篝火編 第三話
著者:吉野玄冬 様(ココナラ
企画:mirai(mirama)
「おい、お前。俺に付いてこい」
セイジはひとまず発見した少女を宇宙船に連れ帰ることに決めた。他にそれらしきものもない為だ。
この部屋にあるカプセルやそこに繋がれた機器も未知のテクノロジーなことは間違いないが、どうにも持ち運べる様子はない。
「わかった!」
カプセルから出た少女は特に反発することもなく、快活な様子で素直に従った。もし逆らっても無理やり連れて行くつもりだったが、手間がかからなくて助かる。
セイジは改めて少女の姿を眺めた。
一般的に美少女と言って良い顔立ちだろう。良く出来た人形のように端正だ。
その華奢な体躯には純白の貫頭衣を纏っている。一体化しているように見える薄手の素材だ。それが何なのか少し気になったが、今は下手に触れないことにする。
高精度のスキャン機能を少女に対して用いるが、エラーを出すだけだった。
通常ならこんなことはありえず、謎だらけだ。少女に見えるが、本当に人かどうかも分からない。
まあ、余計なことは考えないのが一番だ。今は宇宙船に戻ってゾフィールに報告するのが最優先となる。
「行くぞ」
「はーい」
セイジが来た道を戻っていくと、少女は踊るような足取りで付いてきた。
「あなた、お名前は?」
「……セイジだ」
繰り返し訊かれても面倒なので仕方なく名乗ると、少女は勢いづいた。
「セイジ! セイジはどこから来たの? 何をしている人なの?」
どうやらまるっきり無知というわけではなく、世の事柄について基本的な知識はあるらしい。
だが、そんな質問にいちいち答えてやる義理はない。
「静かにしてろ」
「うっ、はい……」
少女は露骨にしょんぼりとした。その分かりやすい感情の起伏は単なる子供にしか見えない。
セイジは人付きあいというやつが好きじゃない。他人に合わせるというのがどうにも苦手な性質なのだ。
その中でも子供は代表格だと言える。このまま子守をすることになるのはごめんだ。
戻ったら個室に閉じ込めておくことにしよう。この少女をどうするかはゾフィール次第だが、どうなるにせよ最低限の関わりで済ませたい。
宇宙船に向かいながらセイジはそう思った。