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6.なんでそんなハッキリ言うん

 人工物が遠くに見える何もない広い丘に、色とりどりの力が飛び交っていた。


 魔力を練り上げ、俺が出すのは火の玉や見えない風の鎌。時に大きく時に速く、緩急をつけた魔法攻撃で相手に休む暇を与えない。

 そんな俺の攻撃に臆することなく正面からその全てを撃墜し、更に手数を上回る様にアリシアも火の玉や白熱の光線を負けじと飛ばしてくる。


 既にこの様な打ち合いは数分間も続いており、お互いに拮抗した手数と威力では決定打に欠ける。

 それを悟ったのか、いつもより気合の入った様子のアリシアは俺の放つ比較的威力の低い魔法とそうでない本命を一瞬で見分け、魔力を全て防御に切り替えその身で致命傷にならないものは受けながら、真っ直ぐ特攻する様に近付いてくる。


「それじゃあ次の手が遅れるよ!」


 俺は詰められた距離と同じ距離を、今や作業の様に行使できる攻撃用の魔法で牽制しながら風の魔法を足元に発動し、体ごと後ろに飛んだ。


 ここで距離を潰せなかったアリシアは一瞬悔しそうな顔を見せたが、直ぐに思考を切り替え戦略を変更し遠距離用の魔法の準備を始めた。


 だが全速力で走っていた体勢からの急停止に加え、魔法を防御するための魔力を再び遠距離魔法に切り替える一瞬の隙を俺は見逃さず、足元の風魔法を下がるのではなく前進に切り替え、自分の体の推進力も加えた風魔法をアリシアに目掛けて撃った。


 すると、やはり切り替えが間に合っていなかったでのだろう、手から放たれた不可視の攻撃に対応しきれず、強めに放った風の塊を腹にモロに受け、メリッと嫌な音を響かせながら弧を描いて吹き飛んだ。


 その一撃で確かな手応えを感じ、勝利を確信した俺は一応残心の間を置いてから戦闘態勢を解き、仰向けに倒れたまま動かずにいるアリシアに近付いた。


「今回は俺の勝ちだな。土壇場で慣れてない近距離戦は避けた方が良かったな」


「ん、私の判断ミスだった」


 悔しがっていると思ったが、特に何事も無かったかのように真顔のアリシアに歩み寄って、起き上がる為に手を貸し近くの木陰で休憩を取る為に移動しつつ、お互いの反省点を言い合う。

 今回は俺が勝ったが、ここ数ヶ月でのアリシアの魔法の伸びは目を見張るものがあった。


 今もボロボロになっていたアリシアの周囲を光の粒子が包み込み、俺の魔法で負った火傷や裂傷がみるみる内に回復していく。先程の一見無謀に見えた特攻も、この力の存在があったからこその行動だろう。


「傷は大丈夫そう?」


「ん、もう治った」


 俺に見えるよう掲げたアリシアの左腕は、最も火傷や裂傷が酷かった場所だ。だがその傷も今では痕すら残さず綺麗に消え、元の白い綺麗な腕があるのみだ。


「やっぱりいいな、回復魔法」


「私は特別。ライノは才能が無かった」


 なんでそんなハッキリ言うん。泣くぞ。


 だがこれはアリシアの言う通りだ。俺が持っているのは大して珍しくもない火と風という属性の二つだが、何とアリシアは三属性持ちで、火以外はかなり珍しい属性だった。


 その内の一つが、先程も見た光の粒子、回復魔法だ。

 これは前世の知識がある俺から見ると異常とも言える力で、自他を含めあらゆるものを回復させることが出来る。


 まだ詳しいことは分かっていないが、軽い怪我であれば即座に回復できるし、試してはいないが恐らく魔力が増えれば欠損すら治せると思う。

 なにせ回復魔法は珍しいのか俺はまだアリシア以外に持っている人は見たことが無い。だがこの力が破格である事は言わずもがなで、俺もアリシアもそこは自覚しているので公言しないようにしている。


 そして最後に残ったもう一つの属性は、光属性だった。


 これについてはよく分からなかった。

 現状判明している光属性の使い方と言うと、光を出せる事と、放出した光を凝縮してレーザーの様に放てる位しか使い道は見つかっていない。

 ただこのレーザー。光をレーザーにとは言ったが、その速度は光速ほど速くは無い。目で見て避けれるしね。


 ゲームや小説だと、大体の場合光属性はもっと色々な事が出来るんだが、魔力量がまだ足りてないのか……?


「ねぇ、今日は私なんで負けたの?」


 大きな木の根元に腰を下ろし、光属性の幅を広げる為思考に没頭していると、いつの間にかアリシアの顔が目の前にあった。

 初めて会った時に着ていた様なワンピースではなく、動きやすさと頑丈さを重視した厚手のズボンとティーシャツという、ボーイッシュさが引き立つ格好に、出会った頃と変わらず今も少し芋臭い顔つきではあるが、よく見ると美人な顔に少しだけドキッとしてしまう。


「あー、えーっと?今回のは防御に回す魔力と攻撃に使う魔力の切り替えを雑にし過ぎたからかな?あとはいくら回復できるとは言えもう少し慎重に動くとよかったかも」


 ほんのりと熱くなった気がする顔を隠す様に少し体勢をずらしてからそう言うと、アリシアは特に気にした様子もなく、顎に手を当てて一人反省会を始めた。


 何とも思われなくて良かった……。


 先ほどアリシアとの会話にも出てきたが、基本的に魔力の使い道は二種類ある。一つは魔力という燃料を属性と言うエンジンにぶち込んで現象を起こすもの。これが最も分かり易い。


 二つ目は魔力を単純なエネルギーとして放出しながら硬め、防御などに使う。

 これは一定以上の魔力量を持っていないと出来ないので、俺とアリシア以外に出来る人はいない。因みに魔法だけじゃなく物理も防御できる。


 俺の答えを聞いて少しの間うんうんと唸りっていたアリシアだったが、暫くすると何か妙案を見つけたのか、閃いた様子で顔を上げた。

 こういったところも、アリシアが天才である所以だろう。彼女は俺と違って前世での知識や経験こそないが、恵まれた魔法の適応力と何でも器用にこなせる順応性がある。


 正直凄く羨ましいが、無い物ねだりをしても仕方がない。俺は俺のやり方で主人公街道を突き進むのだ。


「ねぇってば」


「はい」


 またもや考えに没頭していて気が付かなかった。今度は顔を近付けてはいないが、俺の正面に膝立ちになり、両手を肩に置いて上から覗き込むように見つめられた。


 またしてもその無垢な瞳に少しドキッとさせられたが、本日二度目。同じ過ちは繰り返さない。


「体鍛えよ」


「うん……うん?」


 何だか分からないが、アリシアが出した答えは新しい魔法の技や属性を伸ばす事ではなく、何故か体を鍛える事だった。

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