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19/22

19.俺より強いのに乙女なのね

「何したのか説明して貰っていい?」


「ん、分かった」


 現在俺たちは、先程の俺との戦いの焼き直しのように倒れたモーリーを治癒師に任せ、観覧席でアリシアを囲んでいる。


 というのも、俺があれ程苦労してやっと相打ち気味に倒したモーリーを、時間にして数秒で倒したからだ。


 倒した事自体は、まぁ問題じゃない。重要なのは何をしたのかだ。


 試合が始まり、開始早々にアリシアが目くらましの光属性の魔法を使ったと思えば、視界が戻った時には既にモーリーは死んでいた(死んでない)

 流石に何をしたのかくらいは知っておきたいし、何より俺があれ程苦労して(ry


「まず魔法で相手の視力を奪った、それでさっきライノが戦ってるの見て勝ち方が分かってた」


 アリシアの話を要約すると、どうやら先程の俺の戦いを見て、アリシアも相手の弱点に気が付いていたらしい。


 その弱点と言うのは、恐らくモーリーのスキルだ。

 俺は戦いの中で、ある違和感をずっと抱いていた。基礎能力は互角だが、スピードだけならば上回る俺の動きに何故ああも付いてこられるのかだ。


 始めは、数々の経験によって得られる予測や反射で動けているのかと思ったが、どう見ても俺の動きを捉え切れていない様子から、それも違うと思い直した。

 ならば、スキルによる動きの補助が掛かっており、自分に迫る危機に自動的に迎撃する類のものかと思い、魔法を数度放って試したところ、なんとこれがビンゴでドンピシャだった。


 そして俺は接近戦に持ち込み、スキルによる自動迎撃の上限回数である三回を打ち切らせる作戦を立てなんとか勝利した。

 だがそれでも最後は地力で対応してきて相打ちになってしまったが。


 だがそこはやはり天才アリシア。俺のように詰めが甘くなることもなく、しっかりと相手の視界を奪い、スキルの回数の三回を使い切らせてから確実にトドメをさして殺したらしい(死んでない)


 一撃目は接近の勢いを利用した突きを、二撃目は木剣を右から真っ直ぐ振り抜く切り払いを、その勢いのまま後ろ回し蹴りを、そして最後に下から切り上げで顎を。

 無駄な行動のない、最速最短最効率の動きだ。嫉妬しちゃうよ。


 だが、いくら天才のアリシアとは言え、あのモーリーのスキルをああも完全に攻略するのは至難のはずだ。アリシアも言っていた通り、先程俺が戦っているのを見て研究していたという事だろう。口で言うのは簡単だが、それを見たからと直ぐに戦略を立てて実行できる辺りは流石と言った所か。


「ライノは慎重すぎる、あの程度直ぐに見切れないと。でもそのお陰で私は楽できた。ぶい」


 またしてもブイサインを作ったアリシアが、感情があまり籠っていない顔のままダメ出しをしてきた。しょうがないじゃないか、初見であんなスキル見破れるかっての。


「ところで、何故モーリーさんはお前の攻撃をあんなに躱せたんだ?アリシアは直ぐに勝てたのに」


 俺達の会話に疑問を持ったのだろう、親父がそう声を掛けて来るが、どうやら俺とアリシア以外はスキルの正体に気が付いていないらしい。


「えーっとまず……」


 ここで話を戻そう。モーリーの弱点とスキルについてだ。

 まず、スキルとは基本的にはその人物が持っている技能を極めた所で固定化させ、自動的に覚えた動きや技術を発揮できるもののことを言う。

 そしてモーリーの使っていたスキルは、恐らく自らに迫る攻撃を自動的に迎撃すると言った類のものだろう。


 自らが近くしていない攻撃すら反応し、自動的に体が動く。破格のスキルだ。

 だが当然、強いスキルにはそれ相応の制限がつきものだ。


 その制限、弱点とも言っていいそれは、回数制限だ。

 先程も軽く触れたが、一度の攻防において自動的にスキルが発動するのは三回まで。その制限を超えると一度クールタイムを置かなければならないらしい。


 この回数制限を確かめる為に、俺は何度も同じ魔法をモーリーに放ち、正確なスキルの弱点をあぶり出したという訳だ。


「ほー、つまり三回はどんな攻撃も効かないって事か。なら四回連続で攻撃すれば勝てるって事だな」


 まぁ、そうだが……先程俺とアリシアが実践したことをそのまま言ってるだけだろ……。

 それに、()()()()()()()という部分にフォーカスしたのか親父にしては鋭い意見だ。


 始め、このスキルの存在を感じ始めた時に、俺は魔法戦に切り替えようと思った。だが、モーリーのスキルは物理攻撃だけでなく、魔法にすらも反応し迎撃した。つまり、本当に攻撃ならばなんでも防げるという事になる。


 勿論火属性や迎撃しきれない程の威力を持った攻撃ならばその限りでは無いだろうが、物理的に跳ね返せるのであれば可能と言う事になる。


「ライノ君もとてつもないが君はそれ以上だな、アリシアよ」


 俺達の会話を静かに聞いていたケルセリエスが俺たちの元まで来て、頭を優しく撫でた。そして撫でながら朗らかな笑みを浮かべて、そろそろ戻ろうと提案するので、全員で訓練場を後にし、部屋へと移動する。正直かなり汚れたのでシャワーも借りたい。


 ゆるりと部屋へと移動した俺達は、各々で少し休憩を取り始めた。




 ―――――――――――――――――――――――




 一度全員でパーティールームのような客間に移動してから、俺とアリシアはシャワーを使わせてもらう事となった。

 正直俺はそこまで徹底した潔癖症のようなきれい好きではないのだが、流石に大汗を掻いた後だし、何より転がった時などに付いた土が酷い。


 財政難のうちで揃えたそこそこ上等なスーツを汚してしまったのは今思うと失敗だったな……。


「それでは、シャワールームまでご案内いたします」


 今世では初のシャワーだ。うちにはきったねぇ風呂釜があるだけでシャワーなんて使う機会はなかったからな、少しだけテンションが上がる。あれはあれで風情があっていいけど。


「ん、ライノは後で入って。絶対覗く」


「覗かねぇよ!俺たち今何歳だと思ってんだよ!」


 俺まだ八歳だぞ。女子の風呂覗くにはまだ数年早ぇよ。いや、丁度良いくらいか?

 兎に角、アリシアの風呂を覗くつもりなんてさらさらない。どっちかと言えばリチアおばさんの方がいいしな、あの大きな胸は子供ながらに目が行ってしまう。おい待てアリシアさんなんでキレてんだ。


「ご心配には及びません。来客用のシャワールームは男女で距離が離れておりますので」


 なんだよそういうことなら早く言ってくれよ。アリシアさんが何故か知らんがキレてもうてますがな。


「ん、その心配は無い。今ここで私はシャワーを浴びる。血のシャワーを」


 あかん、これあかんで。何故かアリシアさん激おこやで。


 その後、俺はアリシアに追い回されて新たに大量の汗を搔いて逃げ回り、何とか血ではなく温かいシャワーを浴びる事が出来たとさ。

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