アレクは魔法を使いたい
治してもらった少女カーミンは「お礼にアレク様の魔力復活に協力するね。」
と言ってくれた。
早速、3人で神殿の売店を訪れた。
「魔力修復ツールがあると聞いたんですが」
店員に伝えたらお品書きを渡された。
お品書きから「ニート用」の修復ツールを探したが、そもそも「ニート用」なんてものは記載されていなかった。
働かない者には神殿は厳しかった。
エントランスに戻り、カスタマーセンターで聞いた神殿にいる専門家を探すため、インフォメーションセンターで魔力修復の専門家のことを聞いた。
転職お悩みクリニックにいると聞き、診察してもらうために受付のお姉さんから番号札をもらった。
待合所で待つ間、カーミンが僕のことをいろいろ聞いてくるうちに順番が来た。
専門家の話をざっくり説明をすると、原因は5年前に心に相当な負荷がかかったせいで魔法起動のプログラムが一部破損してしまったと。
それを治すために専門家の人に光の玉とカルテを渡され、処置室に行くように言われた。
処置員にカルテを渡すと、
「五年前に戻って壊れる前の状態のアレク様のブートプログラムを、あなたが持っている光の玉にコピーして持って帰ってください」という指示だった。
「似たストーリーのゲーム、前世でさんざんやりこんだぞ」と処置員にツッコんだ。
「あの人は「すり替えておいたのさ!」ですから違いますよ」
と僕は逆にツッコまれた。
処置室にあった魔法陣で僕は飛ばされた。
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見覚えの無い森の中の小路に僕はいた。
不安を感じながら道に沿って歩くと、道に迷ったという吟遊詩人らしき人に話しかけられた。
「君はこの近く住んでいる子かな?」
十歳だからそうみられてもおかしくないよね。
「実は隣町からやってきたけど、子供の自分では村の人に怪しまれるから村に入ることにためらっていて」
彼に言うと、
「僕の見習いということで一緒に村に入ろう」と提案され、チャンスとばかりその提案に乗った。
中央に小川が流れる小高い丘がある小さな田舎の村に到着した。
村の門番に入村料を払った。
「宿は僕が取っておくから。何かやりたいことがあるんでしょ。一旦ここで解散しよう」
吟遊詩人が言ってきたので、僕はうなずき吟遊詩人と別れた。
早速、五歳の僕を探す。
村の中央広場に着くと
「誰を探しているのですか?」
十歳くらいの少女に話しかけらた。
「自分に似た顔の5歳くらいの男の子を探しているんだけど知らない?」と言うと、
「うん。知ってるよ。君、領主様の子に似ているからついてきて」と言われ付いていった。
ブランコを漕いでいたチビアレクに会った。田舎の村にもブランコあるんだ。
チビアレクに一晩預けることでブートプログラムはコピーされると聞いたが。
僕はチビアレクにやさしく慎重に話しかけた。
「これを一日持っていると良いことがあるよ」
チビアレクに光の玉を渡した。
チビアレクは光の玉を受け取り素直にうなずいた。
今とは大違いな素直で従順な自分に、心で泣いた。
吟遊詩人が取ってくれた宿で彼と合流した。一緒に食事をとることに。
しかし、吟遊詩人の飲んだ酒のせいですぐに眠くなり、寝てしまうのを耐えて寝室に向かった。
―― 深夜 ――
外の騒ぎで目覚めた。魔物が村に襲来したということだった。
どうやら吟遊詩人は魔族であった。
俺は宿に入ってきた雑魚魔物を倒し、村の広場では闇の衣をまとった魔族の男が、村を守る兵士と戦っていた。
村の護衛の攻撃は魔族には全く効かなかった。護衛が倒され、魔族のターゲットにされたチビアレクたち。魔族が手を掛けようと襲い掛かるところで俺は彼らの前に立ちふさがった。
魔族の弱点を解説に聞いた。
「君が持ってきた光の玉をぶつけるんだ!割れた光で闇の衣が消えて、残ったのは戦闘力五のゴミだけだ。」
ためらった。
せっかく貯めたデータを壊すのか、村の危機を救うのかを……しかし二人の前に立ってしまっては使うしか選択肢は出てこなかった。
俺の前に落ちていた光の玉を魔族に投げつける。割れた光が魔族の闇をはがす。無防備になった魔物をニートのパンチであっけなく倒し、魔障になって消えた。
後ろで抱き合っていたチビアレクと少女を救った。
それと同時にねじ曲がった空間に吸い込まれる感覚がした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
気が付くと神殿の処置室のベットにいた。
「せっかくブートプログラムを取ったのに……」
任務失敗に落胆する僕だったが、なぜか魔物の攻撃で受けた傷がみるみるうちに回復した。
ステータスを確認した。
どうやら僕が持っていた自動回復魔法が発動したようだ。
過去の記憶を元に解説に聞くと、視察に訪れた村で魔物に襲われるが、名も分からない勇者によって魔物が倒されたということで、僕のブートプログラムが壊わされずに済んだということらしい。
結果オーライということになったが、なんか腑に落ちなかった。
協力してくれると言ったカーミンはどこにいるのかとリタに尋ねる。
「カーミン?はて、誰ですか?」
えっ!どういうこと? 解説教えて。
『この世界では、魔法を使えないことをど忘れしたために、旅芸人に転職後、階段につまずき頭を打って処置室に運ばれたようです』
……ということになっていた。
僕は回復でも攻撃魔法でも探索スキルも使えるようになっており、頭の痛みが引いたため屋敷に帰ることにした。
屋敷での夕食。
なぜか今日からデザートが増えた。
どうやらお菓子作りが得意なメイドが加入して今日から作ってくれるとのこと。
一か月前にメイド長がスカウトした新人らしい。
会いたいと言って合わせてもらうと、なんと、改変前に出会った魔法少女『カーミン』であった。
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