いされた冒険者はそう言い残しこと切れた。
翌朝、屋敷の自室で目覚めた。
「そういえば、ギルドカードを発行してもらってないじゃないか」
朝になって今頃気づいた。
僕の部屋に現れたリタは申し訳なさそうに
「ギルド証は後日届けていただきますので」
と言い残し、部屋を去って行った。
ちなみに、リタの技は見た目はえげつないが、究極の峰打ちなので冒険者は無事だったみたい。
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