篝火編 第一話
著者:吉野玄冬 様
企画:mirai(mirama)
多機能宇宙服を装着した青年、セイジは金属質の通路を歩きながら片手に持った物を眺めていた。それは幾何学的な形状をしており、球体型の薄膜でコーティングしてある。
「ったく、生体探知型の爆弾が湧いてくるとは、侵入者への殺意ありまくりだな。咄嗟に俺の生体反応を遮断しなきゃあの量、下手すりゃ死んでたぞ。しかも、こっちのセンサーに反応しねぇときやがる。一体何で出来てるんだか。ま、せっかくだ、外界と遮断して無力化できたこいつは頂いておくとすっか」
スーツの収納エリアに仕舞うと同時、扉に辿り着いた。ロックを解除する必要もなく、自動で開かれる。
ここに来るまでも侵入者撃退のセキュリティは色々あったが、それを乗り越えれば同様に先に進むことが出来た。
扉の向こうは正方形の空間となっていた。一辺の長さはおよそ10mほど。
中央には大きなカプセルが鎮座していた。他に通路は見当たらず、どうやらここがこの建造物の最奥らしい。
周囲は未知の機器で囲まれている。軽く触れてみても、操作を受け付ける気配はなかった。
カプセルの中身を覗き込んでみると、朱色の髪をした少女が横たわっていた。無地のシンプルな服を纏っている。
と、そこで突然、目の前に仮想ディスプレイが勝手に立ち上がり、見知らぬウインドウを表示させた。
『セカイ、ホロボシマスカ?』
どうやらこちらの機器を乗っ取り、表示させているようだった。
つくづくこの建造物は人類よりも遥かに高度な技術で構成されているのだと実感させられる。
「……んなわけねぇだろ」
セイジは表示された『ハイ』と『イイエ』から迷わず後者を選ぶ。
すると、続けて新たな問いが来た。
『セカイ、スクイマスカ?』
「……俺は滅びとやらと同じくらい救いとやらも信じてねぇよ」
再び『イイエ』を選んだ。
すると、カプセルが白い煙を吐き出しながらゆっくりと開き始めた。
セイジは咄嗟に警戒したが、分析結果を見るに害はなさそうだった。もし検知できないのであれば、それはそれでどうしようもない。
カプセルが完全に開かれ、煙が晴れると、少女が半身を起こしていた。
「あなたは、だれ? ……わたしも、だれ?」
こちらを見てそう言った。
髪と同じく朱色の瞳。加えて、先程表示された二つの問いかけ。
それらからセイジは一つの推測に至る。とても信じがたい推測に。
「まさか、こいつがお目当ての朱世蝶だって言うんじゃないだろうな……?」
訳の分からない状況に、こうなる原因となった依頼人を恨んだ。