異世界なのにマジックやってみた
「最近誰でもできるマジックの動画を見るのに嵌まってしまいまして。」
「マジックって。別にスキルや魔法使えばできるじゃん。」
「安易に魔法やスキルを使わずに知恵や工夫をして相手をだます、ではなく、楽しませるのがいいんじゃないですか。」
「お前だますって言ったね。」
「コーヒーがこぼれないマジックを練習していまして。」
「指をはじいてコップをひっくり返してもこぼれなくなるやつ?」
「はい。」
「コーヒーって大丈夫?高いんだからね。こっちの世界のコーヒー。」
「大丈夫です。こぼれたとしても『クリーン』がありますから。」
早速リタは、コップに並々と冷めたコーヒーを入れ、中身を見せた。
「種も仕掛けもございません。」
「コーヒーの量これでいいの?本当大丈夫?」
「問題ありません。では私が動画で学んだこの実力。ご主人様しっかり見守ってください。」
パチンと指を鳴らした後、コップを逆さにした。
バシャ―ン!!
「ちょっとーー!!」
「申し訳ございません!!すぐに『クリーン』致しますので!!」
リタは素早くこぼれたコーヒーをクリーンした。
「多分指パッチンの音が小さかったからだと思います。もう一回やらせてください。」
またこぼした。
「今度は焦って指パッチン忘れました。」
「パッチンしてくれよ!!」
「わかりました。」
「何がわかったの?」
「冷めたコーヒーですから気合が入らないのです。アツアツのコーヒー沸かしてきます。」
熱いコーヒーを作るためにリタは給茶室に行った。
俺はソファーの下にコーヒーが掛かっている事に気がついたので「クリーン」しようとしゃがんだ。
「ご主人様アツアツのコーヒーが用意できました。行きます!!」
僕がソファーを拭いている真下で、アツアツのコーヒーをひっくり返した。
「アツ!!アツ!!アツ!!アツ!!アッツー!!」
あいつ、思いっきり頭にぶっかけやがった!
「キャー!!プチヒール!プチヒール!」
「アー!もう!! アタマがコーヒー臭くなったじゃないか。」
「先にクリーンの方がよかったでしょうか?」
「いや、今のはヒールでよかったと思うよ。」
リタにクリーンしてもらった。
「こういうのって、水分を固める粉を使って落ちないようにするんじゃないの?」
「あ!忘れてました。」
「忘れてたんかい。用意していたんなら早速使ってよ。」
「それではお言葉に甘えて。」
リタは部屋の隣にある給茶室に向かった。
「粉を入れたので大丈夫です。」
リタはコーヒーを飲んで確認する。
「おいおい!その粉の入ったコーヒー。大丈夫なのかよ。」
「おいし! それではいきます。えい!」
バシャ―!!
「おいぃぃぃぃー!!!! 粉入れたのになんでこぼれたんだよー!!」
「そんなことは!! あっ!! 原因は間違って隣に置いていた粉ミルクでした。」
「だからおいしかったのか。って アホか!!」
リタは少し困惑した顔で笑いを浮かべた。
「ご主人様、最後の一回です。本当に今度こそ成功させます!」
「頼むよ、これ以上は無理だからな……」
リタは再び給茶室に向かい、高いコーヒー豆を使って、最後の一杯を淹れた。
「この一杯で決めてみせます、ご主人様。」
「本当に頼むよ、これが最後なんだから!」
リタは慎重にコーヒーを入れ、指を鳴らしてコップを逆さにした。
「えい!」
しかし、またもやコーヒーがこぼれてしまった。今度はアレクもリタも声を上げることなく、ただ静かにその場を見つめていた。
「リタ……これで高いコーヒー全部使っちゃったよね?」
リタは神妙な顔で頷いた。
「はい、ご主人様。これで最後の一杯でした。」
アレクはため息をつき、リタに向かって苦笑いを浮かべた。
「リタ、お願いだから次はちゃんとしたマジックを覚えてきてくれ。俺の財布も、心も、もう持たないよ。」
リタも申し訳なさそうな感じで答えた。
「次回のコーヒーの入荷が1か月後と聞いてますので……これでは失礼いたします。」
パタン! リタは扉を閉めて部屋を出ていった。
「1か月もコーヒー飲めないのかよっ!!っておい待てよ!!」
次の日の朝。ベットの枕元にインスタントコーヒーが3袋おいてあった。
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