篝火編 第七話
著者:吉野玄冬 様(ココナラ
企画:mirai(mirama)
こうなれば、やるしかない。
覚悟を決めたセイジはアカネの耳元で囁く。
「……俺が合図をしたら、屈んだまま外にダッシュだ。良いな?」
彼女は動揺しながらもコクコクと頷いた。
「逃げたか?」
「部屋の中を探せ!」
頭上から男達の会話が聞こえる。どうやらこの部屋に突入してきたのは偶然ではないらしい。
なら狙いは……アカネか。その目的については後で考えることにする。
「っ!」
セイジは目の前に男の両脚が見えた途端、それを掴んで引きずり倒した。意表を突かれたことで容易に転倒する。手にしていた銃を奪い、即座に他の男達を撃ちながら立ち上がって、足元の男を思い切り踏みつけた。
男達は防弾衣を着用しているようだったが、無傷というわけにはいかず怯んでいた。
「アカネ!」
「う、うんっ!」
セイジは男達に銃を乱射しながら、アカネと一緒に部屋の外へと出ようとする。
「きゃっ!?」
「なっ!?」
外で待機していたらしい男の手でアカネが捕えられていた。
もう一人いた……!?
思わぬ伏兵にセイジは隙を見せてしまう。それを敵は見逃さず、男の一人が肉薄し強烈なボディーブローを放ってきた。
「ぐっ……!?」
セイジはノーガードで受けてしまい、呻き声と共にうずくまる。
全身を駆け巡る激痛に気を抜けば遠のいてしまいそうな意識を何とか保つ。
「こいつは殺しても良いんだったな」
目の前の男は銃口を突き付けてきた。その指が引き金にかかる。
ここまで、か……。
セイジが死を悟った直後、アカネの悲鳴が部屋に響いた。
「やめてぇぇぇぇッ!!」
その瞬間、男達の身に異変が起きる。
「な、何だこれはっ……!?」
「ひぃっ、た、助けっ……!」
「あ、ああぁあぁぁぁぁ……!!」
彼らは身体の末端から朱い塵となっていき、悲鳴を上げながら消滅したのだ。
「何、これ……」
アカネ自身も何が起きたのか分からないようで、わなわなと唇を震わせながら自分の両手を見つめていた。
これは一体……これが朱世蝶の力、なのか……?
セイジは疑問を抱きながら力尽きて意識を失った。