メイドに高価な武器を買ってあげたのに全攻撃がミスになりました
数日後。辺境の屋敷内ある僕の部屋。
リタが頭を下げてきた。
「ありがとうございます」
「あのさ。勝手に鞘とかさぁ。そういうところにイラつくんだよ。謝ってよ!」
「申し訳ございません」
リタが普段はやらない深いお辞儀をしてきた。
「わかったいいよ。もう」
「ありがとうございます」
「スポーツとかでも、最初に安いもの買うとやらなくなっちゃうからこれでいいと思うよ。モチベ―ション上げるためにも」
「ちょっとこの後一緒に魔物退治やりますか?」
「せっかくだからやろう!」
「時間大丈夫ですか?行って帰って半日くらいですが。馬車代くらいなら貸します」
僕はあきれた顔しながら軽く笑う。
「大丈夫だよ。その代わり楽しんでね」
「ありがとうございます」
数時間後、森へ到着。
肩慣らしに僕は魔物を見つけて剣を抜いた。
見事にゴブリンを倒した。
「うん!腕はなまってないな。リタぁ!新しい剣の調子はどう?」
しかしリタは新しい片手剣を使って魔物退治に挑むが、バランスを崩し魔物以外のものを切ってしまい、モンスターに剣が当たらない。
「弱いんだから真ん中で振り抜けばいいよ」
リタにアドバイスしてみたが、2回目の振りぬきも空振りしてしまう。
普通に装備している片手剣を使い魔物を倒していく。
対して真っすぐに剣を振ろうとしないリタにイラついてきた。
「こうだよ!こう!」
と僕は素振りをリタに見せ始める。
何度も繰り返すが、薙ぎ払った剣が岩を切り、切った岩でゴブリンを倒す展開に。
「こんな倒し方見たことないよ」
と僕は呆れ切れ気味になっていた。
何とかまっすぐに剣を振らせたいが敵に向かうと軌道がそれてしまうので、僕のイライラが頂点に。
イラ立ちがあったせいか、僕の剣も乱れ始める。
最後の一匹ゴブリンオークが出現。倒せば大きな魔石ゲットのボーナスタイム。
そこでもリタは隣の大木を一刀両断してしまい、切った大木にゴブリンオークがつぶされ絶命する。
あまりの無茶ぶりに僕は派手にずっこける。
「もうやだ!この討伐」
反省している口調とは思えない声で
「すみません」
と軽くリタは謝ってきた。
一通り狩り終わったところでリタは僕に提案してきた。
「先日防具屋に行ったときに熟練の冒険者がいっぱいいたんですよ」
「うん」
「なんか手に着けていたんですよ。あれがないと」
「小手みたいなもの?」
「はい。しっくりこないのは小手がないのかもしれません」
「あれは大物を狩るときに手を保護する為に着けるのであって、今のお前には必要ないよ」
リタは小さいホロディスプレイを出して、どんなものが欲しいか画面を見せて説明してきた。
「ご主人様。こういうもの」
「いらないよマジで」
「先程から私が剣を振るとき軌道が右に行っていたじゃないですか」
リタは欲しい小手に人差し指を突き出しながら上目使いでおねだりしはじめた。
「一番いい奴。バジリスク」
価格は5000G
アレクは一番安いオークの小手をリタに進めてきた。
「いいよ。オークで。オークにしろ」
価格700G
「妥協したら同じことになってしまうので・・・・・・バジリスクでいいですか」
リタの圧が強い。
「高いよぅ・・・・・・」
「今日は楽しもうって言ったじゃないですか、楽しめないです。今の状態では」
「あーーっ!!もーーう!!わかったよ!!バジリスク買えよ!!」
「ありがとうございます。ご主人様!」
リタは転移魔法で防具屋に行き、高級な魔物の革製の小手を購入してすぐに戻ってきた。
「すみません。ご主人様が買わなかったせいで定価で買ってしまいました」
「僕の割引スキル(7割引)。転移先では効かなかったのね」
「バジリスクの絵が描いてあるんですが。この装備方法でいいのでしょうか。なんかしっくりいきません」
「説明書通り付けたんだから大丈夫でしょ。本当にこれで曲がらないんだね」
「あ」
「なに!?」
「これ左でした」
「ふざけるな!! なんでおまえ左買うんだよ、右売ってなかったのかよ」
「右。展示品限りでしたので・・・・・・。大丈夫ですゴブリンなら左でいけます」
左にハメかえたリタ。満足そうに左手を開くのをくり返す。
「しっくりきます。それではご主人様。バジリスクの左か大木の右どちらにします?」
「じゃあバジリスクの左で一回切ってみて!」
新しい小手を左に着け剣をふるう。リタは新しい小手をつけて再び魔物退治に挑むが、極端に右に曲がってしまう。
「やっぱだめだ!」
寄りかかった大木から僕の体がずり落ちてしまう。
「すみません。右で切ります」
変わらなかった。
「なし左で行きます」
「なし左ってなんだよ!!」
やっぱり右に行く剣先。
「・・・・・・屋敷の護衛にあげます」
「もったいない・・・・・・。左利きの人。いたかな・・・・・・」
懲りずに切り続けるがどうしても右に流れる。丁寧にやれとリタにアドバイスをするが。
「ずーっと同じことやっている・・・・・・」
自嘲気味に嘆いた。
「すみません、ご主人様。私には高い武器はお肌に合わないようです」
「お前いくらしたと思ってるんだよ」
「申し訳ご」
「口ごたえばっかりして。おまえは」
「せっかくのプレゼントをいやいや使うのは違うかなと思いまして」
リタは森の奥の避難小屋を指さし。
「森の廃屋にあった両手剣が落ちていましたので」
「避難小屋ね。落ちていたわけじゃないよ」
「神秘の剣ではなく、これ使ってみます。多分剣が悪い」
すねた僕はリタからそっぽを向いて
「やれよ。じゃあ」
「ありがとうございます。楽しみましょう。討伐なんで」
「わかったぁ!たのしもうっ!」
作り笑顔全開でリタに答えた。
リタは小屋の備品の両手剣を使うと、溜まっていた魔物たちをあっという間に殲滅。
「・・・・・・お前マジでムカつくぅ!!!!」
「向いてませんでした」
「神秘の剣が向いていないことを証明するんじゃないよ!」
「一発でオークマージの群れ殲滅して・・・・・・。僕はまだ大物一匹も倒してないのに」
慌ててのこりの魔物を倒す為に僕は森をまわってみたが、大物は1匹も出ず。
「神秘のケーン!!4万G!!」
サクサクと狩るリタに、立場が逆になった僕。
「ご主人様の為に大物探してきますので」
終いには励まされる始末。
夕方になったので狩りは終了。
「楽しめましたね。ご主人様はいかがでしたか?」
「いかがでしたじゃねーよ。なんだったんだよ。神秘じゃなくてツッコミが多い剣じゃねーか」
「それでこの剣。どうするの」
「私には使えない剣でしたので、ご主人様に返すというのもアレですし・・・・・・」
「魔物は切っていませんので、献上ものとして領主様にお預けしましょうか」
「結局、誰かにくれちゃうわけね」
「私のアイテムボックスの肥やしになるより、誰かに使ってもらった方が剣としては幸せだと思います」
そういわれると、反論できないよ。
来年からリタの誕生日プレゼント、食べ物系にしよう。
・・・・・・リタが手放した剣は数年後、学園で再会することになるのだが。
僕にはショックが大きすぎてそんなことは些細な事だった。
お読み頂きありがとうございます!
とりあえず、投稿できそうなストック分はここまでなので、次回投稿は今月中に。
プロの作家さんって本当すごいと思います。エタらないように頑張ります。
(新キャラの設定がなかなか決められないのです。)