【第88話】噛み締める宴
こんにちは、ノウミです。
たくさんの小説や素晴らしい作品がある中で、私の作品を手に取っていただきありがとうございます。
これまでに多くの作品を発表してきましたが、皆様に楽しんでいただけるよう、これからも様々な物語をお届けしていきます。
皆様に「読んでよかった」と感じていただけるよう、
一層精進してまいります。
どうぞ、これからもご期待ください。
「さて、皆さん。ここに残って前線に立つ部隊と、大峰魔山を越えてスタンドレスに向かう部隊とそれの護衛部隊に分かれましょう」
私はその場に集まっていた全員に号令を出す、各々が準備のため散っていく。竜の力を持つコハク、クベア、ジャスティス、アレクはこの場に残し、前線に立つ部隊の構成について打ち合わせをする。
それぞれを部隊長に据えて四つの部隊に分ける。
サクラとシャナン、カリナにメイシャンは私と行動し、遊撃部隊として稼働してもらうつもりだ。
そうして話し込んでいると海族が焦りながらこちらに向かっているのが見えた、遠くから歩いてきてこの現況が目に入れば焦りもするだろう。
私が先頭にいたガリドンの元へと駆け寄り、起こった事の顛末を説明する。
「そうか、そんな事が…もっと早くに来ていれば」
「気に止むことはありませんよ、むしろ海族の皆さんに連戦を強いる事がなかったので良かったです」
「そうか、ありがとうな…」
「では、到着して早々申し訳ないのですが話した通り今後について話し合い中なので参加をお願いしても?」
「あぁ、その前に…我らもナディ魔王に忠誠を誓う」
「えっ?」
「ここは勝ちに乗っておくのが良いだろうな、それに全員が傘下になるんだろ?俺らも同じように扱ってくれ」
そういいながらガリドンは膝をつき頭を下げる、それに合わせるように後方にいた海族の全員も、同じように膝をつきながら頭を下げていた。
私もそれに合わせて頭を下げる。
「こちらこそ、宜しくお願いします」
「おう、頼む!」
そうして立ち上がったガリドンも交えて話し合いを続ける、竜族、天族、海族、エルフ族、ゴーレムをそれぞれ四つに分けて部隊を編成する。近距離、遠距離、空からとバランスは非常に良いと思う。
「後は向こうの戦力ですが…」
残った八獄衆は五人、分かっているのは暇か縄のような物を扱うゴープと名乗った者のみ。
「その中に先王が…?」
「はい。竜族、天族、海族、獣族…そして戒族、それぞれの先王が今もなお、依代にされています」
「それだけで済めばいいがの……」
そう、そこに加えてガザール、カルラ、ホウキ。それに王燐と行動していたラインとリャン。把握している強力な敵戦力としてはこの辺りだろう。そして逃げ出した王燐、奴は死んだのか、生きて何処かに息を潜めているのか。今となっては確認する術は無い、あのまま何処かで生き絶えている事を望むが。
「それに、各敵兵も人工獄心石とやらで大幅に強化されているはずです」
「主戦力以外も強くなってあるのか…」
「そこで私に案と兵器をお持ちしました」
私はゴーレムたちを集めて、抱えてもらっていた荷物を全て広げる。それは量産に成功した魔銃・電鷲改め、魔銃・機関銃と劣化纏機構の二つだ。
「これは一体?」
魔銃・機関銃は各々の原素を秒間百発の魔弾に変換して撃ち放つ武器だ。かなり重量があるので機動性に欠けるのが難点。
そして、劣化纏機構これは、体に密着するスーツのようになっており、これを着て原素を流し込むと、それぞれの特徴を纏の様に発動できるようになっている、特徴とはファーネの竜陣空拳を参考にしている。
《火》…火力を上げて、破壊力を増す。
《風》…縦横無尽に飛び回り疾く動く。
《土》…体全体が硬化し、防御力が上がる。
《電》…直線的に素早く動く
《水》…攻撃を受け流していく。
「それに、それぞれの原素を大幅に底上げします」
「なんや、ちょっと小っ恥ずかしいの…」
「普段着の中に着ても大丈夫ですよ」
「そうさせてもらうの」
かなり密着したようなスーツになるので動きが阻害される事もない、これで全体の戦力を底上げ。そして、ゴーレムたちには大砲、魔銃・機関銃を扱えそうなものには後方からの射撃により敵を近づけさせないように動いてもらう。
天族には上空からの爆撃も依頼してある。的になるかもしれないと懸念したが、そう簡単に捉えられる私たちではないと自信満々に答えられたので任せる事にした。
龍の力を持つ者たちには、主戦力の討伐をお願いする。それは私も含めてではある。
「そして、その先に望むのが魔顕です。聞いた話でしか知りませんが、それぞれが手にすれば戦況は一気に抑え込めるのではと考えています」
「まかしておれ、その考えは間違っておらん」
「ああ、戦況は一気に持って来れるようになる」
「なので、八獄衆を探し出し魔王心を解放させることが先決になるかと思います」
「やってやろつではないか」
「あぁ、暴れてやろうか!」
前線部隊の話し合いはこれで終わりだ、スタンドレスに向かう人たちと護衛をする部隊を確認しにいく。
護衛舞台にはタルトーにグロガル、ファーネにセイをお願いしている。王燐が生きていた事への懸念と、天族の村から攻め込まれる可能性があるからだ。
既にセーレンとガスールを主軸にお願いしてあるが、根拠のない不安と嫌な予感がしたからだ。この二手に分かれたのであれば、問題ない布陣になるだろう。
軽重症合わせて怪我人が多いので、行軍速度は落ちるだろうがこの四人に任せていれば大丈夫。
それぞれの行動を開始するのは三日後。療養期間と、私が持ってきた新しい兵器の試験稼働と、慣らしをする必要があるからだ。
それまでは別れを惜しみながら決意を固め、それぞれの想いを胸に過ごしていた。明るいうちは兵器の慣らし、夜になると今を噛み締めるように宴が開かれていた。
私は飲み食いができないので、それを眺めていた。
「ナディよ、隣良いかの?」
「コハクですか、どうぞ」
酒を飲んでいるのだろう、顔を赤くしながら隣にコハクが座り込んだ。
「ここまできたんじゃの」
「えぇ、本当にお世話になりました」
「はははっ、お主がここまでにしたんじゃよ」
「いえ、救って頂いたからこそ今があります」
そう、いきなりこの世界に喚び出された私を、あの日ラクーンが救ってくれて今日のこの日がある。
「ラクーン、ライタ……」
「きっと上から見ていますよ」
「上とな?」
「えぇ、天国から見ているんじゃないかと」
「はて、天国とな?」
「知りませんか?死んだ者が行き着く場所です」
「う〜む……知らぬの、聞いた事もないわ」
「あれ、では死んだ者はどうなると?」
「“死ねば自然に還る、大きな流れの奔流に乗りながら巡り巡ってまたこの地に生をなす”、知らぬか?」
輪廻転生の概念だろうか、そういえばこの世界では宗教の存在を見た事も聞いた事もない。
「では、地獄とは知っていましたか?」
「ん?奴らの使う力の事じゃろう?」
「良い行いをすれば死後天国に、悪い行いをすれば死後地獄に。という話もですか?」
「知らぬの〜…ふふっ、良い行いも悪い行いも見る者によって変わるものじゃろうに、それを量るものがあるのであれば、知りたいがのぉ」
では、ガザールたちが使っていた地獄の力とは?この世界にその概念が無いのであれば八獄衆とやらも何処から来た、何故それを当たり前のように使っている。
この世界の概念で無いのであれば…私の世界?
私たちには当たり前の話ではあるが、この世界の人たちにとっては聞いた事のない話。それも死後の考え方を根底から覆すような内容。
考えても仕方がないか、何か変わるわけでもなく。
「それより、魔王ナディよ!」
「はい」
「最後まで皆を頼んだ、妾のように後悔のないように」
後悔。そう答えるコハクの表情は暗くなっていた、以前に話していた獣族のほとんどがいなくなってしまった事と関係あるのだろう、この戦争で亡くなった同胞たちに対して後悔の念を持ち続けながら。
「任せてください、必ず勝利に導きます」
「頼りにしておるわ、はははっ」
そう言いながら手に持っていた酒を全て飲み干す。飲み干したのと満足したのか、立ち上がって皆の元へと消えていった。
周りから喜びの声と笑い声が、絶え間なく上がり続けている。だれもが戦争の事など忘れてしまったかのように、今の時間を楽しんでいる。
この光景をこれからも続けるように。
誰もが笑っていられるように。
私の理想郷の為に…いや、皆の理想郷のために。
成し遂げよう。この戦争において私は、皆を導く魔王ナディとして勝利を捧げる。その後のことは、その後に考えれば良い、今はただ目の前の事だけを。
ご完読、誠にありがとうございます。
今回の作品が皆様の心に残るものとなったなら幸いです。今後も「読んでよかった」と思っていただける作品をお届けしていきますので、ぜひ次回作もお楽しみに。
これからも応援よろしくお願いいたします。
また次話でお会いしましょう(*´∇`*)




